競輪場(けいりんじょう)とは、競輪を開催するための施設である。
概要
2022年11月時点で、全国各地に計43か所の競輪場がある。
同一都道府県内に複数あるケースもあり、最大は神奈川県の3か所(過去最大は神奈川県、大阪府と兵庫県の4か所。但し大阪府は現在1か所のみ、兵庫県は全廃された)。また、ナイター競走およびミッドナイト競輪開催のために照明設備が設置されている場もある。
函館・青森・弥彦・富山・福井の各競輪場は、例年冬季は降雪の関係で開催を休止(休止期間は競輪場ごとに異なる)し、場外発売のみを行う(代わりに、春から秋にかけてその休止分の代替開催を行う)。
一般入場料は、計3パターン(2021年10月時点)。有料では50円ないし100円(自場開催時。場外発売時は無料になる場もある)、2000円(千葉)。そして無料の競輪場(函館、いわき平、弥彦、前橋、取手、伊東温泉、松阪、奈良、玉野、高松、高知、佐世保、別府、名古屋など)もある。ただ、一般入場料が無料・有料いずれの競輪場でも、特別観覧席(特観席)は別途有料となっている。
1997年4月時点では、弥彦、花月園、名古屋、別府、熊本の5場がホームページを既に開設していた[1]。
2000年には場内での酒類販売の試験導入(花月園と平塚)を実施し[2][3]、その後いくつかの競輪場で解禁された[4][5]。
他の自転車競技場よりも交通アクセスが良く観客席や照明などの設備が整っていることから、競輪選手でないロードレースチームによるトラックレースの興行リーグ「バンクリーグ」にも利用されており、2020年の開幕年は名古屋、宇都宮で、2021年は別府、名古屋、宇都宮で開催された[6]。
構造
ほぼ全ての競輪場が屋外だが、前橋競輪場(日本トーターグリーンドーム前橋)と小倉競輪場(北九州メディアドーム)、TIPSTAR DOME CHIBAの3場は屋内型となっている。
全てのバンクは左回りである。バンクの周長は、250m(TIPSTAR DOME CHIBAのみ[7])、333.3m、335m(前橋のみ。開設当初は333m)、400m、500m(宇都宮、大宮、高知のみ)の計5種類がある。この中で最も多いのは400mで、中には西武園など開設当初は500mであったがのち施設改修に併せて400mに変更した競輪場もある(改修中の熊本も再開後は400mとなる)。また、TIPSTAR DOME CHIBAは国際自転車競技連合規格である伊豆ベロドローム、JKA250(日本競輪選手養成所内)同様の木製バンクである(2021年5月竣工)[8]。
バンクの緩和曲線は、マッコーネル(マッコンネル)とレムニスケートの2種類。クロソイドは最後まで残っていた和歌山競輪場が1999年にマッコーネル曲線に改修されて消滅した[9]。同じ周長でも競輪場によって緩和曲線や直線の長さは異なるため、競輪場によっては捲りが決まりやすいなど『クセ』が出ることがある。
観客スタンドや車券売り場などの施設は、他の公営競技と比べいち早く鉄筋コンクリート化が進んだ。これは1950年に発生した鳴尾事件を受けたもので、競輪廃止論が飛び交う中、施設改善が開催継続を認める条件とされたことによる。ただ、それ以降現在まで大掛かりな施設改善がなされていない競輪場も多く、奈良や久留米のように耐震基準を満たさない一部のスタンドを立ち入り禁止としたり、向日町のように大掛かりな改修が必要ながらその予算の確保に悩まされている競輪場もある[10]。2000年代の競輪場の廃止要因は売上減少が第一であったが、それに伴い施設改修資金を確保できないという理由が付随していることも多かった。しかしネット投票の普及やライブ中継番組の浸透によって2013年を底に競輪全体の売上は回復傾向にあり、改修に踏み切る自治体も出てきた。
走路と観客エリアを隔てる外側の仕切りには、金網の他、ポリカーボネートの透明板(西武園競輪場など)があるが、TIPSTAR DOME CHIBAのようにそのような仕切りを設けていない競輪場もある。バンク内に観客エリアがある構造の場合、バンク内側にも柵を用いている競輪場がある(いわき平、小倉)。
選手が入退場する「敢闘門」の位置は、バックストレッチが多数(川崎など)を占めるが、ホームストレッチ(いわき平、小倉など)、バンクの内側(取手、名古屋、岸和田など。バンクの外側から地下通路を通って入退場する)の、3パターンがある[11]。
大型ビジョンが設置されている競輪場もある一方で、未だに文字情報のみの確定板のみ設置されている競輪場や、近年はその確定板も撤去されている競輪場もある(そのような競輪場の場合、着順は場内ビジョンで表示される)。
