BLACK(ブラック)は、日本のパフォーミングアーティスト。
2001年・2007年ヨーヨー世界チャンピオン。シルク・ドゥ・ソレイユアーティスト。TEDスピーカー[1]。
人物
東京都出身。青山学院大学卒業[2]。名前の由来は、選手時代に黒い衣装を好んで着ていたことから。[3]。好きなアーティストとしてPerfumeを挙げている[4]。
学生時代は英語が苦手であったが、世界大会優勝後にインスタントメッセンジャーを通じ世界中のヨーヨープレイヤーと会話する中で徐々に英語を習得していった[5]。現在では、TEDカンファレンスをはじめ英語で講演を行うまでになった。
現在も英語は流暢というわけではないが、だからこそ「日本人らしいカタカナ英語でも世界で通じることの好例、日本人英語話者として理想像である」と、英語教師からも評価されている。[6]
シルク・ドゥ・ソレイユ出演時、プレッシャーとストレスから胃潰瘍を3度患いカナダ・アメリカの病院に入院したが、現在は完治している[2]。
尊敬するパフォーマーはウクライナ出身のジャグラーであるヴィクトル・キー[7]。2003年にキーの演技を観て以来、シルク・ドゥ・ソレイユへの入団を目指すようになった[7]。しかし当時、ヨーヨーパフォーマーのシルク・ドゥ・ソレイユ出演は前例がなかったため、本当に自分が出演できるとは思っていなかった[7]。
趣味はアニメ鑑賞、ラジオ聴取、eスポーツ観戦[8][9]。
経歴
アマチュア時代
1997年、バンダイより発売されたハイパーヨーヨーを手に取る[7]。不器用で技の覚えも決して早い方ではなかったが、「練習を重ねれば、遅いながらも技を習得できる」という魅力に惹かれ、寝食を忘れのめり込む[7]。1997-1998年のブーム時には目立つ選手ではなかったが、ブーム沈静化後に頭角を現し、2001年には米国フロリダ州で開催されたヨーヨー世界大会にて優勝を果たした[7]。
大学卒業後は、システムエンジニアとして一般企業に就職[10]。残業が続きヨーヨーに取り組む時間が無くなったことから転職を検討し、適職コンサルティングのサービスを受けた際に「自分の死後も後世に残る、社会に良い影響を及ぼす何かを為したい」という思いが芽生えた[11]。
自分が後世に残せる良い影響は、自身がヨーヨーで世界一になっても社会的評価が伴わず普通の会社員として就職するしかなかった経験から、「競技ヨーヨーに取り組む選手達に対する社会的評価を上げること」であるとし、その手段として「シルク・ドゥ・ソレイユ等の舞台で、その舞台に見合うレベルのヨーヨーパフォーマンスを披露すること」を目指し始めた[11]。
プロ転向後
2007年、プロパフォーマーとして独立。同年8月より、東京ディズニーリゾート (TDR) 内にあるショッピングモール「イクスピアリ」にてレギュラー出演開始。共演する先輩パフォーマー達から、パフォーマーとしての基礎技術を学んだ[12]。
2009年、シルク・ドゥ・ソレイユのオーディションに合格。ヨーヨーパフォーマーとして初の合格者となる[13]。ただしこれは、契約等は無くアーティストデータベースへの登録のみであり、即時出演したわけではなかった。
2013年2月、米国カリフォルニア州で開催された世界的講演会「TED 2013」に唯一の日本人として登壇[14]。
同年9月、シルク・ドゥ・ソレイユのスペシャルイベントに出演[15]。史上初のヨーヨーアーティストとしての出演を果たした[2]。
同年10月、TED登壇やシルク・ドゥ・ソレイユ出演により、ヨーヨーに対する社会からの評価を向上させたとして、ヨーヨー業界の発展に寄与した者に贈られる「ナショナルマスターアワード」を受賞。ヨーヨーマスターとして認定された[16]。
2014年4月より、シルク・ドゥ・ソレイユのツアーショー「KURIOS」に出演。ストーリーのカギを握る「時の支配者」役としてソロ演目を担当し、500回以上のショーに出演、100万人以上の観客を魅了した[2]。
2016年には同役を後輩へ引き継ぎ、日本へ帰国した。
教育貢献活動
TED登壇以降は、パフォーマンスだけでなく講演活動、特に教育貢献に目を向け始めた。きっかけは、TED会場において「情熱を持てる物を見つけ、そこへ向かって邁進したキミは、これからの若い世代のロールモデルになるべきだ」「変化の激しい世の中をこれからの若い世代が生きていく上で『情熱を持てる物』を見つけるということは、とても重要だと思う。ぜひ、『教育』という分野に力を貸して欲しい」と声をかけられたことから[17]。
2017年、Pearson Education Asia社の英語教科書「Longman English 『Spark!』」に掲載される(香港、高校生向け教科書)。「The story of a yo-yo pro」というタイトルの下、BLACKが夢を叶えてきた半生が教材として紹介されている[18]。
2020年より、「世界で活躍する日本人」として、日本の小学生向け英語教科書に掲載される。掲載教科書は、開隆堂出版「Junior Sunshine」(小学5年生用)と、光村図書出版「Here We Go!」(小学6年生用)の2冊。[19]。
現在は従来のパフォーマー活動に加え、「英語で広がる自由」「好き・夢の見つけ方」を伝える、英語教育・キャリア教育にも尽力している。
パフォーマンス技術と特徴
BLACKのパフォーマンスは、音楽との調和、世界観の表現に定評がある[20]。
日本人ならではの演技「Yo-Yo Samurai」から、シルク・ドゥ・ソレイユにおける人ならざる雰囲気のパフォーマンスまで幅広く演じ分け、企業イベント等ではテーマ・メッセージを伝える演技を披露している[21]。
昨今は外国人の観客を含めた企業イベントへの出演が多く、英語スピーチとパフォーマンスを組み合わせたステージ構成とすることも多い[22]。
