エルゴタミン
エルゴタミン
IUPAC命名法 による物質名
(6aR ,9R )-N -((2R ,5S ,10aS ,10bS )- 5-benzyl-10b-hydroxy-2-methyl- 3,6-dioxooctahydro-2H -oxazolo[3,2-a ] pyrrolo[2,1-c ]pyrazin-2-yl) -7-methyl-4,6,6a,7,8,9-hexahydroindolo[4,3-fg ] quinoline-9-carboxamide
臨床データ 販売名
Ergomar Drugs.com
monograph 胎児危険度分類
法的規制
薬物動態 データ生物学的利用能 静脈注射: 100%[ 1] 筋肉: 47%[ 2] 経口: <1% [ 3] (カフェインとの同時投与によって増強[ 1] ) 代謝 肝臓[ 2] 半減期 2時間[ 2] 排泄 90% 胆管[ 2] データベースID CAS番号
113-15-5 ATCコード
N02CA02 (WHO ) PubChem
CID: 8223 IUPHAR/BPS (英語版 )
149 DrugBank
DB00696 ChemSpider
7930 UNII
PR834Q503T KEGG
D07906 ChEBI
CHEBI:64318 ChEMBL
CHEMBL442 化学的データ 化学式 C 33 H 35 N 5 O 5 分子量 581.66 g/mol
O=C3N1CCC[C@H]1[C@]2(O)O[C@](C(=O)N2[C@H]3Cc4ccccc4)(NC(=O)[C@@H]8/C=C7/c5cccc6c5c(cn6)C[C@H]7N(C)C8)C
InChI=1S/C33H35N5O5/c1-32(35-29(39)21-15-23-22-10-6-11-24-28(22)20(17-34-24)16-25(23)36(2)18-21)31(41)38-26(14-19-8-4-3-5-9-19)30(40)37-13-7-12-27(37)33(38,42)43-32/h3-6,8-11,15,17,21,25-27,34,42H,7,12-14,16,18H2,1-2H3,(H,35,39)/t21-,25-,26+,27+,32-,33+/m1/s1 Key:XCGSFFUVFURLIX-VFGNJEKYSA-N
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エルゴタミン (ergotamine)は、エルゴペプチン の一種であり、アルカロイド の麦角ファミリーに属する。構造的ならびに生物化学的にエルゴリン と近縁関係にある。いくつかの神経伝達物質 と構造的類似性があり、血管収縮薬 としての生理活性 を有する。
エルゴタミンは(時にはカフェインとの組み合わせで)急性偏頭痛 の治療薬として使用されている。麦角菌の医学的利用は16世紀に分娩 を誘導するために始まったが、用量の不確実さから利用は推奨されなかった。エルゴタミンは分娩後 出血 を抑えるために使用されている。エルゴタミンは、1918年にSandoz製薬のアルトゥール・ストール (英語版 ) によって麦角菌から初めて単離され、1921年にGynergenとして販売された[ 4] 。
麻薬及び向精神薬取締法により麻薬向精神薬原料に指定されている[ 5] 。
作用機序
エルゴタミンの作用機序 は複雑である[ 6] 。セロトニン 、ドーパミン 、アドレナリン といった神経伝達物質と構造的類似性があり、ゆえにいくつかの受容体 に結合できアゴニスト として働く。抗偏頭痛作用は、5-HT1B 受容体 (英語版 ) を介した頭蓋内脳実質外血管の収縮や5-HT1D 受容体 (英語版 ) による三叉神経 の神経伝達の阻害による。エルゴタミンはまた、ドーパミン およびノルアドレナリン 受容体に対する作用を有する。一部の副作用はD2受容体 (英語版 ) および5-HT1A 受容体 (英語版 ) に対する作用で引き起こされる[ 7] 。
生合成
エルゴタミンは二次代謝産物 (天然物 )であり、麦角菌Claviceps purpurea (英語版 ) およびバッカクキン科 の近縁の菌によって生産される主要なアルカロイドである[ 8] 。これらの菌における生合成はアミノ酸 のL -トリプトファン およびジメチルアリル二リン酸 を必要とする。これらの前駆体化合物は、麦角アルカロイド生合成の最初の段階、すなわちL -トリプトファンのプレニル化 を触媒するジメチルアリルトリプトファン (DMAT) シンターゼの基質となる。メチルトランスフェラーゼ およびオキシゲナーゼ が関与するさらなる反応によってエルゴリン およびリゼルグ酸 が得られる。リゼルグ酸 (LA) は、LAをL -アラニン 、L -プロリン 、L -フェニルアラニン に共有結合させる、非リボソームペプチド 合成酵素・リゼルギルペプチドシンテターゼの基質である。酵素によって触媒される、あるいは自発的な環化、酸素化/酸化 、異性化 が先行し、エルゴタミンの生成が起こる[ 9] 。
薬物使用
エルゴタミンは末梢部の血管収縮と共に末梢上皮の損傷を引き起こす。高用量のエルゴタミンは、血管の鬱血、血栓症 、壊疽 へと繋がる。エルゴタミンは子宮の収縮性を増強でき、子宮出血を減少させるために分娩後ただちに治療に時には使用される。
エルゴタミンは偏頭痛 に対して処方され続けている。
禁忌には、動脈硬化症 、閉塞性血栓性血管炎 、冠動脈疾患 、肝疾患、妊娠、痒み 、レイノー病 、腎疾患がある[ 10] 。
エルゴタミンはLSD の前駆体でもある。
副作用
