路線網
ゴヴィア・テムズリンク・レールウェイ (Govia Thameslink Railway; GTR )はゴーアヘッド・グループ (英語版 ) (65%)とケオリス (英語版 ) (35%)の合弁会社ゴヴィア (英語版 ) の傘下にあるイギリス の列車運行会社 である。以下の4つのサブブランドを用いて運行している。
イギリス最大の列車運行会社であるが、ロンドン周辺で大規模な路線改良が実施される中で営業するリスクを抑えるため、他の列車運行会社とは異なり、運賃を収益としない代わりに一定の運行料を受け取るマネジメント契約での運行となっている。
2014年9月にファースト・キャピタル・コネクト の後継としてテムズリンクとグレート・ノーザンの2ブランドが運行を開始し、2015年7月に同じゴヴィア傘下であったサザン からサザンとガトウィック・エクスプレスの運行を引き継いだ。契約満了は2021年9月の予定である。
沿革
テムズリンク とグレート・ノーザン・ルート (英語版 ) の列車の運行はテムズリンク・プログラム (英語版 ) の実施に伴い2006年に統合され、ファースト・キャピタル・コネクトによる運行となっていた。2012年、これらにサザンの路線網とサウスイースタン の一部列車を統合し、テムズリンク・サザン・アンド・グレート・ノーザン・フランチャイズ (英語版 ) とすることが発表された[ 1] 。新フランチャイズ設置のスケジュールは入札招待状の発行が2012年10月、落札者の発表が2013年春、新列車運行会社の運行開始が2013年9月とされていたが、インターシティ・ウェスト・コーストの入札での問題を受けて新たなフランチャイズの入札が停止されたことにより[ 2] 、2013年1月に引き継ぎを2014年3月に再設定することが発表された[ 3] 。
2013年3月、ファースト・キャピタル・コネクトの運行終了日が2014年9月13日に再延長されることが発表され、同時に投資や変更の規模から新フランチャイズがマネジメント契約の形態をとることが明らかにされた[ 4] 。2013年9月、入札招待状が改めて発行され[ 5] 、ゴーアヘッド・グループ (英語版 ) が65%、ケオリス (英語版 ) が35%を出資するゴヴィア (英語版 ) が2014年5月23日に運営権を獲得した[ 6] [ 7] 。
2014年9月14日、ゴヴィア・テムズリンク・レールウェイがファースト・キャピタルコネクトから122の駅からなる路線網と226両の車両を引き継いで運行を開始した。また、同年12月にはサウスイースタンと共同で運行されていたセブノークス(英語版 ・街 ) 発着列車がゴヴィア・テムズリンク・レールウェイに完全に移管された。2001年に運行を開始したゴヴィア傘下のサザンからは2015年7月26日に運行を引き継ぎ、これによって乗客数、従業員数、車両数からイギリス最大の列車運行会社となった[ 8] [ 9] 。なお、テムズリンク、グレート・ノーザン、サザン、ガトウィック・エクスプレスの各ブランドは分離されており、特にもともとゴヴィア傘下であった後者2つについてはロゴなどの変更は行われていない。
前述のようにロンドン周辺で行われる大規模改良により収益が不確実であるため[ 10] 、ゴヴィア・テムズリンク・レールウェイの契約は通常のフランチャイズとは異なる特殊な形態となっている。通常は列車運行会社が運賃をすべて収益として運営権料を運輸省 に支払うところ、ゴヴィア・テムズリンク・レールウェイでは7年間で124億ポンドと予想される運賃収入は運輸省に納められ、代わりに年間89億ポンドがゴヴィア・テムズリンク・レールウェイ側に支払われる[ 11] 。これにより、収益に関するリスクを運輸省が負い、ゴヴィアは支出に関するリスクのみを負うことになる[ 11] 。
2016年6月、ゴヴィア・テムズリンク・レールウェイのサービス水準の低さが批判される中、ゴーアヘッド・グループがゴヴィア・テムズリンク・レールウェイの収益が減少することを明らかにし、同社の株価が18%下落した。テムズリンクはサービス水準がイギリス最低とされ、サザンでは2015年4月からの1年間で8割の列車が定時に到着しておらず、ワンマン運転 をめぐって労働組合との間で対立も起こっていた[ 12] [ 13] [ 14] 。定時性向上のため数週間にわたってサザンの列車の15%が運休となったのち、ロンドン市長 サディク・カーン は2016年7月12日、ゴヴィア・テムズリンク・レールウェイの運行権剥奪を唱え[ 15] 、7月16日には運輸政務次官 クレア・ペリー・オニール (英語版 ) が辞任した[ 16] 。