場内に元選手による初心者ガイダンスコーナーを設置しているところもある。
選手宿舎は敷地内に併設されていることが殆どだが、スペースの都合などで敷地外に別途宿舎を設けている競輪場もあり(2015年現在は川崎、弥彦、前橋、千葉、小田原、名古屋、福井、岸和田、熊本の9場)、その場合選手は専用バスで宿舎と競輪場の間を往来する[12]。なお、一部の競輪場では競輪開催期間外に限り選手宿舎を団体客に一般開放し、宿泊施設として活用しているケースがあり(小田原、四日市、松阪、松山など)、団体での宿泊等の利用が可能である。玉野では、場内に全国初となる選手宿舎と一体となったホテルが開業した[13]。
2023年より、「報道関係者と選手・自転車との接触トラブルを避けるため」という理由で検車場内での取材・撮影を禁止する「ミックスゾーン」の制度ができた(そのため、現在は選手の写真はガッツポーズだけ、など味気ないものになっている)[14]。
2024年6月時点で、地震による施設損壊により熊本にてバンク周長の縮小も含めた全面的な改修工事が行われているほか、多くの競輪場でスタンドを中心に老朽化が進行していることから、本場開催を長期間休止した上で施設改善を行う競輪場が出てきている。同月時点で、防府、広島、佐世保にて、スタンド建て替えとともに大規模な再整備が行われている。このほか、向日町、久留米においても今後スタンド建て替えなどの大規模改修工事が計画されている。
- 防府では、2022年11月7日以降、2024年11月までの予定でスタンド建て替え工事を実施中。
- 広島では、市民がスポーツやレジャーを楽しめる複合施設に再整備する計画を打ち出しており、2021年度中に競輪場の建て替えとともに事業運営を委託する民間事業者を公募し契約を結ぶ方針を示した[15]。その後2022年1月7日に株式会社チャリ・ロトが民間事業者として選定された[16]。2025年4月再開予定。
- 佐世保では、2022年12月より既存のスタンドを解体のち建て替えし、2024年12月に改修を完了する予定である。計画では、メインスタンドの収容人数は3100人から800人に規模を縮小する一方、競輪場周辺に市民向けの施設を整備する予定である[17]。なお、佐世保では本場開催は休止しておらず工事と並行して行われている。
- 向日町では、2024年9月の開設記念終了後に開催を長期休止した上で、メインスタンド以外は解体し、規模を縮小。バックスタンドなどの跡地には1万人規模のアリーナ(体育館)を建設する計画となっている。
競輪場の一覧
競輪における地区の分類は、かつての日本自転車競技会合併発足以前における各自転車競技会の管轄地域に拠るものであり、一般的な地方区分とは異なることに注意。
「やひこけいりん」「かわさきケイリン」「たちかわ競輪」「函館けいりん」など、ロゴではひらがな表記している競輪場の方が多い。
地区の8区分
現在は全43場がある[18]。太字は同一の都道府県内に複数の競輪場がある都道府県で、数字は同一の都道府県内にある数。()は各地区で競輪場の無い都道府県。東西分けについては、高松宮記念杯競輪においての区分。
一覧
地区 |
番 |
競輪場 |
所在地 |
周長 |
重勝 |
直線 |
開催時間帯 |
★ナイターの愛称、※備考
|
1北日本 |
11 |
函館 |
北海道 |
函館市 |
400 |
K |
51.3 |
|
※[20] |
ナ |
ミ |
★スターライトレース
|
12 |
青森 |
青森 |
青森市 |
400 |
O |
58.9 |
モ |
デ |
ナ |
ミ |
★もりんトワイライトレース 「Jomon Bank」「みちのく競輪」
|
13 |
いわき平 |
福島 |
いわき市 |
400 |
L |
62.7 |
モ |
デ |
ナ |
ミ |
★エキサイティングナイター 「空中バンク」
|
2関東 |
21 |
弥彦 |
新潟 |
西蒲原郡弥彦村 |
400 |
K |
63.1 |
|
デ |
ナ |
ミ |
★伊夜日子(いやひこ)マジェスティックナイター 「Dream Bank」※日本で唯一の村営公営競技場。
|
22 |
前橋 |
群馬 |
前橋市 |
335 |
K |
46.7 |
|
デ |
ナ |
ミ |
★ドームナイトレース ※屋内型。現行競輪では日本最大のカント(36°)。「日本トーターグリーンドーム前橋」
|
24 |
宇都宮 |
栃木 |
宇都宮市 |
500 |
