中期防衛力整備計画(ちゅうきぼうえいりょくせいびけいかく)は、日本国自衛隊の国防計画。本記事では平成23年度(2011年4月)から平成27年度(2016年3月)までの中期防衛力整備計画(23中期防)について解説する。本計画は2012年12月16日に執行された第46回衆議院議員総選挙の結果成立した自由民主党・第2次安倍内閣の2013年1月25日の閣議決定をもって廃止され、26中期防に引き継がれた[1][2]。なお、平成25年度(2013年度)予算は「平成25年度の防衛力整備等について」(閣議決定)[3]に基づき編成された[4]。
関連して、当初の計画初年度であった2010年度の防衛力整備計画について、自由民主党政権(麻生太郎内閣)下で計画されていた内容と民主党政権(菅直人改造内閣)下で策定されたものも併せて解説する。
平成22年度予算
当初の中期防計画策定は2009年末に予定されていたが、同年8月30日に実施された第45回衆議院議員総選挙の結果、同年9月に55年来続いてきた自民党政権から民主党へ政権交代が行われた。これにより中期防の見直しが図られ、2009年10月16日の基本政策閣僚委員会にて策定時期を1年先送りにすることが決定され、1986年以来続いていた中期防にはじめての空白期間が出来る事となった。
平成22年度(2010年度)の防衛関係費予算は2009年12月17日の閣議決定[5]に基づき防衛大綱と中期防の裏づけの無い単年度予算で編成され、4兆6,826億円(対前年度比0.4%減)となった。
中期防策定の遅れは次期戦闘機導入計画(F-X)の機種選定にも影響を及ぼし、F-Xに関係している住友電気工業などの部品製造業者が事業から撤退する方針を明らかにするなどの影響も出ている。
自民党政権下で構想されていた内容
- 海上自衛隊は、ヘリコプター5機の同時発着や洋上補給のできる基準排水量19,500トンのヘリコプター搭載護衛艦1隻を2010年度予算で要求。
平成22年度装備調達計画
- 陸上自衛隊
- 海上自衛隊
- 航空自衛隊
装備 |
当初調達予定 |
見直し後調達量[6] |
内容
|
F-15戦闘機の近代化改修 |
4機 |
2機 |
F-15J
|
F-15戦闘機の自己防御能力の向上 |
4機 |
2機
|
F-2戦闘機の空対空戦闘能力の向上 |
4機 |
1機 |
F-2
|
F-2戦闘機へのJDAM機能の付加(能力向上装備品[9]) |
35機 |
同左
|
新戦闘機 |
7機 |
削除 |
F-35
|
輸送ヘリコプター |
1機 |
同左 |
CH-47J
|
早期警戒機の改善 |
1機 |
E-2C
|
早期警戒管制機レーダー機能の向上 |
3機 |
E-767
|
ペトリオット・システムの改修(LS改修) |
6式 |
ペトリオット
|
装甲機動車 |
40両 |
26両 |
軽装甲機動車
|
23中期防
民主党政権に移行して初めての中期防策定であり、平成22年12月17日、閣議決定された[10][11]。当初含まれるとされていた武器輸出三原則の見直しについては見送られたが、策定から1年後の2011年12月27日、野田内閣の藤村修官房長官が事実上の規制緩和となる談話を発表した[12]。なお、2013年1月25日の閣議決定をもって廃止された。
方針
概要
組織改編
一部を除き実施され、未実施分は2013年5月に発表された新たな概算要求の資料においても同様の記述がある。
- 陸上自衛隊
- 5個師団及び1個旅団の改編 - 第4師団・第12旅団の改編を実施。
- 地対空誘導弾運用部隊(8個高射特科群)のうち、1個群を連隊に改編。
- 南西諸島有事に迅速に対処するため、島嶼部に沿岸監視隊を配備。
- 海上自衛隊
- 護衛艦部隊(地域配備)の5個護衛隊を機動運用化した上4個護衛隊に整理。
- 潜水艦増勢のための必要な措置の実施。
- 航空自衛隊
- 現行の8個航空団のうち1個を廃止し、新たに南西航空混成団隷下に1個航空団を新編する。
主要装備調達計画
- 陸上自衛隊
装備 |
計画調達量 |
実績
|
戦車 |
68両 |
|
火砲(迫撃砲を除く) |
32両 |
|
装甲車 |
75両 |
|
地対艦誘導弾 |
18両 |
|
戦闘ヘリコプター(AH-64D) |
3機 |
|
輸送ヘリコプター(CH-47JA) |
5機 |
|
中距離地対空誘導弾 |
4個中隊 |
|
- 海上自衛隊
装備 |
計画調達量 |
実績
|
護衛艦 |
3隻 |
|
潜水艦 |
5隻 |
|
その他 |
5隻 |
|
固定翼哨戒機(P-1) |
10機 |
|
哨戒ヘリコプター(SH-60K) |
26機 |
|
掃海・輸送ヘリコプター(MCH-101) |
5機 |
|
イージス・システム護衛艦の能力向上 |
2隻 |
|
- 航空自衛隊
装備 |
計画調達量 |
実績
|
新戦闘機 |
12機 |
|
戦闘機(F-15)近代化改修 |
