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世界一の高さを誇る超高層ビルブルジュ・ハリファ (UAE)
超高層建築物 (ちょうこうそうけんちくぶつ)または超高層ビル (ちょうこうそうビル、英語 : skyscraper )は、高層建築物(高層ビル) の中でも特に高い建築物 である。
どの程度の高さ以上の建築物を超高層ビルと呼ぶかについては、統一された明確な基準はない(#定義 参照)。
定義
日本の法律では「超高層」という用語は用いられていないが、建築基準法 第20条第1号では高さが60mを超える建築物に対してそれ以下のものと異なる構造の基準を設定しており、高さ60m以上の建築物が超高層建築と呼ばれることがある[ 1] [ 2] [ 3] 。また、超高層ビル群があることで有名な新宿区は「新宿区景観形成ガイドライン」[ 4] を定めているが、そのうちの「超高層ビルの景観形成ガイドライン」の対象も「高さ60mを超える建築物」とされている[ 5] 。さらに航空法 第51条においても60m以上の高さの物件に航空障害灯 の設置を義務付けている。
日本の場合、例として『広辞苑 』では、「15階以上、または、100m 以上の高さの建築物を超高層建築と呼ぶことが多い」としている[ 6] 。階高を3 - 4mと仮定すると15階は45 - 60mにあたり、15階以上と100m以上とではその高さに大きな開きがあることになる。他の書籍の例を挙げると
書籍
出版
定義
マイペディア
平凡社
100m以上
建築大事典
彰国社
100m以上または15階程度以上
建築学用語辞典
日本建築学会
15階程度以上
と、100m ・15階程度 と書籍によって値は異なっている。
超高層ビル尖塔高順の比較
日本初の超高層ビルとされるのは霞が関ビルディング (36階、地上147m)である[ 7] 。それ以前に最も高い建築物であったホテルニューオータニ (17階、73m)は、超高層ビルとは呼ばれていなかった。
イギリス のskyscrapernews.comは、高さ150m(500ft )以上のビルを超高層ビル(skyscraper )と定義している[ 8] 。また、300m以上(〜1,000m以下)の超高層ビル(超高層建築物)を supertall building (supertall tower)、または単に supertall (スーパートール )と呼ぶ場合がある。
高さが1,000mを超えるビルはハイパービルディング (超々高層ビル、超々高層建築物)と呼ばれ、サウジアラビア のジェッダ でジェッダ・タワー が建設中である。167階建て高さ約1,008m(尖塔高)の予定で、完成すれば世界初のハイパービルディングとなるが完成見込みは不明。
概要
ホーム・インシュアランス・ビル (1884年)
エンパイア・ステート・ビルディング
一般には超高層ビル と呼ばれ、摩天楼 (まてんろう、「天を摩するほどの高楼」の意、英語の訳語[ 6] )ともいう。英語 では、skyscraper(スカイスクレイパー 、「空を削るもの」の意)、Tower(タワー 、「塔 」の意)、Spire(スパイア 、「尖塔」の意)などともいう。
ホーム・インシュアランス・ビル は一般的に外面・内面ともに耐火性の金属骨組を用いた最初の高層ビルと認識されている[ 9] 。このビルは1884年に竣工し、1931年に解体された。
エンパイア・ステート・ビルディング は1972年 にワールドトレードセンター のノースタワーが竣工するまでの42年間、世界一の高さを誇るビルとなっていた。
世界で最も高い超高層ビルの座は、50年以上に渡りアメリカ のビルが占めていたが、近年のアジア 諸国の経済力の発展に伴いその座を譲り渡している。
建築の意義
超高層ビルは規模にもよるが、多くの場合巨大な需要能力を有するため、再開発 事業などを計画する際に、区画整理後の敷地に建設される建物として超高層建築物が採用されることが多い。
エドワード・グレーザー教授などは超高層ビルにより経済的なイノベーションと人々の相互作用が可能になると主張している[ 10] 。
