廣瀬 陽子(ひろせ ようこ、1972年 - )は、日本の政治学者(国際政治学・比較政治学)。専門はコーカサスを中心とした旧ソビエト連邦継承国の地域研究、「未承認国家」や地域紛争の研究。慶應義塾大学総合政策学部、同大学院政策・メディア研究科教授。ほか同大学湘南藤沢メディアセンター・所長(2019〜2023年)[1]、同大学KGRI(Keio University Global Research Institute)副所長(2022年〜)。
2006年慶応義塾大学より博士(政策・メディア)の学位を取得。学位請求論文は「旧ソ連地域の平和構築と政治発展:アゼルバイジャンを事例として」[2]。
慶應義塾大学総合政策学部講師、東京外国語大学大学院地域文化研究科准教授、静岡県立大学国際関係学部准教授、慶應義塾大学総合政策学部准教授を経て現在に至る。2018年には国家安全保障委員会顧問に就任。
人物
東京都渋谷区出身・東京在住。既婚、一児の母。原宿で育ち、大学生時代にクイズ番組のカルトQに出場。『渋谷』をテーマにしたクイズで50点を採り、5人中4位であった。血液型はA型。
学歴
職歴
- 2001年4月~2002年3月、日本学術振興会特別研究員 (PD)
- 2002年4月~2005年3月、慶應義塾大学総合政策学部専任講師(任期付き)
- 2005年4月~2007年3月、慶應義塾大学総合政策学部非常勤講師、東京外国語大学大学院地域文化研究科講師。
- 2007年4月~2008年3月、東京外国語大学大学院地域文化研究科准教授
- 2008年4月~2010年3月、静岡県立大学国際関係学部准教授
- 2008年4月~2009年3月、北海道大学スラブ研究センター客員准教授
- 2010年4月、慶應義塾大学総合政策学部准教授
- 2016年4月 慶應義塾大学総合政策学部教授
- 2018年7月-2020年3月 国家安全保障局顧問
- 2021年〜 日本国際問題研究所客員研究員
- 2021年〜 日本国際フォーラム上席研究員
- 2022年〜 公益財団法人 中曽根康弘世界平和研究所上席研究員
- 2024年〜 グローバル・フォーラム有識者世話人
受賞
- 2009年 第21回アジア・太平洋賞特別賞(『コーカサス――国際関係の十字路』集英社<集英社新書>、2008年)[4][5]。
- 2023年度 義塾賞(未承認国家、ハイブリッド戦争、狭間の政治学などのキー概念で旧ソ連地域研究を先導し、戦争分析や政策立案にも大きく貢献)[慶應義塾大学、2023年11月10日]。
著書
単著
共著
編著
共編著
論文
雑誌論文
- 「ベトナム戦争とソ連――パリ和平会談までの和平工作を中心に」『本郷法政紀要』6号(1997年)
- 「GUUAMの結成とその展望――構成各国の諸問題とロシア・ファクター」『ロシア研究』31号(2000年)
- 「アゼルバイジャン現地報告」アジア経済研究所『現代の中東』第29号(2000年)
- 「ナゴルノ・カラバフ紛争のアゼルバイジャン内政に持つ意味――ホジャル事件からの一考察」林忠行・宇山智彦・帯谷知可編『スラブ・ユーラシア世界における国家とエスニシティ』(国立民族学博物館・地域企画交流センター、2002年)
- 「南コーカサス地域の安全保障――「コーカサス4」の試みを中心に」スラブ研究センター研究報告シリーズNo.83『CISの安全保障問題』(2002年)
- 「ナゴルノ・カラバフ紛争の位相――冷戦終結の影響と和平の模索を中心に」『社会科学研究』55巻5・6号(2004年)
- 「アゼルバイジャンの権威主義の成立と変容」『国際政治』138号(2004年)
- 「アゼルバイジャンの世襲政治」『海外事情』53巻5号(2005年)
- 「未承認国家と地域の安定化の課題――ナゴルノ・カラバフ紛争を事例に」『国際法外交雑誌』104巻2号(2005年)
- 「BTCパイプラインがもたらす南コーカサス地域への政治・経済的影響」『国際開発研究フォーラム』31号(2006年)
- "Aspects of Genocide in Azerbaijan", Comparative Genocide Studies, vol. 2, 2005/2006.
