ドルビービジョン (英 : Dolby Vision )は、ドルビー・ラボラトリーズ が開発したハイダイナミックレンジ (HDR)映像のための技術群[ 1] [ 2] [ 3] 。この技術はコンテンツの制作、配信、再生をカバーしている[ 1] [ 4] [ 5] [ 6] 。ドルビービジョンには映像の各フレームの輝度 、色 、シャープネスをディスプレイの色域体積(最大・最小の輝度表示能力と色域 )に合わせて調整するために使用される動的メタデータ が含まれている[ 7] [ 2] [ 8] 。これによって、すべてのドルビービジョン対応ディスプレイにおいて、クリエイティブな意図を維持できる。2014年に導入され[ 1] [ 9] [ 10] 、最初に利用可能なHDRフォーマットとなった。
ドルビービジョンIQ は、周囲の明るさに応じてドルビービジョン・コンテンツを最適化するためのアップデートである[ 11] 。
『トゥモローランド 』は、2015年に発表した「ドルビービジョン」を初めて導入した作品である。
解説
ドルビービジョンはドルビー・ラボラトリーズ が開発したHDRフォーマットで、Ultra HD Blu-ray およびストリーミングビデオ でオプションとしてサポートされている[ 12] [ 13] 。対抗規格はHDR10 だが規格上はドルビービジョンが先に誕生。ドルビービジョンは独自フォーマットであり、ドルビーのビジネス副社長ジャイルズ・ベイカーはドルビービジョンのロイヤルティ費用はテレビ一台当たり3ドル以下だと述べている[ 14] [ 15] [ 16] 。ドルビービジョンにはPQ(SMPTE ST 2084) 電気光伝達関数 、最大8Kの解像度および広色域色空間(YCB CR ないし IPTPQc2 のITU-R Rec. BT.2020 )が含まれている。一部のドルビービジョンのプロファイルでは、12ビットのカラー深度と10,000cd/m2 の最大輝度[ 17] が含まれている(ドルビービジョンのホワイトペーパーによると、2018年時点でドルビービジョンHDRリファレンス・モニターなどの業務用リファレンス・モニターはピーク輝度4,000cd/m2 に制限されている)[ 18] 。マスタリング用ディスプレイのカラリメトリー 情報を静的メタデータ(SMPTE ST 2086)を用いてエンコードすることもできるが、iPhone 12のようにシーンごと[ 19] ないしフレームごとの動的メタデータ(SMPTE ST 2094-10、ドルビー形式)を提供することもできる[要出典 ] 。
ドルビービジョンをサポートするUltra HD(UHD) テレビの例としてはLG 、VU、ソニー 、Vizioなどがある[ 20] 。MulticoreWare社のx265 エンコーダーはバージョン3.0でドルビービジョンをサポートした[ 21] 。ドルビービジョンIQは、周辺光に応じてドルビービジョンのコンテンツを最適化するように設計されたアップデートである[ 22] 。これは2021年ごろからのごく一部のテレビで採用[ 23] 。対抗規格はHDR10+ 。
この動的メタデータないし動的HDRを使用すると、シーンごとないしフレームごとに必要に応じて、ビデオ/映画の中で何度でも明るさとコントラスト(実際にはトーンカーブ)を調整できるようになる[ 24] 。
技術的詳細
ドルビービジョン方式は最大10,000cd /m2 のピーク輝度 と、最大でRec. 2020 の色域 の映像を表現できるフォーマットである[ 8] 。現在のディスプレイではドルビービジョンの完全な輝度と色域を再現する能力を有していない。民生用ディスプレイには輝度と色域の能力に関する要件は求められていない。民生用ディスプレイの色域体積がマスタリング・ディスプレイよりも小さい場合には、コンテンツは動的メタデータに基づいて民生用ディスプレイの能力にあわせて調整される。
ドルビービジョンのマスタリング・ディスプレイの要件:[ 25]
EOTF :PQ
ピーク輝度:少なくとも1,000cd/m2
黒レベル:多くとも0.005cd/m2
コントラスト比:少なくとも200,000:1
色域:少なくともP3 の99%
メタデータ
ドルビービジョンの動的メタデータ の要件:[ 7]
L0 (静的):マスタリングと対象ディスプレイの特性
L1 (動的):自動生成
L2 trims (動的):フレームごとないしシーンごとに手動で生成
L3 trims (動的):フレームごとないしシーンごとに手動で生成(CMv4.0以降)
L8 trims (動的):フレームごとないしシーンごとに手動で生成(CMv4.0以降)(L2 trimsと同等)
L5 :タイムラインのアスペクト比記述
L6 (静的かつオプション): MacCLLおよびMaxFALL(HDR10 で必要)
L9 (動的):マスタリング・ディスプレイの原色色度 (CMv4.0以降)
ドルビービジョン4.0では色相とサイドを調整するための、新しい2次トリムが導入されている[ 26] 。
プロファイル
新しいアプリケーションではサポートされていないプロファイル[ 27]
プロファイル
コーデック
BL:EL解像度
下位互換
0
AVC
1:1/4
SDR
1
1:1
なし
2
8ビットHEVC
1:1/4
SDR
3
1:1
なし
6
10ビットHEVC
1:1/4
HDR10
8.3
拡張レイヤーなし
8.5
一部のドルビービジョンのプロファイルでは、基本レイヤーと拡張レイヤーを合成して12ビットの映像信号を生成している[ 4] 。
ファイル形式
ライセンス
ドルビービジョンはドルビー・ラボラトリーズ の独自ソリューションである[ 34] 。2021年、互換性のあるカラー・グレーディング・システムで、コンテンツ制作者は追加費用なしでドルビービジョンの自動メタデータを生成することができる[ 34] 。コンテンツ制作者が映像を手動で調整できるトリムを有効にするには、年間2,500ドルのライセンスが必要である[ 34] 。グレーディング、マスタリング、編集その他の業務用アプリケーションや機器のOEMおよび製造業者はライセンスの申請が必要である[ 34] 。
適用
HDMIケーブルのバージョンはPS4 に付属するケーブルより後に登場したもの、つまりver2.0以降のものが最低でも必要である。2024年現在はYouTube でのDolby Vision出力は事実上不可能(HDR10 は可能)。
ハードウェア
ソフトウェア
カラー・グレーディング :[ 34]
Autodesk Lustre
Autodesk Flame 2021
Blackmagic Design Davinci Resolve
Digital Vision Nucoda
Filmlight Baselight
Grass Valley RIO
SGO Mistika
エンコーダー :
x265 :プロファイル5、プロファイル8.1およびプロフィル8.2(バージョン3.0以降)[ 39]
メディアプレイヤー :
対応デバイス(スマートフォン 以外)
ドルビービジョンが導入された劇場
ドルビービジョンが導入されたスタジオ
国内
ドルビービジョンが導入された物理媒体
ドルビービジョンが導入された配信媒体
ドルビービジョンが採用された作品
洋画
邦画
海外TV
国内TV
海外ストリーミング配信
国内ストリーミング配信
脚注
外部リンク