運行概況
テムズリンク
テムズリンクの路線図
テムズリンク・ネットワーク はセント・パンクラス駅 とブラックフライアーズ駅 の間を中核としてロンドンを南北に縦断する路線網で、「テムズリンク」ブランドで運行される。
北端はベッドフォード駅(英語版 ・街 ) 、ピーターバラ駅(英語版 ・街 ) 、ケンブリッジ駅 、南端はサットン駅(英語版 ・街 ) 、オーピントン駅(英語版 ・街 (英語版 ) ) 、セブノークス駅(英語版 ・街 )、 レイナム駅(英語版 ・街 (英語版 ) ) 、ホーシャム駅(英語版 ・街 ) 、ブライトン駅 、メードストン・イースト駅(英語版 ・街 ) (2021年延伸予定)などであり、ガトウィック空港駅 やルートン空港 の最寄り駅であるルートン・エアポート・パークウェイ駅(英語版 ) にも停車する。
なお、従来の北側の乗り入れ路線はミッドランド本線 であり、イースト・コースト本線 とは2018年5月のカナル・トンネル (英語版 ) 開通によって直通運転が開始された。これに伴い、「グレート・ノーザン」ブランドの列車の多くがテムズリンクに組み込まれた。
列車は以下の路線を走行する。
2020年5月時点での平日オフピーク時のダイヤは以下の通り[ 17] 。
グレート・ノーザン
グレート・ノーザンの365形
グレート・ノーザン・ルート (英語版 ) はキングス・クロス駅 及びムーアゲート駅 を発着し、イースト・コースト本線 とその支線区を走る近郊列車の路線網であり、「グレート・ノーザン」ブランドで運行される。前述のカナル・トンネル開業によってグレート・ノーザン・ルートの列車の多くがテムズリンクに組み込まれており、日中に同ブランドで運行されるのはノーザン・シティ線 (ムーアゲート駅発着)への直通列車と、キングス・クロス駅とケンブリッジ駅 の間をノンストップで運行し、フェン線 (英語版 ) に直通する速達列車のみである。なお、ピーク時にはキングス・クロス駅発着の準速達列車や普通列車も運行しており、これらの中にはオフピーク時にはないピーターバラ駅(英語版 ・街 ) 発着の列車も存在する[ 18] 。
列車は以下の路線を走行する。
2020年5月時点での平日オフピーク時のダイヤは以下の通り[ 19] 。
サザン
サザンの377形
「サザン」はロンドン・ヴィクトリア駅 とロンドン・ブリッジ駅 をターミナルとし、サリー 、イースト・サセックス 、ウェスト・サセックス を中心とした路線網に用いられるブランド名である。ロンドンの南側が路線網の中心であるが、バッキンガムシャー のミルトン・キーンズ・セントラル駅(英語版 ・街 ) まで足を延ばす列車も存在する。なお、ブランド自体は同じくゴヴィア傘下であった先代のサザン から引き継がれており、2003年にサウス・セントラルから改称した際に制定されたものがベースとなっている。
列車は以下の路線を走行する。
2020年5月時点での平日オフピーク時のダイヤは以下の通り[ 20] 。
ガトウィック・エクスプレス
ガトウィック・エクスプレスの387形
ガトウィック・エクスプレス はガトウィック空港 へのアクセス列車であり、ガトウィック空港駅 を通ってロンドン・ヴィクトリア駅 とブライトン駅 を結んでいる。なお、平日ピーク時を除き途中停車駅はガトウィック空港駅のみである。
列車は以下の路線を走行する。
2020年5月時点での平日オフピーク時のダイヤは以下の通り[ 21] 。
変更予定
ゴヴィア・テムズリンク・レールウェイは239の駅を管理しており、5000万ポンドをかけて以下の改良を行うとしている[ 22] 。
駐輪場の増設や電気自動車用充電スタンドの設置などのアクセス改善
電光掲示板の更新
セント・オールバンズ・シティ駅及びルートン駅の大規模改良で自治体と協働
駅員の配置時間帯を拡大し、特に乗降客数の多い100駅では始発から終電まで駅員が常駐
非接触式ICカード「ザ・キー (英語版 ) 」の使用可能区間拡大
104駅に無料Wi-Fiを導入
ダイヤ面などでの主な改良は以下の通り[ 23] 。