- 「アゼルバイジャンから見た『9.11』」『学際』第19号(2006年)
- 「CIS諸国の新動向:大統領交代と国際情勢の影響に着目して」『ロシアNIS調査月報』2008年6月号(2008年)
- “Azerbaijan - a Regional Hub,” Visions of Azerbaijan, Volume 3.2, Spring 2008, pp.4-9
- 「本から時代を読む【大国ロシアと諸地域:地政学から見る国際政治】」朝日新聞社『論座』(2008年8月号)
- 「ロシア・グルジア紛争で緊迫するコーカサス情勢」『ロシアNIS経済速報』2008年9月5日、NO.1439、1-11頁。
- 「「凍結された紛争」はなぜ熱戦化したのか:グルジア紛争の本質を探る」『時事トップ・コンフィデンシャル』2008年10月3日号、2-7頁。
- 「グルジア紛争をどう捉えるか―旧ソ連地域における未承認国家の問題」『外交フォーラム』2009年1月号 (No.246)、8-14頁。
- 「コーカサス事情―「高貴な野蛮人」と呼ばれる人々」集英社『すばる』2009年2月号、248-253頁。
- 「コーカサスの未承認国家問題:グルジア紛争後の背景と紛争後のコーカサスにおける平和構築の動き」社団法人国際情勢研究会『国際情勢 紀要』No.79(2009年2月)
- 「「新冷戦」議論と米ロ関係改善の展望――グルジア紛争にみる両国の対立と国内要因」『国際問題(焦点:オバマ政権の危機対応戦略)』(2009年3月号)
- 「コーカサス地域の視点から捉えるグルジア紛争とその影響」『ロシア・ユーラシア経済(特集:ロシア・グルジア紛争の検証)』(2009年3月号)
- 「旧ソ連地域における紛争の現況と和平の展望」スタジオジブリ『熱風(特集:戦争)』(2009年3月号)
- 「グルジア紛争―その背景とその後の世界―」『学士会会報』2009-III(第876号、2009年5月1日発行)
- 「イランとロシア、コーカサスの国際関係 ―最近の事例から―」『中東研究』第505号(2009/2010 Vol.II)
- 「グルジア紛争後の動向:新たな動きと変わらない現実」社団法人国際情勢研究会『国際情勢 紀要』No.80(2010年2月)
- 「グルジア紛争後のトルコと南コーカサス諸国の関係 ―アルメニアとトルコの和解プロセスを中心に」『中東研究』第510号 (2010/2011 Vol.III)
- 「米露リセットの限界とグルジア問題」『国際情勢紀要』No.81(2011年2月)
- 「グルジア紛争後のグルジアとアゼルバイジャン:未承認国家政策の変化を中心に」『国際情勢紀要』No.82(2012年2月)
- 「旧ソ連諸国が危惧する第二の「色革命」」『地域研究』12巻、1号(2012年)
- 「グルジア議会選挙後の政治展望-新政権の性格と政策の検討を中心に-」『国際情勢紀要』No.83(2013年2月)
- 「シリア問題をめぐるロシアの戦略―地政学的思惑と限界」『中東研究』第516号 (2012 Vol.III)
- “The Need for Standard Policies on State Recognition: The Case of the Russia-Georgia War, Georgia, and Azerbaijan From 2008 to Early 2012,”International Relations and Diplomacy, January 2014, Vol. 2, No. 1, pp.1-15 [総15 頁] (ISSN 2328-2134)
- 「【時の問題】ロシアによるクリミア編入:ロシアの論理と国際法」『法学教室』(2014年7月号、No.408)
- "Analyzing the Upsurge of Violence and Mediation in the Nagorno-Karabakh Conflict" Stability: International Journal of Security and Development 3(1):23、pp.1-18,2014 (Grazvydas Jasutisと共著)
- 「ロシアのハイブリッド戦争に関する一考察」国際情勢研究所紀要『国際情勢』第85号、2015年3月。
- "Japan-Russia Relations: Toward a Peace Treaty and Beyond”, Yuki Tatsumi ed., Japan’s Global Diplomacy: Views from Next Generation, Washington DC, Stimson Center, March 2015.
