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連続立体交差事業(れんぞくりったいこうさじぎょう)は、鉄道線路を高架もしくは地下に切り替え、道路との立体交差を3箇所以上新設する事業である。
事業主体
都道府県、政令指定都市、県庁所在都市、人口20万以上の都市、東京23区である。
構造形式
- 高架方式
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- 仮線:既設線を仮線に切り替え、跡地に高架橋を新設。
- 別線:既設線の横に高架橋を新設。
- 直上高架:既設線の真上に高架橋を新設。
- 地下方式
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歴史
高架化工事
神戸市街線(JR神戸線)灘駅 - 鷹取駅間で施工した。
1918年9月に鷹取駅付近の用地買収から始まった。1922年12月から1927年10月の間で、高架改築工事に着手した。山側にある現在線を海側に切り替え、跡地に2線分の高架橋建設工事を開始した。1931年に高架橋が完成した。現在線を高架線に切り替えた後は、海側の跡地に2線分の高架橋建設工事を進めた。高架橋の完成は、1937年である。1939年に工事を完了した。
地下化工事
新京阪線(現:阪急京都本線)西京極駅 - 京阪京都駅(現:大宮駅)間で初めて実施した。
新京阪鉄道は、京都市内への乗り入れを計画するも、市街化が進んだため、地下線での乗り入れを試みた。1928年6月15日に工事を着手した。地下による西院駅と大宮駅を開業したのは、1931年3月31日である。1931年4月に竣工した。
鉄道高架化の確立
1964年8月7日に建設省と日本国有鉄道(以下、国鉄)で、建国協定[注釈 1]に基づく鉄道の高架化における費用負担についての覚書を締結した。高架線の定義は、下記のとおり。
- 道路と鉄道線路との立体交差を3箇所以上新設。
- 両端の道路の中心線距離が350メートル以上。
- 踏切を2箇所以上除却。
都市計画事業の確立
1967年3月に赤字経営の国鉄から、鉄道高架化による費用負担の要望があった。
- 建国協定は、現状維持。
- 線路増設費は、国鉄が負担。
細田試案
国鉄の要望を受け、1967年4月27日に国鉄基本問題調査会で細田吉蔵が細田試案を示した。
- 鉄道高架化は、都市再開発と交通の円滑化を図る目的で実施。
- 国鉄・私鉄を通じ、高架化すべき鉄道区間を建設運輸大臣が指定。
以上の事項を建設省、大蔵省に求めた。
建設省の見解
建設省は、1967年7月に以下の見解を示した。
- 鉄道高架化は、都市計画事業で実施。
- 事業主体は、地方公共団体。
大蔵省の見解
大蔵省は、1968年1月6日に以下の見解を示した。
- 鉄道高架化事業(地下化を含む)は、都市計画事業で実施。
- 事業主体は、県。
- 鉄道事業者と道路管理者の費用負担区分は、建設省と運輸省間で検討。
事業範囲と施行者
1968年5月7日の国鉄基本問題調査会で、鉄道高架化の方針を発表した。
- 都市計画決定は、高架化部分を含む最寄り駅までの区間が対象。
- 事業範囲は、既設線相当分が対象。線路増設分は含めない。
- 事業主体は、都道府県と政令指定都市。
年表
- 1969年(昭和44年)9月1日:都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する協定及び同細目協定を適用。
- 2004年(平成16年)4月:都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する要綱及び同細目要綱を適用。
- 2005年(平成17年)度:事業主体を県庁所在都市、人口20万以上の都市、東京23区に拡大。
採択基準
下記のいずれかに該当かつ、鉄道区間(高架化及び地下化)と道路との立体交差を3箇所以上新設。
- 幹線道路[注釈 2]が2箇所以上。かつ両端の幹線道路の中心間距離が350メートル以上。同時に踏切を2箇所以上除却。
- 幹線道路にあるボトルネック踏切[注釈 3]を除却。
- 生活道路にある歩行者ボトルネック踏切[注釈 4]を除却。
2は2000年度、3は2006年度追加。
費用負担
地域名
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区域
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鉄道事業者負担率
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出典
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A地域
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東京23区
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15%
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[25]
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B地域