また、高い表現力・世界観の企画力から、商品プロモーションへの出演も多く、パフォーマンスのみならず演出企画から協力することもある[23]。
テーブルクロス引き
自身が開発した技として、「ヨーヨーを使ったテーブルクロス引き」がある。通常のテーブルクロス引きでは両手でテーブルクロスを掴み引き抜くが、BLACKの場合、手ではなくヨーヨーを使ってテーブルクロスを引き抜く[24]。
使用ヨーヨー
ショーでは、特注品のヨーヨーを使用する事が多い。大型のヨーヨーを使用することにより、「ヨーヨーはサイズが小さく、大舞台では観客から見えづらい」と言われる問題を克服した[2]。製作には、旋盤工の紺本忍夫、株式会社菊水フォージングが協力している[25][26]。
また、スマート・ヨーヨー「7-Magic」を使用することも多い。発光パターンのプログラミングにより、背景映像や音楽と完全にシンクロしたパフォーマンスを行っている。こちらのヨーヨーはBLACKが監修、株式会社Cerevoが製作したもので、一般販売もされている[27]。
振付
演技の振り付けには、ファッション誌やゲームのイラスト集などを参考にしている。きっかけは、Perfumeの振付師であるMIKIKOがインタビューにて「振り付けにおいて、ダンスのどのシーンを写真に切り取ってもキレイに写るよう、ファッション誌におけるモデルのポーズを参考にしている」と答えていたことから[28][29]。
TEDカンファレンスで披露した演技においては、ストリートファイターIVのイラスト集を振り付けの参考にした[29]。また、同演技においては、シルク・ドゥ・ソレイユで約10年の出演経験のあるフィリップ・エマールの指導も受けた[30]。
シルク・ドゥ・ソレイユ「KURIOS」での演技においては、黒執事のコミック、アニメ、ミュージカルなどを振り付けの参考にしている。KURIOSでは「時の支配者」役で出演しているが[31]、このキャラクターの設定が黒執事の主要人物であるセバスチャン・ミカエリスに近いことが理由である[32]。
パフォーマンス作品
Yo-Yo Samurai
日本をテーマとした演技。TEDカンファレンスで披露した、BLACKの代表的な演技である。袴姿の衣装、鹿威しの音に合わせた振付など、随所に和の要素が含まれている。一部の振付は、格闘ゲームストリートファイターの登場キャラクター豪鬼の動きを取り入れた[33]。
Illuminate the World
映像プロジェクションとLEDヨーヨーを組み合わせた演技。プログラミング制御されたヨーヨーの発光が映像・音楽とシンクロし、スクリーン上の映像と現実世界のヨーヨー演技が一体化する新たな芸術表現を可能にした。BLACKはこのパフォーマンス手法を、「Cinema connected Yo-Yo」と呼んでいる[2]。企業イベントなどに出演する際は、クライアントのロゴなどを映像に取り入れる場合もある[21]。
Ignition
90秒間の演技。短い時間の中に、ヨーヨーの高速回転によるマッチへの着火、プログラミングLEDヨーヨー、スプリット(開脚)ルーピング、テーブルクロス引きなど多くの技が詰め込まれている。演技内で行っている『着火』の技と、「情熱は不可能をも可能に変える」ことの体現により『観衆の情熱に火を灯す』ことをかけて、Ignitionというタイトルが付けられている(Ignition=着火の意)[2]。
ヨーヨー指導・演出
イベントにおけるワークショップ実施のほか、TV番組等における芸能人へのヨーヨー指導・演出経験も多い。これまでに指導してきた芸能人は以下。[要出典]
他多数
出演
テレビ
- NHK 金曜バラエティ
- NHK 世界を沸かせるスーパーサーカス~華麗なるステージとその裏側~
- NHK あさイチ
- NHK Eテレ 大!天才てれびくん
- NHK Eテレ スーパープレゼンテーション
- NHK Eテレ みいつけた!
- 日本テレビ メレンゲの気持ち
- 日本テレビ おしゃれイズム
- 日本テレビ スッキリ
- 日本テレビ シューイチ
- 日本テレビ スクール革命!
- 日本テレビ 心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU
- フジテレビ めざにゅ~
- フジテレビ 笑っていいとも
- フジテレビ ノンストップ!
- テレビ東京 ガイアの夜明け
- テレビ東京 所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!
他多数
ラジオ
- JFN OH!HAPPY MORNING
- 文化放送 Blendy stick スマート男子とキレカワ女子のスティックブレイク
- bayfm POWER BAY MORNING
- TOKYO FM DOCOMO LOVE Family
- TOKYO FM Honda Smile Mission
- TOKYO FM Dream HEART
他多数
CM・広報
- CANON「IXY 30S」
- コカ・コーラ「burn」
- 国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEIC S&W」
- Original Japan「Original Stitch」
- 東洋水産「MARUCHAN QTTA」
他多数
著書
単著
教科書掲載
- Longman English 「Spark!」 (Pearson Education Asia、2017年)
- 開隆堂出版 「Junior sunshine」 (2020年)
- 光村図書出版 「Here We Go!」 (2020年)
脚注
関連項目
外部リンク