K |
63.3 |
モ |
デ |
ナ |
ミ |
★ RAIZINナイトレース500 「 BANK(雷神バンク)」「風のワンダーランド」
|
23 |
取手 |
茨城 |
取手市 |
400 |
K |
54.8 |
モ |
デ |
|
|
「楽天Kドリームスバンク取手」「砦の森のバンク」 茨城県と取手市が別個に主催を行う
|
26 |
西武園 |
埼玉 |
所沢市 |
400 |
K |
47.6 |
モ |
デ |
ナ |
ミ |
★ブルーウイングナイトレース
|
25 |
大宮 |
埼玉 |
さいたま市大宮区 |
500 |
K |
66.7 |
モ |
デ |
|
|
※日本で最初に完成した競輪場。旧小倉競輪場は大宮の設計をコピーして建造された。「大宮双輪場」「大宮Big Bank」
|
27 |
京王閣 |
東京 |
調布市 |
400 |
K |
51.5 |
|
デ |
ナ |
ミ |
★TOKYOミリオンナイトレース 「東京オーヴァル京王閣」 主催は東京都十一市競輪事業組合
|
28 |
立川 |
東京 |
立川市 |
400 |
K |
58.0 |
モ |
デ |
|
|
|
3南関東 |
- |
千葉 |
千葉 |
千葉市中央区 |
250 |
- |
|
|
デ |
ナ |
|
★※屋内型、木製バンク。独自の250競走「PIST6」を開催[8]。車券購入はインターネットサイト「PIST6公式投票サービス」「TIPSTAR」のみで、電話投票の取り扱いはない。「TIPSTAR DOME CHIBA」
|
31 |
松戸 |
千葉 |
松戸市 |
333 |
L |
38.2 |
モ |
デ |
ナ |
ミ |
★ファンタジーナイトレース 「燦燦バンク」
|
34 |
川崎 |
神奈川 |
川崎市川崎区 |
400 |
L |
58.0 |
|
デ |
ナ |
ミ |
★アーバンナイトレース 「URBAN BANK」
|
35 |
平塚 |
神奈川 |
平塚市 |
400 |
L |
54.2 |
モ |
デ |
ナ |
ミ |
★湘南ミルキーウェイレース 「ABEMA湘南バンク」
|
36 |
小田原 |
神奈川 |
小田原市 |
333 |
L |
36.1 |
モ |
デ |
|
|
「戦国バンク」
|
37 |
伊東温泉 |
静岡 |
伊東市 |
333 |
L |
46.6 |
モ |
デ |
ナ |
ミ |
★ミカリンナイトレース
|
38 |
静岡 |
静岡 |
静岡市駿河区 |
400 |
L |
56.4 |
|
デ |
ナ |
ミ |
★富士山バンクナイトレース 「富士山バンク[21]」
|
4中部 |
46 |
富山 |
富山 |
富山市 |
333 |
K |
43.0 |
|
デ |
|
|
「ドリームスタジアムとやま」
|
45 |
豊橋 |
愛知 |
豊橋市 |
400 |
L |
60.3 |
モ |
デ |
ナ |
ミ |
★ええじゃないか豊橋ナイトレース
|
42 |
名古屋 |
愛知 |
名古屋市中村区 |
400 |
K |
58.8 |
モ |
デ |
ナ |
ミ |
★どえりゃー金シャチナイター 主催は愛知県と名古屋市から成る名古屋競輪組合
|
43 |
岐阜 |
岐阜 |
岐阜市 |
400 |
K |
59.3 |
|
デ |
ナ[22] |
ミ[22] |
|
44 |
大垣 |
岐阜 |
大垣市 |
400 |
K |
56.0 |
|
デ |
|
ミ |
|
48 |
四日市 |
三重 |
四日市市 |
400 |
K |
62.4 |
|
[23] |
ナ |
ミ |
★ベイサイドナイトレース
|
47 |
松阪 |
三重 |
松阪市 |
400 |
- |
61.5 |
モ |
デ |
ナ |
ミ |
★ぎゅうっと松阪ナイトレース
|
5近畿 |
51 |
福井 |
福井 |
福井市 |
400 |
- |
52.8 |
モ |
デ |
|
|
「不死鳥バンク」
|
54 |
京都向日町 |
京都 |
向日市 |
400 |
- |
47.3 |
|
デ |
|
ミ |
◆ミッドナイト(ムッチーナイトレース)
|
53 |
奈良 |
奈良 |
奈良市 |
333 |
L |
38.0 |
|
※ |
ナ |
ミ |
★まほろばナイトレース
|
56 |
岸和田 |
大阪 |
岸和田市 |
400 |
K |
56.7 |
[24] |
デ |
|
ミ |
「ブッキースタジアム岸和田[25]」「浪切バンク」
|
55 |
和歌山 |
