|
この項目では、鳥類について説明しています。映画については「ムクドリ (映画)」をご覧ください。 |
ムクドリ(椋鳥・鶁[1]・白頭翁[1]、学名: Spodiopsar cineraceus)はスズメ目ムクドリ科の鳥類の1種[2]。英名は White-cheeked Starling または Grey Starling。
形態
全長24cm ほどで[3]、およそスズメとハトの中間ぐらいの大きさである。尾羽を加えるとヒヨドリより一回り小さい。翼と胸、頸は茶褐色で、頸から頭部にかけてと腰に白い部分が混じり、足および嘴は黄色い。
雄は胸や腹・背が黒っぽく、雌は褐色に近い。
分布
東アジア(中国、モンゴル、ロシア東南部、朝鮮半島、日本)に分布する。
日本国内ではほぼ全域に分布する留鳥で、北部のものは冬には南部に移動するようである。低地の平野や低山地にかけて広く生息し、都市部などの人家付近や田畑などでもよく見られる。
生態
| この節には独自研究が含まれているおそれがあります。 問題箇所を検証し出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2024年5月) |
雑食性で、植物の種子や果物、虫の幼虫などを好んで食べる。地面に降りて歩いて虫などを探すこともあれば、木の枝に留まってカキなどの熟した実をついばむ様子も観察される。椋の木の実を好んで食べるため「椋鳥」と呼ばれるようになったといわれている[誰によって?]が、これに限らず幅広く食べている。
繁殖期は春から夏で、番いで分散し、木の洞や人家の軒先などの穴に巣を作る。両親ともに子育てを行い、とくに育雛期には両親が揃って出掛け、食糧を探して仲良さそうに歩き回る様子が観察される。
繁殖期は巣で寝るが、ヒナが巣立つと親子ともに集まって群れを形成するようになり、夜は一か所に集まってねぐらを形成する。ねぐらには 10km 以上の範囲から集まり、冬は数万羽の大群となることもある。かつては河原の広葉樹や人家の竹藪に集まっていたが、そういった環境は開発で減少したため、都市部の街路樹などにねぐらをとる例も増えている。
鳴き声は「ギャーギャー」「ギュルギュル」「ミチミチ」など。かなりの音量であり、大量にムクドリが集まった場合には、パチンコ店内の音量と同じレベルに達する。
都市部などでも、非常に多くの群れを成して生活する場合がある。そのため、大量の糞による汚染被害や、鳴き声による騒音被害が社会問題化している。夜11時を過ぎても大きな鳴き声が止まらない場合もあり、深刻な問題として議論されているが、法的な問題もあって解決に至らない場合もある。
吸血害虫であるトリチスイコバエが体表に寄生している場合がある[4]。
ギンムクドリとの雑種
本種とギンムクドリの交雑個体と考えられるものが観察されている。2009年5月、高知県宿毛市で実際に本種の雌とギンムクドリの雄が交雑したことが報告された[5]。
人間との関係
文化的な関わり
日本語の「ムクドリ」の語源としては、ムクノキの実を好むからとする説[6][7]、常にムクノキに棲んでいるためとする説[7]、騒がしいので「むくつけしとり」の略とする説[6]などがある。群になる特徴から「群来鳥」「群木鳥」「雲鳥」などの表現もある[7]。
日本の方言では、モク、モズ、クソモズ、モンズ、サクラモズ、ツグミ、ヤマスズメ、ナンブスズメ、ツガルスズメなど様々に呼ばれている[要出典]。秋田県の古い方言では、ムクドリのことを「もず」「もんず」と呼んでいる[要出典]。
日本では、文学の中にムクドリがしばしば登場する。椋鳥は冬の季語と定められている。江戸時代、江戸っ子は冬になったら集団で出稼ぎに江戸にやってくる奥羽や信濃からの出稼ぎ者を、やかましい田舎者の集団という意味合いで「椋鳥」と呼んで揶揄していた[8][6]。俳人小林一茶は故郷信濃から江戸に向かう道中にその屈辱を受けて、「椋鳥と人に呼ばるる寒さかな」という俳句を残している。明治時代には、森鷗外が、日本=世界の中の田舎者という意味で、海外情報を伝える連載コラムに「椋鳥通信」というタイトルをつけた[9]。
宮沢賢治の短編童話『とりをとる柳』に「もず」として登場する、千ほどの集団で一斉に木から飛び立つ様子が描写された鳥が、標準和名のモズではなく本種であったと指摘されている[10][11][12]。
モーツァルトのピアノ協奏曲第17番第3楽章には、ムクドリのさえずりを基にした旋律が主題として用いられているといわれるが、これは別種ホシムクドリについての逸話である[13]。
人間の暮らしとの関わり
ムクドリは日本に広く生息しているため、野鳥観察において、大きさを表現するための物差し鳥として利用されている[要出典]。
またムクドリは、現在の日本では食用にはされていないが、『大和本草』には食用にされてきたことをうかがわせる「味よし」という記載がされている[14]。
益鳥として
ムクドリはもともとは、農作物に害を及ぼす虫を食べる益鳥とされていた。平均的なムクドリの家族(親2羽、雛6羽)が1年間に捕食する虫の数は百万匹以上と研究されている。
当時[いつ?]害虫を1匹駆除するのに1円かかるといわれていたため、ムクドリ1家族で年間に百万円以上の利益を国家にもたらす「農林鳥」とたたえられたほどである。
害鳥として
生息環境の破壊により、ムクドリが都市に適応して大量に増殖すると、鳴き声による騒音や糞害などがしばしば問題になる。日本国内では1994年からは狩猟鳥に指定されている[15]。
農研機構では、鳥が天敵に捕まった時に発声する声を、鳥に忌避行動を起こさせる「ディストレス・コール」として用い、ムクドリやスズメを追い払う効果を試みている[16][17]。
2021年には、強力なLEDライトを当てることで効果を出している自治体もあるが、他の地域にムクドリが移動するだけであり、イタチごっこの状態が続いている。
脚注
関連項目
ウィキスピーシーズに
ムクドリに関する情報があります。
ウィキメディア・コモンズには、
ムクドリに関連するメディアがあります。