エルゴタミンの副作用はトリプタン (片頭痛 の特効薬)よりもかなり強い。エルゴタミンの効果がトリプタンより弱い事もあり、エルゴタミンは偏頭痛の治療には稀にしか使用されない。主な副作用(全発現率:26.4%)は、食欲不振(6.2%)、吐気(3.3%)、胃部・腹部不快感(2.4%)、嘔吐(1.5%)等の消化器系およびふらつき(2.0%)、眠気(1.3%)等の精神神経系である[ 11] 。高用量では、動脈圧 上昇、血管収縮 (冠攣縮性狭心症 を含む)、徐脈 、頻脈 が起こり得る。重篤な血管収縮の症状として、間欠跛行 が知られている[ 12] 。
重大な副作用として添付文書に記載されているものは、
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis :TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、
麦角中毒(血管攣縮、動脈内膜炎、チアノーゼ、壊疽等)、
エルゴタミン誘発性の頭痛、禁断症状(頭痛等)、ショック、
肝機能障害,黄疸、心筋虚血,心筋梗塞、線維症(胸膜、後腹膜、心臓弁)
である[ 11] 。
効能・効果
血管性頭痛、片頭痛、緊張性頭痛
出典
^ a b Sanders SW, Haering N, Mosberg H, Jaeger H (1983). “Pharmacokinetics of ergotamine in healthy volunteers following oral and rectal dosing”. Eur. J. Clin. Pharmacol. 30 : 331–334. doi :10.1007/BF00541538 . PMID 3732370 .
^ a b c d Tfelt-Hansen P, Johnson ES (1993). “Ergotamine”. In Olesen J, Tfelt-Hansen P, Welch KM, editors. The headaches . New York: Raven Press. pp. 313–322
^ Ibraheem JJ, Paalzow L, Tfelt-Hansen P (1983). “Low bioavailability of ergotamine tartrate after oral and rectal administration in migraine sufferers” . Br. J. Clin. Pharmacol. 16 : 695–699. PMC 1428366 . PMID 6419759 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1428366/ .
^ AJ Giannini, AE Slaby. Drugs of Abuse. Oradell, NJ, Medical Economics Books, 1989.
^ 麻薬及び向精神薬取締法施行規則 昭和二十八年三月三十一日 政令第五十七号 第一条 三
^ Walkembach J, Brüss M, Urban BW, Barann M (October 2005). “Interactions of metoclopramide and ergotamine with human 5-HT3A receptors and human 5-HT reuptake carriers” . Br. J. Pharmacol. 146 (4): 543–52. doi :10.1038/sj.bjp.0706351 . PMC 1751187 . PMID 16041395 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1751187/ .
^ Tfelt-Hansen P, Saxena PR, Dahlof C, Pascual J, Lainez M, Henry P, Diener H, Schoenen J, Ferrari MD, Goadsby PJ (2000). “Ergotamine in the acute treatment of migraine: a review and European consensus”. Brain 123 : 9–18. doi :10.1093/brain/123.1.9 . PMID 10611116 .
^ Akul Mehta (2011年12月30日). “Pharmacognosy of Ergot (Argot or St. Anthony’s Fire) ”. PharmaXChange.info. 2012年7月4日 閲覧。
^ Schardl CL, Panaccione DG, Tudzynski P (2006). “Ergot alkaloids--biology and molecular biology”. Alkaloids Chem. Biol. . The Alkaloids: Chemistry and Biology 63 : 45–86. doi :10.1016/S1099-4831(06)63002-2 . ISBN 978-0-12-469563-4 . PMID 17133714 .
^ AJ Giannini. Biological Foundations of Clinical Psychiatry. Oradell, NJ. Medical Economics Puclishing Co., 1986.
^ a b “クリアミン配合錠 ”. 2015年9月8日 閲覧。
^ “Medihaler Ergotamine ”. drugs.com (英語版 ) . 2016年5月20日 閲覧。
関連項目