ロンドン - キングズ・リン間の列車の毎時2本化
グレート・ノーザン・ルートの一部列車のテムズリンクへの組み込み[ 24]
グレート・ノーザン・ルートの短距離列車をインフィールド・チェイス経由、ニュー・バーネット経由共に毎時4本化
ノーザン・シティ線列車を平日夜及び土休日にも運転
ピーク時のアックフィールドからロンドン方面への輸送力を50%増
テムズリンク(24時間運行)の深夜早朝帯の列車の倍増
セブノークス発着のテムズリンク列車を土曜日にも運行
オイスターカード の利用可能区間をエプソム、ガトウィック空港、ルートン・エアポート・パークウェイ、ウェリン・ガーデン・シティ、ハートフォード・ノースなどに拡大[ 25]
387形 をグレート・ノーザンの速達列車に投入し、317形 、321形 、365形 (一部)を置き換え[ 26]
サウス・ウェスト・トレインズ 同様ネットワーク・レール とアライアンス関係を締結[ 27]
車両
現行車両
形式
画像
種類
最高速度
編成両数
本数
使用系統
製造年
テムズリンク
700形 「デジロ・シティ 」
700/0形
電車
交直
100 mph 161 km/h
8両
60本
2015年 - 2018年
700/1形
12両
55本
グレート・ノーザン
365形 「ネットワーカー・エクスプレス 」
電車
交 [ 注 3]
100 mph 161 km/h
4両
21本
キングス・クロス駅発着系統(ピーク時)
1994年 - 1995年
387形 「エレクトロスター 」
387/1形
交直
110 mph 177 km/h
4両
29本
キングス・クロス駅発着系統
2014年 - 2015年
717形 「デジロ・シティ」
85 mph 137 km/h
6両
25本
ノーザン・シティ線 直通系統
2018年 - 2019年
サザン
171形 (英語版 ) 「ターボスター 」
171/2形 171/7形
気動車
100 mph 161 km/h
2両
12本
全気動車運用
2003年 - 2004年
171/4形 171/8形
4両
8本
313形
313/2形
電車
直 [ 注 4]
75 mph 120 km/h
3両
19本
コーストウェイ・ウェスト コーストウェイ・イースト
1976年 - 1977年
377形 「エレクトロスター」
377/3形
直
100 mph 160 km/h
3両
29本
電化区間全域
2001年 - 2005年
377/1形 377/4形
4両
136本
377/2形
交直
15本
377/6形
直
5両
26本
2012年 - 2014年
377/7形
交直
8本
455形
455/8形
直
75 mph 120 km/h
4両
46本
メトロ
1982年 - 1984年
ガトウィック・エクスプレス
387形 「エレクトロスター」
387/2形
電車
交直
110 mph 177 km/h
4両
27本
2015年 - 2016年
ガトウィック・エクスプレス 387形(387/2形)
車両増備について
ゴヴィア・テムズリンク・レールウェイによって新たに導入された車両は387形 、700形 、717形 の3種類である。
387形「エレクトロスター 」には、運輸省が主導する形でテムズリンクに導入された387/1形と、ガトウィック・エクスプレス用にゴヴィア・テムズリンク・レールウェイが独自に導入した387/2形の2つのグループが存在する。前者は700形導入の遅れに対応するため2013年7月に4両編成29本が発注され、2014年12月から2015年7月にかけて導入された[ 28] 。これらは319形 の一部を置き換え、700形が導入されると2016年ごろからグレート・ノーザンへ転属した。387/2形は4両編成27本が2014年11月に発注され、2016年2月から順次運行を開始して442形 を置き換えた[ 29] [ 30] 。なお、後者の一部についてもガトウィック・エクスプレスへの投入前にテムズリンクへの充当が行われている。
700形「デジロ・シティ 」は運輸省の主導によりテムズリンクに導入された車両で、シーメンス によって8両編成が60本、12両編成が55本製造された[ 31] 。これらは当初2012年の導入が予定されていたが、落札者の発表が2011年、契約締結が2013年、納入開始が2016年と大幅に遅れたため、387形の製造が行われている。700形は2016年から2018年にかけて営業運転に投入され、319形、377形、387形を置き換えた。
