マッシヴ・アタック (Massive Attack)は、イギリス ・ブリストル 出身の音楽ユニット。現在までに5枚のスタジオ・アルバム、1枚のベスト・アルバムをリリースしている。また、他のアーティストのリミックスも多数手がけている。
概要
ヒップ・ホップ 、レゲエ を中心に、ジャズ 、ソウル 、ロック など様々なサウンドをミックスした独自の音楽性を有するグループ。方法論はダンスミュージック の体裁でありながら、暗く重い、気だるい浮遊感のあるサウンドが特徴で、そのサウンドは後にトリップ・ホップ やブリストル・サウンドと言うジャンルで語られる事となる。抵抗的な音楽(レベルミュージック)としての性格を併せ持った楽曲も多く、それらもマッシヴ・アタックの概観を語るのに欠かすことはできない。
1stアルバム『ブルー・ラインズ 』はその独創性や目覚ましい完成度から非常に高い評価を受け、1990年代 後半の多くのブラックミュージック やオルタナティヴ・ロック 、エレクトロニカ 、果てはラップメタル 、ニュー・メタル などにまで、この作品からの直接的・間接的な影響は及ぶとされている。コクトー・ツインズ のエリザベス・フレイザー らを迎えて制作された3rdアルバム『メザニーン 』は、ロック色を強めた音像を基調にしつつも、マッシヴ・アタックが影響を与えた多くのグループが生み出した作品からの逆影響が覗える音楽性で、世界的に成功した作品となり、同時に彼らの代表作でもある。
略歴
1982年 - 1995年
1982年、ブリストルにてネリー・フーパー 、DJ マイロ、グラント・マーシャル(ダディ・G)を中心にサウンド・システム を結成し、「ワイルド・バンチ (Wild bunch)」と名乗った。ロバート・デル・ナジャ(3D)、アンドリュー・ヴォウルズ(マッシュルーム)の加入とネリー・フーパー、DJ マイロの脱退を経て解散した。サウンド・システムの解散後に、シングル「Friends And Countrymen」をリリースしている。その後、グラント・マーシャル(ダディ・G)、ロバート・デル・ナジャ(3D)、アンドリュー・ヴォウルズ(マッシュルーム)によりマッシヴ・アタック として活動を開始する。
1988年 にシングル「Any Love」をリリース(プロデュースはスミス・アンド・マイティ )。
1989年 、ネナ・チェリー のアルバム『ロウ・ライク・スシ』に、ロバート・デル・ナジャ(3D)とアンドリュー・ヴォウルズ(マッシュルーム)が参加。ロバート・デル・ナジャ(3D)と共に作曲したシングル「Manchild」は、全英チャート5位(MUSIC WEEK)のヒットを記録した。[ 1]
1991年 に1stアルバム『ブルー・ラインズ 』をリリース。シンガーにホレス・アンディ 、シャラ・ネルソン を迎えている。湾岸戦争時にリリースされたシングル「Unfinished Sympathy」のアーティスト名義は、イギリス政府の意向を受け“マッシヴ・アタック”から“マッシヴ”へ一時的に改名している。「Unfinished Sympathy」は、全英チャート13位(MUSIC WEEK)のヒットを記録した。
1994年 に2ndアルバム『プロテクション 』をリリース。マーク“スパイク”ステントをプロデューサーに迎えて制作された。1995年にシングルカットされた「Protection」は、全英チャート14位(MUSIC WEEK)を記録。「Protection」「Better Things」の2曲でエヴリシング・バット・ザ・ガール のトレイシー・ソーン を、「Karmacoma」「Eurochild」ではワイルド・バンチの準メンバーであったトリッキー をゲストに迎えている。またピアノ、ストリングス・アレンジャーとしてクレイグ・アームストロング が関わっている。
同年、バンドはブリット・アワード のベスト・ダンス・アクトに選出された。
1995年 にリミックス・アルバム『ノー・プロテクション 』をMassive Attack Vs. Mad Professor 名義でリリース。このアルバムは前年にリリースされた『プロテクション』の楽曲(すべてではないがほぼ全曲)をダブ・アーティストのマッド・プロフェッサー がリミックスしたアルバムである。プロテクションを斬新に解体、再構築したそのサウンドは結果的にマッド・プロフェッサー並びにマッシヴ・アタックの新作同様の扱いを受けた。
1998年以降
ハイド・パーク にて(2009年7月)
1998年 には3枚目のアルバム 『メザニーン 』がリリースされた。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド 、 スージー・アンド・ザ・バンシーズ やザ・キュアー [ 2] からサンプリングを多用し、緊張感あふれる歪んだギター・サウンドとドラムマシンのサウンドが前面に押し出され、その一方でこれまでの彼らにあったジャズの要素は薄れていた。このアルバムはバンドに初めてのアメリカでの成功をもたらした。マッシュルームはこの音楽性の変化に不満を感じ、このアルバムがリリースされた後にバンドを脱退した。彼の後任として(正規のメンバーではないが)ニール・デーヴィッジが迎えられた。『メザニーン』をリリースした後、バンドはツアーに出る。このツアーはこれまでのマイクとターンテーブルと言うシンプルなセットに加えて、ゲスト・ボーカリストにギタリスト、ベーシスト、ドラマー、キーボーティストで編成されたバンドもツアーに組み込まれた。また照明や映像と言った音楽以外の演出も組み込まれた。