超高層ビルの建てられる場合として、不動産 価格が高い土地に事業者が投資 しようとする際に、投資資金の回収のため多層の建築を設けて収益を得ようとする事から結果的に超高層ビルになる場合や、限られた土地に大きな収容力を求める場合、土地や都市、国などのランドマーク (シンボル )として建設する場合などが挙げられる。また超高層ビルは周囲からも抜き出た高さとなる事も多く、周辺地域への影響も大きい。そこで、高い意匠 性を持つ超高層ビルは、その地域や、ビル建築主、ビルを使用するテナント のイメージを向上させることもあるが、その建築が周辺地域から受け入れられない場合には、計画段階時に是正を求められたり、計画の修正や建築差止めを求めて訴訟 が提起されることもある。
歴史的な地域(京都 、奈良 、東京 浅草寺 周辺など)や、既存住宅から突出した高さのタワーマンション計画に対して「周辺に利便をもたらさない」とする訴訟・反対運動の事例が特に日本において多い[ 11] 。また超高層ビルの用地として初期のモダニズム建築 を解体して再開発が行われることが多く、古典的モダニズムの賛同者から反発が寄せられるようになった[ 12] 。
省エネ対策の例としてベトナム 政府は2017年に高層ビルのエネルギー効率向上計画を承認し、関連する法整備などを検討している[ 13] 。
耐震構造
地震 や風圧対策(耐震構造 )は、従来の建築物では「剛構造 」という地震や風圧に耐える構造(人が走行中の列車内で脚を踏ん張って揺れに耐えることに例えられる)が求められてきたが、超高層ビルでは、地震の揺れや風圧にある程度建物を任せる「柔構造 」の建築である[ 14] 。
さらに、昨今建設される超高層ビルでは、基礎部分に油圧装置(油圧ダンパー)を取り付ける、柱の中に低降伏点鋼を挟む(制震柱)、建物の上部にダンパー と呼ばれる錘(おもり) を取りつけたりして揺れを軽減する、などの方法(いずれも制震構造 )を採用している[ 15] 。
また、基礎と上部建築物を切り離し、構造物の間に積層ゴムやベアリングを媒介して、横揺れそのものを逃す方法(免震構造 )も開発されている。免震構造は古い構造基準で建設された老朽化しているビルにも有効であり、免震レトロフィット(改良、後付)工法もあるほどである。ただし、この工法は基本的に柱を切断しジャッキアップしたうえで積層ゴムやベアリングを取り付けるものなので、1階部分が空洞(駐車場や駐輪場など)であり、かつ十分な敷地が確保できる場所で重量の負担が一定のレベルを超えないことが条件とされている。
長周期地震動との共振
一般に、ビルが高ければ高いほど、そのビルの固有振動 の周期 が長くなる[ 16] 。そのため、超高層ビルでは、低層の建物ではあまり問題とされない、海溝型巨大地震などによる長周期地震動 との共振の可能性が指摘されている[ 16] 。
超高層建築物における長周期地震動の実例
2007年 7月16日 の新潟県中越沖地震 では、六本木ヒルズ の高層階用エレベーターが長周期地震動で緊急停止した[ 16] 。
2011年 3月11日 に発生した東北地方太平洋沖地震 によって東日本一帯に長周期地震動 が発生した。この際に東京23区では長周期地震動階級4を観測し、新宿区 西新宿 の超高層ビル群が長周期地震動によって揺れ動く様子が撮影された[ 17] [ 18] [ 19] 。
東北地方太平洋沖地震 における長周期地震動階級(事後分析による)
解体方法
超高層ビルの解体 には、一般的な建造物に用いられるような、上部から少しずつ取壊していく方法(圧砕工法)では、高所での作業を強いられる為に困難を伴う。そのため、欧米などでは発破解体 が主に用いられるが、日本では、火薬の取り扱いや関連する法規制の問題、建造物が密集しているなどの理由により、建設を逆再生させるように最上段から順に解体していく方法や[ 20] 、ジャッキを利用してだるま落とし のように下から順に解体していく方法[ 21] などが採用されることが多い。赤坂プリンスホテル 、りそな・マルハビル の解体では、大成建設により「テコレップシステム」[ 22] と呼ばれる順々に解体していく方法で行われた。