16機 |
|
新輸送機 |
10機 |
|
地対空誘導弾ペトリオットの能力向上 |
1個高射隊 |
|
装備調達実績
- 陸上自衛隊
装備
|
H23[13]
|
H24+補正[14][15]
|
H25+補正[15][16]
|
内容
|
拳銃 |
137丁 |
90丁 |
90丁 |
9mm拳銃
|
小銃 |
10,033丁 |
9,513丁 |
6,949丁 |
89式小銃
|
対人狙撃銃 |
91丁 |
49丁 |
75丁 |
M24対人狙撃銃
|
機関銃 |
212丁 |
200丁 |
188丁 |
5,56mm機関銃MINIMI
|
重機関銃 |
113丁 |
113丁 |
114丁 |
12.7mm重機関銃
|
多用途ガン |
- |
3門 |
17門 |
カールグスタフM3
|
迫撃砲 |
1門 |
6門 |
5門 |
81mm迫撃砲 L16
|
迫撃砲 |
1門 |
3門 |
2門 |
120mm迫撃砲 RT
|
自走榴弾砲 |
6両 |
6両 |
6両 |
99式自走155mmりゅう弾砲
|
戦車 |
13両 |
13両 |
14両 |
10式戦車
|
軽装甲機動車 |
56両 |
49両 |
44両 |
軽装甲機動車
|
装輪装甲車 |
11両 |
13両 |
11両 |
96式装輪装甲車
|
偵察警戒車 |
1両 |
1両 |
1両 |
87式偵察警戒車
|
NBC偵察車 |
2両 |
0両 |
2両 |
NBC偵察車
|
多用途ヘリコプター |
2機 |
1+1機 |
1+1機 |
UH-60JA
|
輸送ヘリコプター |
1機 |
2+1機 |
0+2機 |
CH-47JA
|
戦闘ヘリコプター |
1機 |
1機 |
1機 |
AH-64D
|
新練習ヘリコプター |
28機 |
0機 |
0機 |
TH-480D
|
中距離地対空誘導弾 |
1個中隊 |
1+1個中隊 |
0個中隊 |
03式中距離地対空誘導弾
|
短距離地対空誘導弾 |
3式 |
1+1式 |
0式 |
11式短距離地対空誘導弾
|
多目的誘導弾 |
1セット |
3セット |
- |
96式多目的誘導弾システム
|
中距離多目的誘導弾 |
12セット |
11セット |
11セット |
中距離多目的誘導弾
|
地対艦誘導弾 |
- |
2式 |
4両 |
12式地対艦誘導弾
|
- 海上自衛隊
装備
|
H23[13]
|
H24+補正[14][15]
|
H25[15]
|
内容
|
護衛艦 |
- |
- |
1隻 |
あさひ型
|
護衛艦 |
- |
1隻 |
- |
いずも型
|
潜水艦 |
1隻 |
1隻 |
1隻 |
そうりゅう型
|
掃海艦 |
- |
- |
1隻 |
あわじ型
|
掃海艇 |
1隻 |
0隻 |
0隻 |
えのしま型
|
護衛艦の延命 (艦齢延伸工事) |
1隻 |
0隻 |
0隻 |
はつゆき型
|
護衛艦の延命 (艦齢延伸部品調達) |
- |
1隻 |
3隻
|
護衛艦の延命 (艦齢延伸工事) |
1隻 |
2隻 |
2隻 |
あさぎり型
|
護衛艦の延命 (艦齢延伸部品調達) |
3隻 |
2隻 |
4隻
|
護衛艦の延命 (艦齢延伸部品調達) |
- |
2隻 |
4隻 |
あぶくま型
|
護衛艦の延命 (艦齢延伸部品調達) |
- |
1隻 |
1隻 |
はたかぜ型
|
潜水艦の延命 (艦齢延伸工事) |
- |
- |
2隻 |
おやしお型
|
潜水艦の延命 (艦齢延伸部品調達) |
- |
- |
1隻
|
補給艦の延命 (艦齢延伸工事) |
1隻 |
0隻 |
0隻 |
とわだ型
|
補給艦の延命 (艦齢延伸部品調達) |
- |
- |
2隻
|
護衛艦等の短SAMシステムの機能向上 |
0隻 |
1隻 |
0隻 |
むらさめ型
|
イージス艦の能力向上 |
- |
2隻 |
0隻 |
あたご型
|
エアクッション艇の延命 (艦齢延伸工事) |
- |
- |
2式 |
LCAC
|
エアクッション艇の延命 (艦齢延伸部品調達) |
1式 |
1式 |
-
|
固定翼哨戒機 |
3機 |
0機 |
2機 |
P-1
|
哨戒ヘリコプター |
3機 |
4+3機 |
0機 |
SH-60K
|
掃海・輸送ヘリコプター |
2機 |
1+2機 |
0機 |
MCH-101
|
救難飛行艇 |
0機 |
0機 |
1機 |
US-2
|
初等練習機 |
5機 |
4機 |
3機 |
T-5
|
回転翼練習機 |
2機 |
0機 |
3機 |
TH-135
|
固定翼哨戒機の延命 |
1機 |
0機 |
2機 |
P-3C
|
回転翼哨戒機の延命 |
2機 |
2機 |
2機 |
SH-60J
|
- 航空自衛隊
装備
|
H23[13]
|
H24+補正[14][15]
|
H25[15]
|
内容
|
次期戦闘機 |
0機 |
4機 |
2機 |
F-35
|
