COTSに基づき開発されたドラゴン宇宙船
商業軌道輸送サービス (しょうぎょうきどうゆそうサービス、英語 : Commercial Orbital Transportation Services, COTS )は、NASA が計画し調整を行なっている国際宇宙ステーション (ISS) への民間企業による輸送サービス計画である。この計画は2006年 1月18日に発表された[ 1] 。
NASAは『少なくとも2015年 までには国際宇宙ステーションへの商業輸送が必要になるだろう』と提案した[ 2] 。
COTSは商業補給サービス (Commercial Resupply Services, CRS) 計画とは区別しなければならない。COTSは補給機の開発に関わるものであり、CRSは実際の運搬を行うサービスになる。COTSはマイルストーンの進捗に応じてNASAからの支払いが行われるもので、将来的な輸送契約を約束するものではない。一方、CRSは義務的な契約となるため、契約者は計画の失敗時には責任を有することになる。関連する計画に商業乗員輸送開発 (Commercial Crew Development, CCDev) があり、こちらは国際宇宙ステーションのクルーの交代サービスを行うための商業有人宇宙機だけの開発を目指す。COTS、CRS、CCDevの3つのプログラムは、NASAのCommercial Crew and Cargo Program Office (C3PO) が管理している。
概要
国際宇宙ステーション (I nternational S pace S tation, ISS) へ物資輸送を行う政府が運用する宇宙船の代わりとなる民間企業による商業軌道輸送サービスの実証のために、NASAはスペースシャトル の1回の飛行よりも廉価な5億ドル の融資を2010年 までに行っている。
これ以前のNASAのプロジェクトとは異なり、提案された宇宙船は主に開発した会社自身によって所有され、費用を確保する。またアメリカ の政府機関と商業カスタマーの双方に貢献するように設計される。NASAはより明確になった時点で、ミッションの契約を結ぶ予定。
宇宙船の高精度な軌道投入技術 と宇宙ステーション へのランデヴー 技術が必要とされるため、このサービスには現在までに実現している通信衛星 等の商業打ち上げサービスより困難が伴う。民間宇宙飛行 企業[ 3] は4つの特定のサービスエリアにおいて競争を行っている。
能力レベルA:船外曝露貨物の運搬および廃棄処分
能力レベルB:与圧貨物の運搬および廃棄処分
能力レベルC:与圧貨物の運搬および回収
能力レベルD:宇宙飛行士の輸送
NASAは2006年 に、ロケットプレーン・キスラー (RpK) と、アライアント・テックシステムズ (ATK) と協定を結んだが、後にRpKとの協定は同社に十分な自己資産がないことから破棄された。NASAは2008年 12月に、別のISSへの貨物輸送契約を入札し、 オービタル・サイエンシズ とスペースX の2社を選んだ。2012年 5月にスペースX社のドラゴン 宇宙船が、翌2013年 9月にはオービタル・サイエンシズ社のシグナス 宇宙船がISSに到達し、計画は達成された。
計画原理
NASAは1990年代半ばに、代替アクセス (Alternate Access) と名付けたISS輸送サービスのための計画を模索した。NASAは他の研究計画を差し置いてまでは代替のアクセス方法の検討に資金は配分しなかったが、この計画はISSが重要な打ち上げ事業の市場機会となることを多くの企業家に納得させることが出来た。
有人宇宙飛行 のための軌道輸送をNASAは何年も維持し続けていたが、NASAは自由市場 の企業の方が政府の官僚制 よりも効率的かつ廉価にこのようなシステムを開発・運用出来るという結論に至った[ 4] 。
当時のNASA長官であったマイケル・D・グリフィン は、手ごろな商業軌道輸送サービスなしには、NASAは宇宙開発の展望 (Vision for Space Exploration)[ 5] の目的を達成するための十分な予算は得られないだろうと述べた。
もしこのようなサービスが2010年の終わりまでに利用できなかった場合、NASAのスペースシャトルの代替機であるオリオン の完成が2014年 まで準備出来ない可能性があるため、NASAはロシア連邦宇宙局 のソユーズ 、プログレス補給船 、ESA の欧州補給機 (ATV)、またはJAXA の宇宙ステーション補給機 (HTV) などの軌道輸送サービスを調達せざるを得なくなる。しかし、NASAはCOTSが運用に入れば、その後ロシアの宇宙貨物輸送サービスを調達する必要はなくなる[ 6] 。
NASAは、ISSに対するCOTSサービスの実現は少なくとも2015年には必要になると予想している。NASAは1年に約6回、毎年10トン の輸送を行うと想定している[ 6] 。NASA長官は、COTSの第1段階が成功した段階で宇宙輸送サービスの調達対象を軌道上の燃料補給ステーションおよび月への輸送任務まで広げられる可能性を示した[ 7] 。
歴史
第1段階
2006年5月、NASAは更なる評価のために6社の提案を準決定案として選択した[ 8] 。
2006年8月18日には、NASAの探査システム計画局 (Exploration Systems Mission Directorate, ESMD) がスペースX社 とロケットプレーン・キスラー (Rocketplane Kistler, RpK) の2社がCOTS計画のフェーズIとして選ばれた事を発表した[ 9] 。