和歌山 |
和歌山市 |
400 |
K |
59.9 |
モ |
デ |
|
|
「わかやまオレンジバンク」
|
6中国 |
61 |
玉野 |
岡山 |
玉野市 |
400 |
L |
47.9 |
|
デ |
ナ |
ミ |
★シャイニングナイトレース 「シーサイドバンク」「チャリロトバンク玉野」
|
62 |
広島 |
広島 |
広島市南区 |
400 |
L |
- |
休催中 |
「チャリロトバンクひろしま[26]」→「アーバンサイクルパークス広島」
|
63 |
防府 |
山口 |
防府市 |
333 |
O |
42.5 |
休催中 |
|
7四国 |
71 |
高松 |
香川 |
高松市 |
400 |
L |
54.8 |
モ |
デ |
|
ミ |
|
73 |
小松島 |
徳島 |
小松島市 |
400 |
L |
55.5 |
モ |
デ |
|
ミ |
|
75 |
松山 |
愛媛 |
松山市 |
400 |
L |
58.6 |
モ |
※ |
ナ |
ミ |
★瀬戸風ドリームナイトレース 「瀬戸風バンク」「であいフィールド」
|
74 |
高知 |
高知 |
高知市 |
500 |
L |
52.0 |
モ |
デ |
ナ |
ミ |
★よさこいナイター500 ※第2種公認陸上競技場併設。「りょうまスタジアム」
|
8九州 |
81 |
小倉 |
福岡 |
北九州市小倉北区 |
400 |
L |
56.9 |
|
|
ナ |
ミ |
★スペースナイトレース ※屋内型。競輪発祥の地。「北九州メディアドーム」
|
83 |
久留米 |
福岡 |
久留米市 |
400 |
K |
50.7 |
|
デ |
ナ |
ミ |
★エンジョイスピードパークナイトレース
|
84 |
武雄 |
佐賀 |
武雄市 |
400 |
O |
64.4 |
モ |
デ |
ナ |
ミ |
★タケマルナイトレース 「オッズパーク武雄」
|
85 |
佐世保 |
長崎 |
佐世保市 |
400 |
O |
40.2 |
モ |
デ |
ナ |
ミ |
★99(ナインティナイン)サンセットナイトレース
|
86 |
別府 |
大分 |
別府市 |
400 |
L |
59.9 |
モ |
デ |
ナ |
ミ |
★べっぷ湧くわくナイトレース
|
87 |
熊本 |
熊本 |
熊本市中央区 |
400 |
L |
- |
モ |
デ |
|
ミ[27] |
改修工事中。
|
廃止・休止になった競輪場
- 左から2番目の二桁数字=当時の場番号(電話投票番号)。なお、休=休止扱いの場の中には、番号をキープしているものも見られる。
脚注
関連項目
外部リンク
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競輪場 |
現存 |
北日本 | |
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関東 | |
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南関東 | |
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中部 | |
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近畿 | |
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中国 | |
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四国 | |
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九州 | |
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※=改修工事のため長期本場開催休止中 <再開予定>熊本 – 2024年7月/防府 – 2024年11月/広島 – 2025年4月 |
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廃止 休止 | |
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自転車 競技場 |
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