ジブチ市 (ジブチし、アラビア語 : جيبوتي 、仏 : Ville de Djibouti )は、ジブチ共和国 の首都 であり、同国最多の人口と港湾 を擁する都市である。国名と同一名称のため、特に首都を指す場合はジブチ市 あるいはジブチシティ (英 : Djibouti City )のように呼ばれる[ 2] 。
タジュラ湾 の南岸に位置する海上交通の要衝であり、紅海 の入り口にあたるバブ・エル・マンデブ海峡 にも近い。人口約77.7万人(2024年国勢調査[ 1] )。フランス の植民地であったという歴史的な経緯から、ジブチ駐留フランス軍 の統合司令部が置かれている。
概要
ジブチ市はアフリカの角 に位置するジブチ共和国の首都であり、国家の総人口の約7割が同市内に住む、同国最大の都市である。アラビア半島 のイエメン に海を挟んで相対するタジュラ湾の海港である。市の特徴として東部の海岸と大中央市場、国立競技場スタッド・ナショナル・エル・ハジ・ハッサン・グレド (スタッドデュヴィル)、大統領宮殿沿いのビーチが有名である。早くからヨーロッパ人の入植を受けた経験もあって、数多くのエキゾチックな建造物を擁する。
歴史
1940年代 のジブチ市
1862年 から1894年 まで、この地域の政治的中心はタジュラ湾の北にあるオボック 市だった。
フランスはジブチでの足掛かりを得るためにソマリアとアファールのスルターン に対して1883年と1887年の間に様々な条約を結び、1888年にジブチ市の建設を開始する。1896年にフランス人はオボックからの遷都を行い、ジブチ市をフランス領ソマリランド の首都として位置付けた[ 3] [ 4] 。1902年にはジブチからエチオピアのディレ・ダワ への鉄道が開通し、1917年にはアディスアベバ まで開通した[ 5] 。この鉄道の開通によってジブチ市はエチオピア帝国 という広大な後背地 を得ることとなり、同国の外港 として経済的重要性が高まった。
1940年 にナチス・ドイツ がフランスへ侵攻すると、ジブチ市はヴィシー政権 による支配へと移行したが、イギリス はこれに対応するために港を一時閉港した。1942年 12月にイギリス軍 はフランス領ソマリランドの占領を完了した。
1977年 のジブチ共和国独立以来、同国の行政及び商業資本の中心的都市として機能している。
行政区画
ジブチ市のコミューン・区
ジブチ市は州(Région)に属さない特別市 である[ 6] [ 7] 。2002年以前はジブチ県に属していたが、2002年7月7日にジブチ県はジブチ市(仏 : Ville de Djibouti )と新設されたアルタ州 に分割された[ 8] 。ジブチ市は2005年11月1日の「ジブチ市地位法」によって、州と同格の地位にあるジブチ市 (Djibouti-ville、前述のジブチ市とは別)が成立した。
ジブチ特別市は3つのコミューン (Commune)に分けられる。コミューンの下には6つの区(arrondissement)がある[ 9] 。
気候
ジブチ市の周囲は沿岸低地となっており、砂漠 や半砂漠地帯の美しい景観である。年間を通して一般的に非常に暑くて降雨が少なく、市の年間降雨量は平均131ミリメートルと少ない。ただし降雨は少なくとも湿度は非常に高い[ 10] 。12月から2月にかけては非常に暖かいが、夏季は日常的に気温が40°Cを超える。
ジブチ市の気候
月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
年
最高気温記録 °C (°F )
34 (93)
34 (93)
37 (99)
38 (100)
44 (111)
47 (117)
47 (117)
47 (117)
44 (111)
39 (102)
36 (97)
34 (93)
47 (117)
平均最高気温 °C (°F )
28.7 (83.7)
29.0 (84.2)
30.2 (86.4)
32.0 (89.6)
34.9 (94.8)
39.0 (102.2)
41.7 (107.1)
41.2 (106.2)
37.2 (99)
33.1 (91.6)
30.8 (87.4)
29.3 (84.7)
33.93 (93.08)
日平均気温 °C (°F )
25.1 (77.2)
25.7 (78.3)
27.0 (80.6)
28.7 (83.7)
31.0 (87.8)
34.2 (93.6)
36.4 (97.5)
36.0 (96.8)
33.1 (91.6)
29.3 (84.7)
26.9 (80.4)
25.4 (77.7)
29.9 (85.83)
平均最低気温 °C (°F )
21.5 (70.7)
22.5 (72.5)
23.8 (74.8)
25.4 (77.7)
27.0 (80.6)
29.3 (84.7)
31.1 (88)
30.6 (87.1)
28.9 (84)
25.6 (78.1)
23.1 (73.6)
21.6 (70.9)
25.87 (78.56)
最低気温記録 °C (°F )
19 (66)
18 (64)
21 (70)
21 (70)
21 (70)
23 (73)
22 (72)
22 (72)
23 (73)
21 (70)
18 (64)
17 (63)
17 (63)
雨量 mm (inch)
10.0 (0.394)
18.8 (0.74)
20.3 (0.799)
28.9 (1.138)
16.7 (0.657)
0.1 (0.004)
6.2 (0.244)
5.6 (0.22)
3.1 (0.122)
20.2 (0.795)
22.4 (0.882)
11.2 (0.441)
163.5 (6.436)
平均降雨日数
3
2
2
1
1
0
1
1
1
1
2
2
17
% 湿度
74.6
74.7
75.1
76.9
72.6
62.6
45.8
48.7
64.5
68.3
74.2
71.3
67.44
平均月間日照時間
244.9
220.4
263.5
273.0
316.2
282.0
260.4
275.9
279.0
297.6
285.0
272.8
3,270.7
出典1:Hong Kong Observatory[ 11]
出典2:BBC Weather[ 12]
経済
ジブチ市の街並み
東アフリカ トップクラスの近代的港湾施設を持つジブチ港 があり、中継貿易 に利用される[ 13] 。2017年にはジブチ港の10km西側に新港区であるドラレ多目的港が開港した[ 14] 。また、エチオピア の首都アディスアベバ と結ばれるジブチ鉄道 があったが、老朽化が進み道路輸送がメインの状態となっていたため、2016年に中国の援助によってアディスアベバ・ジブチ鉄道が開通し、両国間の輸送状況は大幅に改善された[ 15] 。ジブチの港湾と鉄道・道路は、1993年 にエリトリア が独立し内陸国 となったエチオピアにとって非常に重要であり、エチオピアの対外貿易は目下、ジブチ港により支えられている[ 15] 。ジブチにとっても貿易と陸上・海上運輸 産業は、ジブチの国庫収入の大半を占める最大産業であり、同国全体が自由貿易地帯 に指定されていることもあって、サービス業 も盛んである。このほか、建国以前からフランスの軍事基地が市内に存在し、経済的に重要な存在となっていた[ 16] [ 17] 。2000年代後半に入ると、ソマリア沖の海賊 の討伐のために各国が続々とジブチ市に軍事基地を設置した[ 18] 。
市内にはジブチ国際空港 が在り、エチオピア を始めケニア ・ソマリア ・アラブ首長国連邦 ・イエメン ・フランス などを結んでいる。
文化
ジブチ市内のモスク
主要言語はイッサ人 の話すソマリ語 とアファール人 の話すアファール語 であり、地理的な要因と過去に植民地支配を受けたこともあって公用語 となっているアラビア語 とフランス語 も広く話されている。ジブチはソマリア、アファール、アラブ、フランスなどの多くの異なる民族と文明の影響を受けて発展してきた。
脚注
関連項目
外部リンク
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