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キス (魚)

キス科
シロギス Sillago japonica
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 棘鰭上目 Acanthopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : スズキ亜目 Percoidei
: キス科 Sillaginidae
学名
Sillaginidae Richardson1846
タイプ属
Sillago
生息域

キス(鱚、鼠頭魚)は、スズキ目スズキ亜目キス科学名Sillaginidae)に所属する魚類の総称である[1]

あるいは、シロギスSillago japonica、分類によってはSillago sihama)の異称、あるいはシロギスがキスの異称とも定義される[2]

キス科には、ホシギスアオギスなど、沿岸の浅い海で暮らす種類を中心に5属約33種が記載されている[3]。キス類の多くは食用に利用されるほか、釣りの対象としても人気が高い。

分布

キス科は、南アフリカから日本、オーストラリアにかけてのインド洋および西部太平洋に分布する[4]

生態

ほとんどの仲間は海岸付近の砂底で生活するが、一部の種類の稚魚は河口などの汽水域で成長するほか、ごくまれに淡水に進出するも知られている[4]

産卵期である夏には沿岸のごく浅い場所まで移動し、砂浜などでも頭を下げて海底を嗅ぎまわるように泳ぐ姿を見ることができる。食性雑食性で、ゴカイスナモグリヨコエビなど海底に生息する底生生物を捕食する。

形態

キス科の仲間は細長い円筒形の体型をもち、口は小さい[5](口先)はとがり、砂底に潜む獲物を探るために利用される。全長45cm程度にまで成長する種類が多いが、最大では70cmに達することもある[4]浮き袋は欠くか、あるいは痕跡的で、存在する場合は多数の突起による複雑な構造を示す[4]

背鰭は2つあり、互いの間隔はごく狭いか、ほとんど近接している[4]。第1背鰭は10–13本の棘条で、第2背鰭は1本の細い棘条と16–27本の軟条で構成される[4]。臀鰭の基底は長く、2棘14-26軟条[6]椎骨は32–44個で、スズキ目内の30種余りの小グループとしては例外的に変化が大きい[4]

利用

天ぷら
握り寿司

ほとんどのキス類が食用に利用される。釣りの対象魚としても人気が高く、舟釣りや海岸からの投げ釣りは、誰でも楽しむことができる。かつて東京湾では浅瀬に脚立を立て、その上に腰かけてアオギスを釣る「脚立釣り」が名物であったが、汚染でアオギスが絶滅して以来、見られなくなった。ゴカイなど多毛類生き餌、もしくはソフトプラスチックの疑似餌を使う。

身は脂肪が少なく柔らかい白身で、美味とされる。塩焼きのほか、刺身天ぷらフライなどに調理される。

江戸時代の将軍は、毎月1日、15日、28日以外の食事には鱚の塩焼きと漬け焼きの二種類が乗った「鱚両様」を食べることが日課となっていた[7]

分類

アオギス Sillago parvisquamis江の島水族館における飼育個体)。個体数を大幅に減らし、絶滅が危惧される種類[5]
ホシギス Sillago aeolus。胸鰭基底部の黒色斑が生時の特徴[5]
モトギス Sillago sihama。アオギスとよく似た種で、インド太平洋に幅広く分布する[5]

キス科に Kaga(2013)はアトクギス属Sillaginops を新たに設け, さらに従来3属で構成されていたキス科の分類に5属を認めている[3]。本稿では、FishBaseに記載される5属34種についてリストする[6]

おもな種

シロギス Sillago japonica
全長35cm。北海道南部以南の日本沿岸から東シナ海にかけて分布する[5]体色は淡い褐色だが、体側は光を反射して虹色に光る。投げ釣りのもっとも一般的な対象魚である。シロギスのみを対象とした釣り大会も開催される。
アオギス Sillago parvisquamis
全長40cm。名のとおり体色に青みが強い。かつては東京湾や伊勢湾にも分布したが、開発や水質汚濁によって産卵に必要な干潟を失い、今日では九州や台湾など限られた地域に生き残るのみとなっている。遠浅の浜に脚立を立てて釣る方法は、もともとシロギスよりも警戒心の強いアオギスを釣るためのものだった。
ホシギス Sillago aeolus
全長25cm。奄美大島以南に分布する。死ぬと体側に褐色の斑点が浮かび上がる[5]
ダイオウギス Sillaginodes punctata
最大で全長70cmに達する大型種。オーストラリア近海に分布し、日本には生息しない。全身に褐色の小さなまだら模様がある。

キスにちなむ語句

前述のように細長い円筒形の体型から、「痩せぎす」の語源の一つとも考えられている[8]

語源

語源は諸説ある[9]

  • 日本各地の海岸で普通に見られ比較的簡単に釣ることができるため「岸」が変化した。
  • 味が淡白なのことから「潔し」が転訛した。
  • すぐに群れることから「帰す」に由来する。

出典

  1. ^ “キス【鱚】”, 広辞苑, 第4版, 岩波書店, (1998) 
  2. ^ キス(鱚)」『世界大百科事典 第2版、日本大百科全書(ニッポニカ)』https://kotobank.jp/word/%E3%82%AD%E3%82%B9%EF%BC%88%E9%B1%9A%EF%BC%89コトバンクより2021年12月10日閲覧 
  3. ^ a b Tatsuya Kaga 『Phylogenetic systematics of the family Sillaginidae (Percomorpha: order Perciformes)』 Zootaxa3642. 2013年 ISBN 978-1-77557-144-5 pp.105
  4. ^ a b c d e f g Joseph S. Nelson 『Fishes of the World Fourth Edition』 Wiley & Sons, Inc. 2006年 ISBN 0-471-25031-7 p.357
  5. ^ a b c d e f 岡村収尼岡邦夫監修 『日本の海水魚』 山と溪谷社 1997年 ISBN 4-635-09027-2 p.307
  6. ^ a b Sillaginidae”. FishBase. 2014年7月20日閲覧。
  7. ^ 徳川将軍が毎朝食した「鱚《きす》」 脚立釣り発祥のきっかけにも”. ダイヤモンド・オンライン (2013年7月19日). 2022年11月10日閲覧。
  8. ^ 痩せぎす」『デジタル大辞泉』https://kotobank.jp/word/%E7%97%A9%E3%81%9B%E3%81%8E%E3%81%99コトバンクより2021年12月10日閲覧 
  9. ^ 語源由来辞典 (2007年10月14日). “キス/鱚/きす”. 語源由来辞典. 2023年3月10日閲覧。

関連項目

外部リンク

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