- 「世界地図は一つではない:暫定国境と未承認国家」『kotoba』第21号(季刊誌・2015年秋号)、90-93頁。
- “Unrecognized States in the Former USSR and Kosovo: A Focus on Standing Armies,” Open Journal of Political Science (Vol.6 No.1, 2016), pp.67-82.
- 「北極圏をめぐる近年のロシアの動き:中国の動向に注目して」国際情勢研究所紀要『国際情勢』第86号、2016年3月。
- “The Complexity of Nationalism in Azerbaijan,” International Journal of Social Science Studies, Vol. 4, No. 5, May 2016, pp.136-149.
単行本所収論文
- 「ナゴルノ・カラバフ紛争の政治的考察――紛争激化の要因と民族共存の展望」日本比較政治学会編『民族共存の条件』(早稲田大学出版部、2001年)
- 「テロと紛争」細野助博編『政策学入門・ポリシースクールの挑戦』(東洋経済新報社、2003年)
- 「ロシアの対コーカサス外交――テロと紛争の狭間で揺らぐ国際関係」松井弘明編『9.11以降の国際情勢の新展開とロシア外交』(日本国際問題研究所、2003年)
- 「テロ対策とグローバルガバナンス」岩崎正洋編『政策とガバナンス』(東海大学出版会、2003年)ISBN 978-4-486-01612-0
- 「紛争から民族共存へ――新しい国家像を求めて」香川敏幸・小島朋之編『総合政策学の最先端(4)新世代研究者による挑戦』(慶應義塾大学出版会、2003年)
- 「CIS内サブ・リージョナル・グループの動向――GUUAMの盛衰を事例に」田畑伸一郎・末澤恵美編『CIS――旧ソ連空間の再構成』(国際書院、2004年)
- "Visions for Mountainous Karabakh: From the Azerbaijanis and the Armenians", International Visions ed., The Armenia-Azerbaijan Conflict over Karabakh from History to Future Peace Prospects, (Azerbaijan: Visions of Azerbaijan, 2007).
- 「ナゴルノ・カラバフ紛争をめぐる平和構築の課題」城山英明・石田勇治・遠藤乾編『紛争現場からの平和構築――国際刑事司法の役割と課題』(東信堂, 2007年)
- 「南コーカサス三国とロシア」田畑伸一郎編『石油・ガスとロシア経済』(北海道大学出版会、2008年)
- 「アゼルバイジャンにおけるジェノサイドの負の連鎖」黒木英充編『「対テロ戦争」の時代の平和構築――過去からの視点、未来への展望』(東進堂、2008年)
- 「コーカサスをめぐる国際政治――求められるバランス外交」前田弘毅編『多様性と可能性のコーカサス――民族紛争を超えて』(北海道大学出版会、2009年)
- 「「超大国」ソ連から「資源大国」ロシアへ」『マップ・マガジン①情報世界地図―大転換期を読み解く』(小学館クリエイティブ、2009年)
- 「ロシア等との関係」社団法人中国研究所編『中国年鑑 2009』(毎日新聞出版、2009年)ISBN 978-4-620-90689-8
- 「アゼルバイジャン ジェノサイドの20世紀」石田勇治・武内進一編『ジェノサイドと現代世界』(勉誠出版, 2011年)
- 「EUとコーカサス・中央アジア」羽場久美子・溝端佐登史編著『ロシア・拡大EU』(ミネルヴァ書房、2011年)