2006年11月8日、RpKとアライアント・テックシステムズ (Alliant Techsystems, ATK) は、ATKがK-1 宇宙船の主契約社になると発表した[ 10] 。
NASAはRpKが2007年 7月31日の期限までに十分な民間基金を準備することが出来なかったことに対して警告し、2007年9月に同社とのCOTS協定を打ち切り[ 11] [ 12] 、余ったCOTS予算から1億7,500万ドルをRpK以外の別の企業に与えることにした。
第2段階
2007年 6月18日には、NASAは払い戻し不要な宇宙計画協定 (Space Act Agreements) を別の4つの会社と契約した[ 13] これらの協定は資金援助の項目を全く含んでいないが、NASAは企業が提案した宇宙船の開発を支援するために情報の共有を行うことに同意した。
2007年10月22日、NASAは第1段階で使わなくなった1億7,500万ドルの予算に対する新たな提案を求めた[ 14] 基金の2007年11月の締め切りまでにいくつかの新たな企業(スペースハブ社 、t/space社 、アンドリュース・スペース社 、プラネットスペース社 、SpaceDev社 ) が提案に応じた[ 15] 。
2008年 1月、産業界の消息筋は競争企業が、スペースハブ、アンドリュース・スペース、プラネットスペースとオービタル・サイエンシズ4つに絞り込まれたことを明らかにすると共に、発表は2月7日に行われるとした
[ 16] 。いくつかの情報筋は、アンドリュースではなくボーイング が残っていることを示唆した[ 17] 。
2008年2月19日、第2段階の選定ではオービタル・サイエンシズ・コーポレーション のシグナス が選ばれた[ 18] 。
契約の落札結果
ロケットプレーン・キスラー - 当初、2億700万ドルで契約を受注、2007年10月にNASAによって契約が打ち切られるまでに受け取った金額は3,210万ドル。
スペースX - 2億7,800万ドルで契約、追加資金を競争中。
オービタル・サイエンシズ - 2008年2月の第二ラウンドの入札の結果、1億7,000万ドルで契約。
競争相手
2006年3月には、20社以上の会社組織がCOTS提案を公的に発表した[ 19] 。NASAは2007年 11月21日までに少なくとも7つの企業から新しいCOTS提案を受け付けた[ 20] 。
達成
2010年 6月、スペースX 社はファルコン9 ロケットの初打ち上げに成功。同年12月にCOTSに基づく1回目のデモフライトを実施し、ドラゴン 宇宙船は地球を2周した後大気圏再突入 を果たし、民間初となる地球周回軌道 からの帰還に成功した。次いで2012年 5月には2度目のデモフライトを行い、民間初となるISSへのドッキングにも成功、COTSの目標を達成した。同年10月からはCRSに基づく補給ミッションを開始している。
オービタル・サイエンシズ 社も2013年 4月にアンタレス ロケットの初打ち上げに成功。同年9月にはCOTSに基づくデモフライトを実施し、シグナス 宇宙船によるISSへの初ドッキングに成功。2006年 の計画開始から7年を経て、2社いずれもがCOTSによる宇宙船開発を達成した。
脚注
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^ COTS Vendors (2006年9月29日時点のアーカイブ )、ジョンソン宇宙センター 、xls文書
^ “X Prize Comments by Mike Griffin ”. NASA (2006年10月20日). 2009年8月24日時点のオリジナル よりアーカイブ。2007年6月6日 閲覧。
^ “NASA - Exploration Home ”. NASA. 2008年8月8日 閲覧。
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^ "Commercial Space Development – What’s the Next?" . NASA, 2007年11月15日
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Belfiore, Michael (2006年5月9日). “NASA makes first round of cuts for COTS ”. Dispatches from the Final Frontier . 2006年6月14日時点のオリジナル よりアーカイブ。2006年11月21日 閲覧。
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"NASA Selects Crew and Cargo Transportation to Orbit Partners" (Press release). NASA. 18 August 2006. 2006年11月21日閲覧 。
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関連項目
外部リンク
日本語
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