各国の超高層建築物
北アメリカの超高層建築物
アメリカ合衆国
アメリカ・ニューヨーク 市のマンハッタン 中心部 (2019年)
アメリカ合衆国は世界の超高層ビルの先駆けとなった国で、大都市の多くは超高層ビルが集積している。特にシカゴ やニューヨーク 、ロサンゼルス においては、多数の超高層ビルが密集しているため、地上では日当たりが悪い。
また、現在では、サンフランシスコ 、シアトル 、ミネアポリス 、ヒューストン 、ダラス 、デトロイト 、クリーブランド 、ピッツバーグ 、ボストン 、フィラデルフィア 、シャーロット 、アトランタ 、マイアミ などアメリカ合衆国の主要な各都市で超高層ビルを見ることができる。また中規模以下の都市においても、アイオワ州 デモイン の801グランド (801 Grand )、アラバマ州 モービル のRSAバトル・ハウス・タワー (RSA Battle House Tower )、ニューヨーク州 オールバニ のエラスタス・コーニング・タワー (Erastus Corning Tower ) など、超高層ビルが建てられている都市がいくつかある。
超高層ビル発祥のシカゴでは、1890年代 以降、ニューヨークにビルの高さ争いでは世界一の座を奪われ続けていたが[ 注釈 1] 、アメリカの大手GMS(ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア)チェーン、シアーズ の本部でSOM 設計のモダニズム 建築であるシアーズ・タワー (442.3m、現ウィリス・タワー )が1973年 に完成すると、世界一の座をニューヨークから奪還した。
2013年 には、アメリカ同時多発テロ で倒壊したワールドトレードセンター (528m)の跡地に1 ワールドトレードセンター (541m)が再建され、再びアメリカで最も高いビルとなった。
アジアの超高層建築物
1960年代 までの超高層ビル建設は主にアメリカの独擅場であったが、アジア 地域の経済的発展と共にアジアでも次第に超高層ビルが増えてきた。日本の霞が関ビルディング (147m、東京都 千代田区 )や神戸商工貿易センタービル (107m、兵庫県 神戸市 )、世界貿易センタービル (162.6m、東京都港区 )をはじめ、香港 のジャーディン・ハウス (Jerdine House:怡和大廈、178.5m)、シンガポール のOCBCセンター (華僑銀行 、Overseas Chinese Banking Corp Center:201m)などがその初期のものである。現在は経済発展が著しい中国、韓国、インド、東南アジア諸国、UAEを中心に超高層ビルの建設が進んでいる。
東アジアの超高層建築物
日本
東京 ・西新宿 の高層ビル群
日本では1970年代 から1980年代 にかけて超高層ビル建設が本格的になり、その筆頭となったのは東京都 新宿区の角筈 地区(現:西新宿 )での淀橋浄水場 再開発により建設された超高層ビル群(新宿副都心 )や、大阪府 大阪市北区 の超高層ビル群(梅田 )、竣工当時東アジア で最も高いビルとなった東京都豊島区 東池袋 のサンシャイン60 (240m)などである。
日本で最も高い超高層ビルは、東京都港区の麻布台ヒルズ森JPタワー (325m)である。2027年 度には東京都 千代田区 に高さ385mのTorch Tower が竣工予定となっている。
200m以上の超高層ビル群は、東京特別区 以外に大阪市 (5棟)と名古屋市 (4棟)横浜市(1棟)にも所在しており、これらの都市は日本の超高層ビル群の代表格となっている。
中国
中国・上海の超高層ビル群
中国では、1978年 に始まる中国共産党 の鄧小平 が指揮する改革開放 路線により1980年 に経済特区 が深圳 、珠海 、汕頭 、廈門 (後に海南省 )に設定された。その後1984年 に経済技術開発区 が臨海部の14都市に設定され、この動きに上海 や広州 などの大都市が加わると外国資本の流入から諸都市の著しい発展を見る。そして、中国経済 の発展により、天津 、重慶 、長春 、青島 、大連 、成都 、武漢 、瀋陽 、廈門といった都市でも多く超高層ビルが建設された。