- 「ロシアから見た南コーカサス:ザカフカスから南コーカサスへ」下斗米伸夫・島田博編『現代ロシアを知るための60章【第二版】』(明石書店、2012年)
- 「南コーカサスの地域紛争」帯谷知可・北川誠一・相馬秀廣編『朝倉世界地理講座-大地と人間の物語-「中央アジア」』(朝倉書店、2012年)
- 「南コーカサスの都市」(前田弘毅、吉村貴之と共著)、帯谷知可・北川誠一・相馬秀廣編『朝倉世界地理講座-大地と人間の物語-「中央アジア」』(朝倉書店、2012年)
解説
- 映画解説『チェチェンへ:アレクサンドラの旅』のパンフレット(パンドラ+太秦、2008年)
- 「解説」オスネ・セイエルスタッド(青木玲訳)『チェチェン:廃墟に生きる戦争孤児たち 』(白水社、2009年)
新聞論説
- 「私の視点『グルジア紛争 「台湾化」の危機、日本は防げ』」『朝日新聞』(2008年9月1日号)
- 「グルジア後は「新冷戦」か:多極的世界に再来ありえず」『日刊工業新聞』【卓見異見】(2008年10月27日号)
- 「金融危機は世界の多極化促すか:米国凋落、G20 協調の時代」『日刊工業新聞』【卓見異見】(2008年12月1日号)
- 「コーカサスの不安定が続く:ロシアのグルジア攻撃にからむ複雑な地域・国際情勢」『図書新聞』2900号(2009年1月1日号)
- 「最新のロシア情勢:国民意識、経済危機に悪循環」『日刊工業新聞』【卓見異見】(2009年1月5日号)
- 「オバマ政権を待ち受ける旧ソ連社会:多極的世界へ対露政策に期待」『日刊工業新聞』【卓見異見】(2009年2月2日号)
- 「情報社会に求められる市民意識:あふれる報道、自ら精査を」『日刊工業新聞』【卓見異見】(2009年3月9日号)
- 2014年10月より『金融ファクシミリ新聞』にて、毎月第4金曜日に【ウオッチ 旧ソ連諸国】を連載(2022年9月より休載)
- 2020年10月より『信濃毎日新聞』の「多思彩々」の連載担当(3ヶ月に1回)
- 2022年7月より『山形新聞』の「直言」の連載担当(ほぼ毎月)
- 「グローバルサウス 動向注目」『日本経済新聞』【経済教室】(2023年9月1日)
- その他、数多くの新聞にコメントやインタビューが掲載されている
WEB連載
雑誌連載
- 月間『東亜』の「コンパス」執筆(1年に4回)を2016年1月号より担当。
インタビュー記事
※『αSYNODOS』vol.162+163(2014.12.20)「特集:いま考える国家とはなにか」に転載。
- 「対米、対欧の陣取り合戦にプーチン帝国の勝算はあるのか?」『第三次世界大戦は本当に起きるのか?』総合図書、2014年、118-135頁。
- 「「未承認国家」をめぐる攻防」『図書新聞』(年末回顧号・3187号)、2014年12月20日、1・2面。
- 「なぜ「未承認国家」は生まれるのか 不安定化する世界を読み解く『未承認国家と覇権なき世界』 廣瀬陽子氏インタビュー」Wedge Infinity (本多カツヒロ著)、2015年02月13日【http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4710】
脚注
- ^ 慶応義塾研究者情報データベース2023年12月26日閲覧。
- ^ 国会図書館博士論文書誌データベース
- ^ webインタビュー「ゴルバチョフ氏に出会い旧ソ連地域研究の道へ」2022年9月2023年12月26日閲覧。
- ^ 「アジア・太平洋賞:日本プレスセンターで表彰式――東京」『アジア・太平洋賞:日本プレスセンターで表彰式 東京 - 毎日jp(毎日新聞)』毎日新聞社、2009年11月17日。
- ^ 「アジア・太平洋賞:東京・日本プレスセンターで表彰式」『アジア・太平洋賞:東京・日本プレスセンターで表彰式 - 毎日jp(毎日新聞)』毎日新聞社、2009年11月18日。
関連項目
外部リンク