戦闘機の近代化改修 |
8機 |
2+4機 |
6機 |
F-15J
|
戦闘機の自己防御能力の向上 |
2機 |
1+2機 |
0機
|
戦闘機のIRST搭載改修 |
- |
- |
-
|
戦闘機の空対空戦闘能力の向上 (既就役装備品の改修役務) |
3機 |
12機 |
12機 |
F-2
|
戦闘機の空対空戦闘能力の向上 (能力向上装備品) |
36機 |
- |
-
|
戦闘機へのJDAM機能の付加 |
12機 |
20機 |
11機
|
次期輸送機 |
2機 |
2機 |
0機 |
C-2
|
次期救難ヘリコプター |
3機 |
0+2機 |
0機 |
UH-60J(近代化)
|
基地防空用SAM |
教育用1式 |
2[17]+2式 |
0式 |
基地防空用地対空誘導弾
|
軽装甲機動車 |
9両 |
2両 |
1両 |
軽装甲機動車
|
ペトリオット・システムの改修(BMD) |
1式+定修1式 |
0式 |
0式 |
|
脚注
- ^ “防衛費1000億円上積み、現行大綱、中期防は凍結”. MSN産経. オリジナルの2013年1月4日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/lZzyp 2013年1月5日閲覧。
- ^ “対中脅威、即応力を強化 新防衛大綱、年内に策定”. 産経新聞. (2013年1月26日). オリジナルの2013年4月27日時点におけるアーカイブ。. https://archive.ph/6Q5kZ 2013年1月26日閲覧。
- ^ 平成25年度の防衛力整備等について平成25年(2013年)1月25日、安全保障会議決定・閣議決定
- ^ 平成25年度防衛関係予算のポイント平成25年1月、財務省吉井主計官
- ^ 平成22年度の防衛力整備等について平成21年(2009年)12月17日、安全保障会議決定・閣議決定
- ^ a b c 我が国の防衛と予算 平成22年度予算の概要(防衛省公式サイト)(国立国会図書館インターネット資料収集保存事業)
- ^ a b 4ヵ年度分集中調達
- ^ 2ヵ年度分集中調達
- ^ この予算は能力向上装備品の先行的な調達で、機体改修予算の計上は平成23年(2011年)度予算からとなる。
- ^ 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱(2010年12月17日閣議決定)
- ^ 中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度・閣議決定)
- ^ 「防衛装備品等の海外移転に関する基準」についての内閣官房長官談話(PDF)]首相官邸 2011年12月27日
- ^ a b c 我が国の防衛と予算 平成23年度予算の概要(防衛省公式サイト)
- ^ a b c 我が国の防衛と予算 平成24年度予算の概要(防衛省公式サイト)
- ^ a b c d e f 我が国の防衛と予算 平成25年度予算の概要 (防衛省公式サイト)
- ^ 平成25年度補正予算
- ^ 内教育用1式
関連項目
外部リンク
日本の防衛力整備計画 |
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防衛大綱策定前 | |
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51大綱(中業) |
- 中期業務見積り
- 53中業 (1980)
- 56中業 (1983)
- 59中業 (1986) ※中期防に移行
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51大綱(中期防) | |
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07大綱 | |
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16大綱 | |
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22大綱 | |
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25大綱 | |
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30大綱 | |
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国家防衛戦略策定以降 | |
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関連項目 | |
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