現時点で最も高い超高層ビルは、上海の上海中心 であり、高さ世界第3位である。
2021年 、中国政府は高さ500メートル以上の超高層建築物の建設が一律禁止。さらに2022年には改めて高さ500メートルを超えるビルの新規建設を禁止、250メートルを超えるビルの新規建設を地域によって制限した。政府は超高層建築物の乱立状態を「大欲、欧米への媚び、奇怪が織りなす建築物のカオス」として批判[ 23] しており、今後は競うように建てられてきた超高層建築物の建設にブレーキがかかる見込み。
香港
香港の超高層ビル群
香港 では、イギリス統治期の1970年代 から多数の超高層ビルが建てられていた。2010年に竣工した環球貿易広場 (高さ484m、108階建て)を筆頭に、300mを超える超高層ビルは7棟、200m以上は30棟以上を数え、アジア有数の超高層ビル群を形成している。
台湾
台湾 ・台北市 の高層ビル群
現在台湾で最も高い超高層ビルは、台北市 信義区 に2004年 に竣工した台北101 (Taipei101、旧称:台北国際金融センター:Taipei International Financial Center:台北國際金融大樓)で、高さ509.2m、地上101階建て、設計は李祖原 建築事務所、施工は熊谷組を中心としたJV (共同企業体)である。下層部に2003年 先行開業したショッピングモールを有する。このビルに設置されている東芝エレベータ 製の展望台直通高速エレベーター の速度は三菱電機 製の横浜ランドマークタワーのものを超え、世界で最も速いエレベーター となった(その後、2016年 には上海中心 の三菱電機製のエレベーターが世界最速記録を更新している)。完成時は世界一高いビルだったが、2023年現在は世界11位になっている。
台湾第2位の超高層ビルは、1997年 に完成した高雄市 苓雅区 の高雄85ビル (東帝士85國際廣場:Tuntex 85 Sky Tower、378m)で、台北101と同じ李祖原建築事務所の設計である。台北101が完成するまでは台湾で最も高い建物であった。高雄85ビルの高さは2023年現在世界で79番目である。
韓国
ソウルの超高層ビル群(2021年)
韓国は超高層建築が盛んな国家の一つで、250mを超える超々高層ビルの保有数は、中国アメリカUAEに次ぐ世界第四位である。1985年に63ビル が完成し、日本のサンシャイン60 を抜き当時アジア一の高層ビルとなった。韓国の大手建設企業はUAEとの国家間プロジェクトとしてブルジュハリファを建設するなど、各国で超高層建築の建設を受注しており、建設技術とノウハウを有する。
2000年代以降、海雲台LCTトリプルタワー(412m・400m・333m)やパークワンタワー(333m)、北東アジア貿易タワー(305m)、海雲台斗山ヴィーブ・ザ・ゼニス(300m)、海雲台アイパークツインタワー(292m)、釜山国際金融センター(289m)、ソウル国際金融センター(284m)を筆頭に超高層ビルの建設ラッシュが起こり、2017年にロッテワールドタワー (555m)が建設されると韓国で最も高い建築物となった(当時世界第四位)。現在、600m級の現代ワールドビジネスセンターが建設中である。
北朝鮮
北朝鮮の首都平壌 では、2010年から建設ラッシュとなっており、未来科学者通りや、平壌中心部は、柳京ホテル を核として、高層ビルが林立している。
東南アジアの超高層建築物
シンガポール
シンガポールのラッフルズ・プレイス
シンガポール では、1965年 にマレーシア連邦 から独立した後、リー・クアンユー 首相と人民行動党 は権威主義的な独裁体制を敷き、これらは開発独裁 と言われた。徹底した管理社会となるが、経済は著しい成長を続ける。その中で、シンガポール南部に位置する中心部のラッフルズ・プレイス には数多くの超高層ビルが建てられる。この中でも、丹下健三 設計のOUBセンター (Overseas Union Bank Centre:280.1m)やUOBプラザ (United Overseas Bank Plaza One:280.1m)、また黒川紀章 設計のリパブリックプラザ (Republic Plaza:280.1m)などはシンガポールを代表する超高層ビルである。2006年 には、KPF 設計のワン・ラッフルズ・キー・タワー(One Raffles Quay North Tower:245.1m)が完成している。