387/1形と700形[ 注 5] はあわせてグレート・ノーザンの317形 、321形 、365形 (一部)の置き換えを行っている。
717形「デジロ・シティ」はゴヴィア・テムズリンク・レールウェイがグレート・ノーザンのノーザン・シティ線直通系統向けに導入した車両である。700形に類似しているが前面に非常扉がついており、6両編成25本がシーメンスに発注され、2018年9月から営業運転に就いている[ 32] [ 33] [ 34] [ 35] 。これらは313形 を置き換えた[ 36] 。
これらに加え、171形2両編成2本、4両編成2本が増備された。
また、ブランド間の転属車両としてはグレート・ノーザンへ転属した387形のほか、サザンへの転属が行われた377形が挙げられる。
過去の車両
形式
画像
種類
最高速度
編成両数
本数
製造年
使用系統
引退
その後
備考
テムズリンク
319形
電車
交直
100 mph 161 km/h
4両
86本
1987年 - 1990年
2017年
アリーヴァ・レール・ノース (英語版 ) ロンドン・ミッドランド (英語版 ) 保留車化
377形 「エレクトロスター 」
377/2形
100 mph 161 km/h
4両
3本
2003年 - 2004年
2017年
サザン(社内)
377/5形
23本
2008年 - 2009年
サウスイースタン
387形 「エレクトロスター」
387/1形
110 mph 177 km/h
4両
29本
2014年 - 2015年
2017年
グレート・ノーザン(社内)
ガトウィック・エクスプレス向け387/2形も一部使用
グレート・ノーザン
313形
313/0形 313/1形
電車
交直
75 mph 121 km/h
3両
44本
1976年 - 1977年
ノーザン・シティ線 直通系統
2019年
解体
サザンでは引き続き運行
317形
317/1形
交
100 mph 161 km/h
4両
12本
1981年 - 1982年
キングス・クロス駅発着系統
2017年
グレーター・アングリア (英語版 )
321形
321/4形
100 mph 161 km/h
4両
13本
1989年 - 1990年
2016年
グレーター・アングリアアベリオ・スコットレール (320/4形 (英語版 ) 化)
365形 「ネットワーカー・エクスプレス 」
交[ 注 3]
100 mph 161 km/h
4両
19本
1994年 - 1995年
アベリオ・スコットレール 保留車化
21本はピーク時専用として残留
ガトウィック・エクスプレス
442形 「ウェセックス・エレクトリックス」
電車
直
100 mph 161 km/h
5両
16本
1988年 - 1989年
2016年
サウス・ウェスト・トレインズ
サザンの一部列車にも使用 (2017年まで)
テムズリンク 377形(377/2形・377/5形)(ファースト・キャピタル・コネクト塗装)
グレート・ノーザン 313形(313/0形・313/1形)(ファースト・キャピタル・コネクト塗装)
脚注
注釈
^ 2021年からメードストン・イースト(英語版 ・街 ) まで延伸予定。
^ ウェンブリー・セントラル - シェパーズ・ブッシュ (英語版 ) 間で切り替え。
^ a b 本来は交直両用だが集電靴は取り外し済み。
^ 本来は交直両用だがパンタグラフは取り外し済み。
^ テムズリンク・ネットワークの拡大によりグレート・ノーザンの所要運用数が減少したためブランドをまたいだ置き換えとなっている。なお、カナル・トンネル開通までは「グレート・ノーザン」ブランドでも700形が運行されていた。
出典
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外部リンク
イギリスのバス会社: 海外のバス会社: イギリスの鉄道会社 (Govia): 海外の鉄道会社: 現存しない会社:
年間収益 : £1027.9m GBP (2007) · 従業員数 : 不明 · 株式コード : LSE : GOG · Webサイト : www.go-ahead.com