宮城県沖地震(みやぎけんおきじしん)は、2021年(令和3年)3月20日18時9分頃、宮城県沖(牡鹿半島の北東20 km付近[6])で発生した地震である[7]。震源の深さは59 km、地震の規模はマグニチュード(Mj)6.9[8][9][10]。宮城県で最大震度5強を観測したほか、岩手県・宮城県・福島県で震度5弱を観測した。気象庁は、10年前の2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震の余震と考えられると発表した[6][11]。太平洋プレートの沈み込みによって発生した地震とみられる[12]。
概要
この地震はプレート境界で発生した地震とみられ、発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型である[11][13][14]。東北地方太平洋沖地震の際にあまり大きくずれ動かなかった、深い領域が動いたとされる[15]。
東京大学地震研究所教授の古村孝志は、「短周期の揺れが強かったのが特徴で、大きな津波にはならなかったが、震源が深いため広い範囲に揺れが出た」「今回の地震はプレート境界を震源とする逆断層型とみられ、周期的に起きる『宮城県沖地震』の震源の一部が壊れた可能性もある。この地域はもともと地震が多い場所でもあり、注意が必要だ」と述べている[16][15]。なお、気象庁は東北地方太平洋沖地震の余震域(宮城県沖を含む)で発生する2021年4月1日以降の地震を「余震」と表現しないことを決定した[17]。
また、名古屋大学地震火山研究センター教授の山岡耕春は、1ヶ月前の福島県沖地震よりも震源が陸に近かったため津波注意報が出されたとの見方を示している[16]。
緊急地震速報
この地震で気象庁は、地震波検知から4.6秒後の18時09分58.9秒に緊急地震速報(警報)を宮城県の全域、岩手県の内陸南部、および福島県の中通りに発表した。その後地震波検知から6.6秒後の18時10分00.9秒に規模が更新され、青森県の三八上北、岩手県の北部と沿岸南部、秋田県の南部、山形県の全域、福島県の浜通りと会津にも緊急地震速報(警報)が発表された[11]。
観測された揺れ
震度
この地震の特徴として、震源が比較的深かったため、揺れが広い範囲で観測されたことが挙げられる[18]。震度4以上の地域は以下の通り[19]。
このほか、震度3〜1の揺れを北海道や東北、関東甲信越、石川県、静岡県、愛知県、岐阜県で観測した[20]。
長周期地震動
宮城県北部では、長周期地震動階級3を観測した[11]。
長周期地震動階級[21]
階級
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地域
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3
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宮城県北部
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2
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岩手県内陸南部 宮城県南部 宮城県中部 山形県村山
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1
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青森県津軽北部 青森県三八上北 岩手県沿岸南部 岩手県内陸北部 秋田県沿岸北部 秋田県沿岸南部 秋田県内陸南部 山形県庄内 山形県最上 山形県置賜 福島県中通り 福島県浜通り 福島県会津 茨城県南部 埼玉県北部 埼玉県南部 千葉県北東部 千葉県北西部 東京都23区 東京都多摩東部 神奈川県東部 神奈川県西部 新潟県中越 新潟県下越 山梨県東部・富士五湖 長野県中部 静岡県東部
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津波
気象庁は、18時11分に宮城県の沿岸に津波注意報を発表した。東日本大震災の被災地に津波注意報が発表されたのは、2016年11月の福島県沖地震以来、4年4か月ぶりであった[22]。しかし明確な津波は観測されず[23]、津波注意報は19時30分に解除された[20][24][25][26]。注意報が発表されたものの津波が観測されなかった理由としては、深い位置にあるプレートの境界が滑ったとみられることなどが挙げられるとしている[27]。
影響・被害
被災者数・件数
県別被害の内訳
県 |
人的被害 |
住家被害
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死者 |
重傷 |
軽傷 |
全壊 |
半壊 |
一部 破損
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岩手県 |
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1 |
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|
1
|
宮城県 |
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1 |
8 |
|
|
1
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福島県 |
|
|
1 |
|
|
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合計 |
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1 |
10 |
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2
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総務省消防庁:2021年3月29日17時現在[28]
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交通機関
仙台空港では、滑走路が一時閉鎖され、従業員や乗客が避難した[29]。日本航空では、目的地を変更した便があった。全日空では2便が欠航し、一部の便で出発時間を遅らせた[30]。
日本道路交通情報センターによると、東北自動車道や常磐自動車道、山形自動車道、三陸自動車道など、各所で高速道路の通行止めが発生した[30][31][32][33]。
震度4を観測した宮城県塩竈市では、住宅街で崖崩れが発生し土砂が道路を塞いだ[34][35]。
東日本旅客鉄道によると、東北新幹線などが運転を見合わせた[6][25][36][37]。また、東北地方の広い範囲の在来線なども運転を見合わせた[29]。
重要施設
消防庁によると、仙台市、多賀城市、宮城郡七ヶ浜町に所在する仙台地区石油コンビナート等特別防災区域内のENEOS仙台製油所において、特定屋外タンク貯蔵所のルーフ上に、内容物である廃油がおよそ3リットル溢流していることが確認された。その後応急処置が行われたとしている[28]。
宮城県の女川原子力発電所、福島県の福島第一原子力発電所と福島第二原子力発電所、茨城県那珂郡東海村の東海第二発電所、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場に異常はなかった[25][38]。
ライフライン
宮城県栗原市で約200戸が停電した[39][40]。
建物など
宮城県東松島市では、病院のエレベーターが停止した[41]。
他の地震との関連
同年5月1日10時27分頃にも、宮城県沖を震源とするマグニチュード(Mj)6.8の地震が発生し、宮城県で最大震度5強を観測した。津波注意報などは発令されなかった。気象庁は本地震との関連について、本地震の震源の位置から約40 km離れていることから関連は不明としている[42]。
一方で東京大学地震研究所教授の古村孝志は、本地震の余震と見ることもできると分析している[43]。
脚注
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1885年 - 1899年 |
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1885年 - 1889年 | |
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1890年 - 1899年 | |
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1900年 - 1949年 |
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1900年 - 1909年 | |
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1910年 - 1919年 |
- 喜界島(1911年、M8.0)
- 日高沖(1913年、M7.0)
- 桜島(1914年、M7.1)
- 秋田仙北(1914年、M7.1)
- 石垣島北西沖(1915年、M7.4)
- 十勝沖(1915年、M7.0)
- 宮城県沖(1915年、M7.5)
- 明石海峡(1916年、M6.1)
- 静岡(1917年、M6.3)
- 択捉島沖(1918年、M8.0)
- 大町(1918年、M6.1+M6.5))
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1920年 - 1929年 | |
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1930年 - 1939年 | |
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1940年 - 1949年 | |
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1950年 - 1999年 |
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1950年 - 1959年 | |
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1960年 - 1969年 | |
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1970年 - 1979年 | |
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1980年 - 1989年 | |
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1990年 - 1999年 | |
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2000年 - |
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2000年 - 2009年 | |
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2010年 - 2019年 | |
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2020年 - | |
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1月 | |
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2月 | |
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3月 | |
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4月 | |
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5月 | |
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7月 | |
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8月 | |
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9月 | |
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10月 | |
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11月 | |
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地震の発生日時はUTC |