マレーシア
マレーシア の首都クアラルンプール では、マハティール・ビン・モハマド 前首相による「ルックイースト政策 」などの経済政策により、マレーシア経済は飛躍的に成長した。首都・クアラルンプール の再開発地「KLCC」では1998年 に、当時世界で最も高い超高層ビルであったシーザー・ペリ 設計、日本の準大手ゼネコンハザマ 施工のペトロナスツインタワー (Petronas Towers:452m)が完成、このビルは国有石油会社のペトロナス が建設したものである。ペトロナスツインタワーは、既に台湾 の台北 にある台北国際金融センターに追い抜かれているが、ツインタワーとしては今なお世界で最も高い。2023年 にはPNB118 が完成し、世界で2番目に高い超高層ビルになった。
タイ
1997年 に高さ309mのバイヨーク・タワーII が竣工しており、東南アジアでも比較的早く高層化が始まっている。
フィリピン
マカティ の中心業務地区 (2017年 )
フィリピンの金融中心地で、メトロ・マニラ の一角を成すマカティ や首都マニラ は高層ビルが林立している。
南アジアの超高層建築物
インド
経済発展により2010年代から高さ200m以上の超高層ビルが増え始め、2018年 に320mのパレロイヤルが竣工している。400m以上の超高層ビルも計画が多数ある。
西アジアの超高層建築物
アラブ首長国連邦
ブルジュ・ハリーファ (2015年)
中東 の物流、金融の拠点として投資を進め、経済発展を遂げたアラブ首長国連邦 (UAE)のドバイ では、近年数多くの超高層ビルが林立している。2010年 には、世界で最も高い超高層ビルであるブルジュ・ハリーファ が竣工した。
ブルジュ・ハリーファ(旧称:「ブルジュ・ドバイ」)は、軒高643.3m、アンテナ高828m、162階。ムハンマド・ビン=ラーシド・アール=マクトゥーム の首相就任からちょうど4年目に当たる2010年1月4日 (現地時間)に竣工し、2012年現在着工中のビルを含め世界で最も高いビルとなった[ 24] 。
ヨーロッパの超高層ビル
ヨーロッパ では、歴史的建造物を保護する方針をとったため少なかったが、現代建築が箱のようなデザインからユニークなデザインに脱却にするにつれて容認されるようになり、21世紀になって超高層ビルの建設が著しくなっている[ 25] 。特に、イギリス のロンドン や、フランス のパリ や、イタリア のミラノ 、ドイツ のベルリン 、フランクフルト 、ロシア のモスクワ などでその動きが活発になっている。
歴史的な景観を重視するヨーロッパでは、元来超高層ビルの建設は余りされておらず、例外的には第二次世界大戦 で壊滅したドイツ のフランクフルト ではドイツ及びヨーロッパの金融中心地として開発される際のオフィス供給の手段として、ドイツ銀行 やコメルツ銀行 などの200m級の超高層ビルが複数建設された。摩天楼の建つ一角はマイン川 にマンハッタンを合わせた造語で「マインハッタン(Mainhattan)」と俗称される。またパリでは市内のオフィス需要を補うために郊外のデファンス(Défence)地区に新都心「ラ・デファンス (La Défence)」が作られ、ロンドンでは、「カナリー・ワーフ (Canary Wharf)」と呼ばれる新都心が作り出された。
現時点では、中小都市には超高層ビル群が建設されている例は余り見られない。しかし、ヨーロッパの都市での旧来の建築による不動産供給は限界に来ており、中心部の超高層ビルの建設が容認され始めている。
東ヨーロッパの超高層建築物
ロシア
モスクワ国際ビジネスセンター(モスクワ・シティ)、2010年3月