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首都圏整備法第2条の東京23区を除く既成市街地と近郊整備地帯の区域
近畿圏整備法第2条の既成都市区域
政令指定都市
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10%
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C地域
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近畿圏整備法第2条の近郊整備区域
中部圏開発整備法第2条の都市整備区域
A地域とB地域を除く人口30万以上の都市区域
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7%
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D地域
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A地域、B地域、C地域を除く区域
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4%
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鉄道事業者負担率は、高架方式を採る。地下方式は、都市計画事業施行者と鉄道事業者で別途協議をする。
費用負担の変遷
- 1964年(昭和39年)8月7日:道路側と国鉄側で1/2ずつ負担。
- 1969年(昭和44年)9月1日:国鉄(JR)が10%で私鉄が7%、残額を都市計画事業施行者が負担。
- 1992年(平成04年)3月31日:JRや私鉄を問わず、4つの地域ごとに負担。A地域:14%、B地域:10%、C地域:7%、D地域:5%。
- 2007年(平成19年)8月:A地域の負担率を14%から15%に、D地域の負担率を5%から4%に変更。
関連事業
- 逆立体化事業
- 高架道路を地上に下ろすとともに、鉄道線路を高架に切り替える。
- 連続立体交差関連公共施設整備事業
- 連続立体交差事業と併せて街路事業(道路整備)、土地区画整理事業並びに市街地再開発事業を実施する。
事業箇所
ギャラリー
脚注
注釈
- ^ 道路と鉄道との交差に関する建設省、日本国有鉄道協定。
- ^ 道路法による一般国道及び都道府県道並びに都市計画法に基づいて都市計画決定した道路。
- ^ 自動車の踏切交通遮断量が1日あたり5万台以上もしくは、ピーク時の遮断時間が1時間あたり40分以上の踏切。
- ^ 自動車や自転車および歩行者の踏切交通遮断量が1日あたり5万台(人)以上、かつ自転車と歩行者の踏切交通遮断量が1日あたり2万台(人)以上の踏切。
出典
参考文献
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- 小野田滋「阿部美樹志とわが国における黎明期の鉄道高架橋」『土木史研究』第21巻、土木学会、2001年5月、113-124頁、doi:10.2208/journalhs1990.21.113。
- 小野田滋『関西鉄道遺産』講談社、2014年10月20日。ISBN 978-4-06-257886-8。
- 最新土木工事ハンドブック編集委員会「立体交差」『最新土木工事ハンドブック』建設産業調査会、1978年6月、804-808頁。
- 寒川重臣「都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する協定及び概説」『新都市』第23巻第12号、都市計画協会、1969年12月、41-49頁。
- 柴垣寛『立体交差工事の設計と施工』 1巻(第1版)、山海堂〈鉄道土木シリーズ〉、1966年10月31日。
- 下山武夫「京阪電鉄京都地下線の建設工事」(PDF)『土木建築工事画報』第7巻第9号、土木学会附属土木図書館、1931年9月1日、37-43頁、2022年4月5日閲覧。
- 留目峰夫「連続立体交差関連公共施設整備事業を活用した市街地再開発事業の推進について」『市街地再開発』第435号、全国市街地再開発協会、2006年7月、2-4頁。
- 土木学会 土木計画学ハンドブック編集委員会「道路施設計画」『土木計画学ハンドブック』コロナ社、2017年3月31日、484-486頁。ISBN 978-4-339-05252-7。
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- 成瀬英治「連続立体交差化に関する運輸省・建設省間の協定締結について」『日本鉄道施設協会誌』第30巻第11号、日本鉄道施設協会、1992年11月、770-773頁。
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- 八木田功「鉄道高架事業(所謂連続立体交差事業)について」『新都市』第23巻第12号、都市計画協会、1969年12月、2-8頁。
- 吉田忠司、丸山修「連続立体交差化に関する手引書の改訂」『日本鉄道施設協会誌』第46巻第10号、日本鉄道施設協会、2008年10月、819-821頁。
関連項目
外部リンク