かつてスティーブ・ジャクソンの製作するゲームはメタゲーミング社の製品として販売されていた。ガープスの前身となった「ファンタジー・トリップ」(The Fantasy Trip, TFT) も当時の作品である。しかしジャクソンは、メタゲーミング社と袂を分かち、自分自身でゲームを製作・販売する会社を興した。それがスティーブ・ジャクソン・ゲームズ(以下SJG)である。同社はボードゲーム・カードゲーム・テーブルトークRPGなどのゲームをデザインし、自社で出版している。さらに、他社の製品も含めて、通信販売やダウンロード販売も行っている。
1990年3月、テキサス州オースティンにあるSJGのオフィスはシークレット・サービスの強制捜査を受けた。『GURPS・サイバーパンク』原書の原稿が押収されたが、これは単なる偶然であり実際には強制捜査の目的とは全く関係がなかった。この強制捜査はコンピュータ犯罪の全国調査、サンデヴィル作戦(英語版)と関係があると思われがちだが、サンデヴィルはアリゾナを本拠とし、スティーブ・ジャクソンへの強制捜査はシカゴの外で調整されていた。SJG社の表明によれば、これは社員の1人がコンピュータ犯罪に関する怪しげなBBSに関与していたことを理由とするものだった。しかし実際の捜査は、それと無関係なSJG社のBBS(前述の Illuminati BBS)に使われていた機材などを押収しており、捜査理由は数ヵ月に渡って開示されていなかった。この捜査は大きな損害を与えた。当時、金銭的に苦しい状況にあったSJG社は、新製品『ガープス・サイバーパンク』の出版を急いでいた。押収されたコンピュータ類には、その原稿や資料が納められていた。その結果、新製品の発売予定を見直し、人員削減も行われた。その後、SJG社はシークレット・サービスに対して訴訟を行い、勝訴している。3年余りが過ぎた後、連邦裁判所は、この強制捜査はぞんざいであり違法で完全に不当であると裁定を下し、SJGに損害賠償として5万ドル、弁護士費用として25万ドルを支払う決定をした。サイバーパンクの作家ブルース・スターリングはノンフィクション小説 The Hacker Crackdown: Law and Disorder on the Electronic Frontier(英語版) でこの事件を論じた。この訴訟は電子フロンティア財団の設立の促進のほかに、新しいゲーム 「ハッカー(英語版)」 を生み出すことに一役買った。