トネリコ(梣[2]・秦皮[2]、学名: Fraxinus japonica)は、モクセイ科に分類される落葉樹であるトネリコ属中の、日本列島を原産地とする1種。
呼称
和名の由来は、本種の樹皮に付着しているイボタロウムシ[3]が分泌する蝋物質(イボタロウ:いぼた蝋)にあり、動きの悪くなった敷居の溝にこの白蝋を塗って滑りを良くすることから「戸に塗る木(ト-ニ-ヌル-キ)」とされたのが、やがて転訛して「トネリコ」と発音されるようになったものと考えられている。
別名、タモ、サトトネリコともよばれる[1]。
特徴
日本原産種であり、本州の東北地方から中部地方にかけての温暖な山地に分布する[2]。山地の湿った場所に生える[2]。近年は同属のシマトネリコが街路樹や庭木として暖地で多く植えられており、トネリコと混同されていることも多いが、トネリコの植栽はまれである。
落葉広葉樹の高木[2]。樹高は6 - 15メートル (m) になる[2]。樹皮は灰褐色や暗灰褐色で縦に裂ける[2]。若木の樹皮は滑らかで、一年枝はやや太く、淡褐色で無毛である[2]。花期は4 - 5月ごろ[2]。冬芽は円錐形や卵形で灰色、ロウ質に覆われ、内側にある2 - 4枚の芽鱗には黄褐色の毛がある[2]。枝先に頂芽がつき、枝に側芽が対生する[2]。葉痕は半円形や心形で、維管束痕が横に多数並ぶ[2]。
木材としてのトネリコは弾力性に優れ、野球のバットや建築資材などに使用される[4]。1950年代半ばには野球用バットに適した良質なトネリコが入手困難となり、ヤチダモを加工した圧縮バットが開発された[5]。
樹皮は民間薬では止瀉薬や結膜炎時の洗浄剤として用いられる。
新潟県では古くから水田の周囲などに並木として植えられ、刈り取ったイネを架けて乾燥させる「はざ木(はざき・はざぎ)」として利用された[2]。同じ米産地の富山県でも同様の使われ方をし、「ハサ」と呼ばれる。トネリコは田園風景を決定づけていたが、ほとんど失われてしまった。「トネリコは一本だけでは役立たない、何本も並んでいるから役に立つ」といった教訓としても使われることがあった。
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
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