2003年 に4枚目のアルバム『100th Window 』をリリース。このアルバムはダディ・Gが参加せずに制作が行われ、実質3Dのソロ・アルバムとなった。ダディ・Gの不参加の理由は育児のためであった。
2004年 にマッシヴ・アタックは3Dに加えニール・デーヴィッジ、アレックス・スウィフトを迎え入れた。この編成で映画『ダニー・ザ・ドッグ 』(プロデュースはリュック・ベッソン )のサウンドトラックが制作された。翌年2005年 には映画『ブレット・ボーイ(Bullet Boy)』のサウンドトラックへ参加した。
2006年 には2枚組ベスト・アルバム『コレクテッド 』をリリース。これまでのアルバムからの選曲に加え、何曲かのレア・シングル曲と2曲の新曲「リヴ・ウィズ・ミー」と「フォルス・フラッグス」が収録された。
その後3Dとダディ・Gは、5枚目のアルバム『Weather Underground』を制作するために再びスタジオに入った。ただし3Dとダディ・Gは同じスタジオには入っていない。プロデューサーにニール・デーヴィッジを迎え、ダディ・Gはブリストルにある別のスタジオで3Dとは別にこのアルバムのための作業を行っている。またボーカリストにはドット・アリソン 、ホレス・アンディ 、マイク・パットン 、そしてモス・デフ が迎えられている。
ヴァージン・レコード からはこのアルバムは2007年 2月にリリースされると発表された。しかしながら2006年12月にBBC のレディオ・ワンで3Dが語ったところによれば、このアルバムの制作は遅れており、リリースは2007年中であれば良いと言う事である。また彼は「Weather Underground」というタイトルは今となっては気に入らなくなったとも語っている。
2008年 6月、「メルトダウン・フェスティバル 」のキュレーターを務め、YMO 、グレイス・ジョーンズ 、ジョージ・クリントン らを招いた。
2010年 2月、前作より実に7年ぶりとなる新作『ヘリゴランド 』を発表。それに伴い、フジロックフェスティバル 2010の最終日(2010/8/1)にヘッドライナーとして来日。
2012年 11月、ニール・デーヴィッジを作曲者として起用したXbox 360 専用ソフト『Halo 4 』がリリース。
ディスコグラフィ
アルバム
メンバー
現役メンバー
ロバート・デル・ナジャ (英語版 ) (3Dという名称でも知られる。1988– ) は、創設メンバー・固定メンバーである。ボーカル、キーボード、ギター、プログラマー、アレンジャー、プロデューサー、ミキサー。
グラフィティ・アーティストと活動していた時の作品が、正体不明の芸術家バンクシー と似ていたなどの理由でバンクシーの正体という憶測が流れたが、本人らによって否定された[ 3] 。
元メンバー
ツアーメンバー
Elizabeth Fraser – ボーカル (1998– )
Deborah Miller – ボーカル、パーカッション (1990– )
Horace Andy – ボーカル (1990– )
Alex Lee – ギター (2019– )
Winston Blissett – バスギター (1995– )
Damon Reece – ドラム (2006– )
Julien Brown – 電子ドラム (2009– )
Euan Dickinson – キーボード、シンセサイザー, samples (2016– )
元ツアーメンバー
Kwame Boaten – bass (1996-1999)
Andrew Smalls – drums, electronic drums (1995-2008)
Michael Timothy – keyboards, synthesizers, samples (1998)
Hazel Fernandez – vocals (2004)
Yolanda Quartey – vocals (2004)
Azekel – vocals (2016)
Dot Allison – vocals, guitar (2003)
Arden Hart – keyboards (2003, 2006)
Lucy Wilkins – violin, keyboards (2003)
John Baggott - keyboards, synthesizers, samples (2008-2010)
Angelo Bruschini – guitars (1995–2023(肺癌での死去による脱退[ 4] ))
出典