旧ソビエト連邦 の首都モスクワ でも、20世紀半ばには社会主義 体制下における国威発揚効果を狙ってスターリン様式 の超高層ビルが建設された。1930年代 から1940年代 にかけて「ソビエト宮殿 」をはじめ多くの巨大建築が計画されたが、モスクワ大学 (240m)など実現したものは計画数からすると多いとは言えず、計画されたもののほとんどは起草されただけに終わり、スターリン の死後に中止されている。しかしソビエト連邦の衛星国 、主に東ヨーロッパ 諸国での建築様式にも多大な影響を与えた。
また、1920年代 から1930年代初頭、スターリン様式の確立以前に計画されたもの(ウラジーミル・タトリン の第三インターナショナル記念塔、高さ400mなど)は当時斬新なデザインでもあったため、社会情勢ともあいまって世界の多くの建築家 に影響を与えた。この時期のソビエト建築界自身もル・コルビュジエ など当時先端を歩む建築家の思想に大きく傾倒していた。
2000年代 に入り、ロシアの経済発展(特に石油など天然資源輸出を中心とした発展)に伴って、モスクワでは超高層ビルの建設・計画が進んでいる。特に2003年 に完成したスターリン様式を模した超高層マンション、トライアンフ・パレス (264.1m)はフランクフルト のコメルツ銀行 ビル(259m)を抜きヨーロッパ一の高さとなった。
1990年代 前半からモスクワ川 沿いに「モスクワ国際ビジネスセンター 計画」(MIBC、モスクワ・シティ )が進行しており、現在ヨーロッパで一番高いビルになっている超高層ビルはモスクワ・シティーのフェデレーション・タワー (374m)である。他に354mのOKO や338mのマーキュリー・シティ・タワー や308mのユーラシア・タワーなどのビルが立ち並んでいる。完成すれば最大のビルとなる予定であったロシア・タワーは、経済危機の影響を受け、また、他のビルよりも着工が遅かったこともあり、計画は中止された。敷地跡には、ru:Renaissance Moscow Towers というツインタワーが建てられる計画がある。335m(74階)と290m(63階)の二棟が予定される。
また2018年 にはサンクトペテルブルク郊外にラフタ・センター という5つの建築・構造物からなる複合施設が作られ、そのうちの超高層ビルは高さが462mで、ヨーロッパ及びロシアで最も高い建築物 となった。
北ヨーロッパの超高層建築物
イギリス
ロンドン(2015年)
ロンドン 市街東部の港湾跡地ドックランズ (Docklands)地区が再開発され、「カナリー・ワーフ (Canary Wharf)」と呼ばれる新都心となり、超高層オフィスビルがロンドン・ドックランズ再開発公社(LDDC)によって続々と建設された。竣工当時は英国で最も高かったシーザー・ペリ 設計のワン・カナダ・スクエア (One Canada Square:235.1m)」のほか、ノーマン・フォスター (Sir Norman Foster)卿設計の香港上海銀行 (HSBC、社屋の名称は「8 Canada Square」:199.5m)や、シーザー・ペリ設計のシティバンク (社屋の名称は「25 Canada Square」:199.5m)などの超高層ビルへ、中心部のシティ・オブ・ロンドン から金融機関が本拠を移転している。
歴史的建造物が並ぶシティ・オブ・ロンドンではセント・ポール大聖堂 (111m)を越える高さの建造物は建ててはならないという不文律があったが、1965年 に建ったポストオフィスタワー(現:BTタワー、188m)によって破られた。その後、1980年代 までのイギリス経済の低迷により超高層ビルを求める声が上がり、ナットウェスト・タワー(1993年 IRA暫定派 により爆破、現在改修され「タワー42 」と改称)をはじめとする大聖堂を越える超高層ビルがいくつか建設された。またロイズ 保険もハイテク建築 の超高層ビルに建て替えたが、今日まで多くの超高層ビル計画が景観を理由に中止させられている。この中で例外的に実現したのは、1992年 にIRAが爆破した歴史的建築、バルティック・エクスチェンジ の跡地に建設されたノーマン・フォスター設計によるスイス・リ本社ビル (別名「ガーキン」)である。2012年 には、レンゾ・ピアノ 設計による三角錐型の超高層ビル、シャード・ロンドン・ブリッジ (ロンドン・ブリッジ・タワー、高さ310m、87階建て)がテムズ川 南側に完成した。
