十一芒星
十一芒星 (じゅういちぼうせい、英語 :hendecagram, endecagram, endekagram、エンデカグラム)とは、幾何学 において、11個の頂点 を持つ星型多角形 のことである。
語源
英語において十一芒星を意味する単語である「hendecagram」は、「11」を意味する古代ギリシア語 由来の倍数接頭辞 である「hendeca- 」と、同じく古代ギリシア語で「記録されたもの」といった意味を表す言葉に由来する接尾辞 である「-gram 」の合成によって成り立っている。さらに、接頭辞 の「hendeca-」は古代ギリシア語で「11」を表す「ἕνδεκα 」に由来する。そして、「ἕνδεκα」は、「1」を意味する「ἕν 」と、「10」を意味する「δέκα 」という2つの単語を合成したものである。また、接尾辞の「-gram」は、古代ギリシア語で「線 」を意味する単語である「γραμμῆς 」(grammēs)に由来する[ 1] 。
正十一芒星
互いに相似 でも合同 でもないような正十一芒星 (せいじゅういちぼうせい)は全部で4種類存在する[ 2] 。それぞれの正十一芒星は、シュレーフリ記号 を用いると、{11/2}、{11/3}、 {11/4}、{11/5}のように表記される。この表記においては、スラッシュ (/)の後の数字は辺 によって接続されている頂点の組の間にある、他の辺との交点の数を示している。これらと同様の4種類の正十一芒星は、正十一角形 を星型化 したものとみなすこともできる[ 3] 。
11は素数 であることから、全ての十一芒星は星型多角形であり、複合的な図形になることはない。
作図
頂点の数が奇数 でありかつ、フェルマー素数 ではない奇数の素因数 をもつ他の全ての正多角形 並びに星型正多角形 と同様に、正十一芒星は定規とコンパスのみを用いて作図すること はできない[ 4] 。しかしながら、Hilton & Pedersen (1986) により、長方形 の紙 を折ることによって、4種類の正十一芒星のうち、{11/3}、{11/4}、{11/5}の3種類については作図することが可能であることが証明され、その方法が説明されている[ 5] 。
人工物・自然物に見られる十一芒星
フォート・ウッド の、十一芒星形の壁は、自由の女神の土台となっている。
正十一芒星({11/3}もしくは{11/4})の上にあるプリズム は、デオキシリボ核酸 (DNA)の構造を説明する際に、そのおおよその形として言及されることがある[ 6] 。
モミネ・ハトゥン廟 (英語版 ) に見られる十一芒星
2021年現在ではアメリカ合衆国 のニューヨーク市 にある自由の女神 の土台となっているフォート・ウッド と呼ばれる星形要塞 は、正十一芒星ではない十一芒星の形をしている[ 7] 。
トプカリ絵巻 (英語版 ) には、イスラム美術 において使われる十一芒星のギリー (模様) (英語版 ) が含まれている。この絵巻に含まれている十一芒星は標準的な十一芒星の形の一つにはなっていないが、その代わりに十一角形の頂点と、それとはほぼ反対側にある十一角形の辺の中点とを結ぶ線分を用いている[ 8] 。十一芒星のギリーの模様はアゼルバイジャン にあるモミネ・ハトゥン廟 (英語版 ) においても使われている。エリック・ブルーグ は自身の著書において、この模様について「イスラーム美術の幾何学的なデザインの中でも、最高のものであるとみなせるかもしれない」と書いている[ 9] 。
スペースシャトル固体燃料補助ロケット の先端部分の中心部(空洞になっており、この内部で燃料が燃焼する)の断面は、十一芒星の形をしていた。このようなデザインによって、表面積は大きくなり、打ち上げの初期段階における推力も大きくなった。また、同じ時間に消費する燃料が少なくて済むようになった。さらに、ロケットの速度が音速の壁 を超えたのとほぼ同じタイミングでスターポイントが燃え尽きた後の推力も小さくなった[ 10] 。
また、インスタグラム においては、青の正十一芒星が、認証されたページを区別するために使用されている。
関連項目
脚注
^ Liddell, Henry George; Scott, Robert (1940), A Greek-English Lexicon: γραμμή , Oxford: Clarendon Press , https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus%3Atext%3A1999.04.0057%3Aentry%3Dgrammh%2F
^ O'Daffer, Phares G.; Clemens, Stanley R. (1976), Geometry: an investigative approach , Addison-Wesley (英語版 ) , Exercise 7, p. 62 , ISBN 9780201054200 , https://archive.org/details/geometry00odaf/page/ .
^ Agricola, Ilka ; Friedrich, Thomas (2008), Elementary Geometry , Student mathematical library, 43 , American Mathematical Society , p. 96, ISBN 9780821890677 , https://books.google.com/books?id=Ts20OwbWfPkC&pg=PA96 .
^ Carstensen, Celine; Fine, Benjamin; Rosenberger, Gerhard (2011), Abstract Algebra: Applications to Galois Theory, Algebraic Geometry, and Cryptography , Sigma series in pure mathematics, 11 , De Gruyter (英語版 ) , p. 88, ISBN 9783110250084 , https://books.google.com/books?id=Xo6iSxRfXz0C&pg=PA88 , "On the other hand a regular 11-gon is not constructible."
^ Hilton, Peter ; Pedersen, Jean (1986), “Symmetry in mathematics”, Computers & Mathematics with Applications 12 (1-2): 315–328, doi :10.1016/0898-1221(86)90157-4 , MR 838152
^ Janner, Aloysio (June 2001), “DNA enclosing forms from scaled growth forms of snow crystals”, Crystal Engineering 4 (2–3): 119–129, doi :10.1016/S1463-0184(01)00005-3
^ Adams, Arthur G. (1996), The Hudson River Guidebook , Fordham Univ Press (英語版 ) , p. 66, ISBN 9780823216796 , https://books.google.com/books?id=KIkHuzvZTGYC&pg=PA66 .
^ Bodner, B. Lynn (2009), “The eleven–pointed star polygon design of the Topkapı Scroll ” , Bridges 2009: Mathematics, Music, Art, Architecture, Culture , pp. 147–154, http://archive.bridgesmathart.org/2009/bridges2009-147.pdf .
^ Broug, Eric (2013), Islamic Geometric Design , Thames & Hudson , p. 182
^ Angelo, Joseph A. (2009), Encyclopedia of Space and Astronomy , Infobase Publishing (英語版 ) , p. 511, ISBN 9781438110189 , https://books.google.com/books?id=VUWno1sOwnUC&pg=PA511 .
外部リンク
Weisstein, Eric W. "Polygram" . mathworld.wolfram.com (英語).
非古典的 (2辺以下) 辺の数: 3–10
辺の数: 11–20 辺の数: 21–30 辺の数: 31–40 辺の数: 41–50 辺の数: 51–70 (抜粋) 辺の数: 71–100 (抜粋) 辺の数: 101– (抜粋) 無限 星型多角形 (辺の数: 5–12)多角形のクラス