今後の計画では、シティ・オブ・ロンドンではKPF 設計の螺旋形の超高層ビル、ビショップスゲート・タワー (高さ288m、63階建て)が当初の高さ307mの計画案を変更した上で建設認可が下りている。
スウェーデン
スウェーデン 南部の都市マルメ に、スカンディナヴィア で一番高いターニング・トルソ (190m)というビルがある。サンティアゴ・カラトラヴァ がデザインしたユニークな形状のビルである。
西ヨーロッパの超高層建築物
ドイツ
フランクフルト のマインハッタン(2021年 )
統一ドイツ の新首都として再興されているベルリン では高層、または超高層のビルが建設され始めている。「ポツダム広場 」にあるヘルムート・ヤーン 設計のソニーセンター や、レンゾ・ピアノ (Renzo Piano)設計のダイムラー シティ(Daimler City)などが代表的であり、他にミッテ(Mitte)地区やツォー駅 (Zoologischer Garten)周辺でも再開発時に超高層ビルを用いている。
フランクフルト では、コメルツ銀行 、ドイツ銀行 、メッセタワー など、200mを超える超高層ビルが建設されている。今のところドイツで超高層ビルの林立が見られるのはフランクフルトくらいで、同市を流れるマイン川 とマンハッタンを組み合わせた「マインハッタン」という造語がある。
フランス
パリ のラ・デファンス (2023年 )
パリ では、1960年代後半からの再開発で市街地南端のモンパルナス駅 が解体され、跡地にトゥール・モンパルナス (210m)が完成しビルの超高層化が始った。以後、都心に超高層ビルを建てることは禁止されたが、1980年代 のミッテラン 大統領によるグラン・プロジェ によってポストモダン建築 やハイテク建築が相当数供給され街の様相を一変させた。同時期、エトワール凱旋門 を通るパリの歴史軸 の延長線上、市街地西郊のラ・デファンス 地区には国際会議場グランダルシュ をはじめ、フランスを代表する大企業や外資系企業の超高層ビルが相次いで建てられた。今後も新たな超高層ビルが建設されていく予定である。
南ヨーロッパの超高層建築物
スペイン
マドリード のCTBA (2021年 )
首都マドリードを南北に貫くカステヤーナ通り 沿いには、第二次世界大戦直後のフランコ政権時代に大規模なビジネスエリア・官庁街を作る計画があった。これは1970年代 以後になってAZCA として結実し、トーレ・ピカソ (157m)をはじめ高さ100m前後のビルが立ち並んだ。
カステヤーナ通りの北端には2000年代に入りクアトロ・トーレス・ビジネス・エリア (CTBA)という再開発地区が作られ、高さ250mほどの欧州でも有数の高さのビルが4本立ち並んだ。
一覧
世界一高いビルの変遷
尖塔やアンテナなどは除く。(表中の「屋根」は尖塔やアンテナなどを含めない高さ。「尖塔」はそれらを含めた高さ。)
表はピラミッドや教会を除く。以下はそれらを含めた場合の記録。
あらゆる建築物 で世界一の高さの変遷は「世界一高い建築物の変遷 」を参照。
現在の高さ順位
尖塔やアンテナなどを含めた高さの順位。(表中の「屋根」は尖塔やアンテナなどを含めない高さ。「尖塔」はそれらを含めた高さ。)
建設中のビルは除く。
建設中の特に高い超高層ビル
武漢グリーンランドセンター
中国武漢市 で建設中の126階建て475m(尖塔高)の超高層ビル。完成時期は未定。
ジッダ・タワー
サウジアラビア のジッダ で建設中の167階建て1007m(尖塔高)のハイパービルディング (超々高層ビル)。完成時期は未定。
脚注
注釈
出典
参考文献
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
超高層建築物 に関連するメディアがあります。
外部リンク