M は、イアン・フレミング のジェームズ・ボンド シリーズに登場する架空の人物であり、イギリス情報局秘密情報部 (MI6)の部長である。フレミングだけでなく後継の作者たちの小説でも使われ、また、映画シリーズでは24回登場している。イーオン・プロダクションズ 制作の映画ではバーナード・リー 、ロバート・ブラウン 、ジュディ・デンチ 、レイフ・ファインズ 、非イーオン作品ではジョン・ヒューストン とエドワード・フォックス がMを演じた。
背景
Mは、第二次世界大戦 中に英海軍情報部 (英語版 ) (NID。1964年に国防情報参謀部 に統合された)で部長を務めたジョン・ヘンリー・ゴドフリー 提督をモデルに創造された。戦時中、フレミングはNIDのエージェントとして活動しており、ゴドフリーは当時の上官であった。
フレミングの死後、ゴドフリーは「彼は私を不快なキャラクター、Mに変えてしまった」と不満を述べた[ 1] 。
小説
マイルズ・メッサヴィー(Miles Messervy)
イアン・フレミング の小説では、12長編と2短編集のすべて(1953年から1966年)に登場している。
『カジノ・ロワイヤル 』(1953年)で、対ソ連 課長の提案を読んでいるのが初登場である。
これは第2章であるが、時系列上は第1章のボンドより先である。
『ムーンレイカー 』(1955年)では、「M****」「M*******」とイニシャルのみ明らかにされている。但し、ブレイズ・クラブ の会長が「マイルズ」と呼んでいる
結末ではボンドが事件でベレッタとコルトの二丁の拳銃を紛失したので、あらためて新品を与えた。
『ロシアから愛をこめて 』(1957年)では、調査委員会にバージェス (Burgess )マクリーン 問題の研究をさせ、本部で勤務中のボンドに委員を命じた。
ソ連情報部の資料に「海軍将官で仮称はM、存在が公表されておらずめったに英国を離れることもない」と言及されており、情報機関の合同会議で、ロンドン で暗殺しても政治的効果は少ないと判断された。
『ドクター・ノオ 』(1958年)では、前作結末で動作不良をおこしたベレッタM1919 をかえるようボンドに命じた。
『ゴールドフィンガー 』(1959年)では、本部で勤務中のボンドに夜間当直の責任者を命じた。
『読後焼却すべし 』(『007号の冒険 』(1960年)に収録)には、海軍 軍令部 最高委員になれるはずだったのが秘密情報部の長官になったとある。
『サンダーボール作戦 』(1961年)では、休暇をシェラブランズ自然療養所で過ごした。
後にボンドも入所してスペクター(SPECTRE )の手先と知らぬ内に対決する。
『女王陛下の007号 』(1963年)では、最近、聖マイケル・聖ジョージ勲章 を授与された。秘密情報部の長官として年俸5,000ポンド と運転手付きのロールス・ロイスを支給、他に軍人恩給が年1,500ポンド給付されている。手取りは約4,000ポンド。住居はウィンザー公園近くの摂政屋敷(王室領、すなわち国有地らしい。)、最後に艦上勤務したのは巡洋艦 レパルス 、従兵だったハモンド兵曹長を夫婦共々使用人としている。
『007は二度死ぬ 』(1964年)では、プレンダーガースト事件の解決後に引責辞任を考えていた。シニアー・クラブ の会員資格がある。結末では日本 で行方不明となったボンドの死亡公告をタイムズ 紙にM名義で寄稿している。
ブレイズ・クラブの給仕頭ポーターフィールドは、Mがレパルスで艦上勤務していたときの先任兵曹長だった。
『黄金の銃を持つ男 』(1965年)で、「海軍中将サー ・マイルズ・メッサヴィー(Vice Admiral Sir Miles Messervy)」とフルネームが明らかになった。ブレイズ・クラブには、自分専用にアルジェリア 産の赤ワイン を取り寄せさせている。
「前任者は狂った情報部員に執務室で暗殺された」と言っている。
キングズリー・エイミス は、『ジェームズ・ボンド白書』(The James Bond Dossier )でMを「ジェームズ・ボンドの敵」のトップに挙げている。
ボンドはプレイボーイ でいたいのに、Mの命令で次々と悪人と対決せねばならないからというのが理由。(もちろんMは悪人ではない。)
表向きはユニヴァーサル貿易の専務。秘書はミス・マネーペニー 、幕僚主任はビル・タナー(Bill Tanner ) 。
家族についての描写は無く、使用人のハモンド夫妻を除けば一人暮しである。
公私の別にきびしく、執務室では私的なことでなければボンドを「007」と呼び「ジェームズ」とは呼ばない。
ヴィクトリア朝 の教育を受けたのでボンドの女遍歴を苦々しく思っている。
但し、上官としてはボンドが一人の女にとらわれるのも良しとしていない。
フレミング以後では、
バーバラ・モーズレー(Barbara Mawdsley)
レイモンド・ベンソンの第一長編『ゼロ・マイナス・テン 』(Zero Minus Ten )(1997年)では女性としかわからなかったが、『ファクト・オブ・デス』で「バーバラ・モーズレー」とフルネームが明らかになった。
映画
イオン・プロ作品
バーナード・リー: 1962-79年
バーナード・リー が演じるMは、ボンド映画第1作『ドクター・ノオ 』から『ムーンレイカー 』(1979年)まで登場した。
リーは『ユア・アイズ・オンリー 』撮影前の1981年1月にガンで亡くなった[ 3] 。リーを尊重して新たな俳優は雇われず、Mは休暇中という設定に脚本が書き直され、作中での役割はビル・タナー (英語版 ) とフレデリック・グレイ (英語版 ) に置き換えられた。1999年の『ワールド・イズ・ノット・イナフ 』では、MI6スコットランド支部でリーのMらしき肖像画が登場した。
登場作品
ロバート・ブラウン: 1983-89年
1981年にリーがなくなった後、新たにロバート・ジェームズ・ブラウン (英語版 ) が起用され、『オクトパシー 』よりブラウン演じるMが登場した。ブラウンは1977年の映画『私を愛したスパイ』でハーグリーブズ提督役で出演している。ハーグリーブスがメッサヴィー卿の退任後Mに就任したのか、ブラウンがリーの死を受けてメッサヴィー卿の役柄を引き継いだのか、或いはハーグリーブスともメッサヴィー卿とも別人のMなのかは、作品本編中では明確な描写はされていない。
登場作品
ジュディ・デンチ: 1995-2012年
『消されたライセンス』からしばらく空いて『ゴールデンアイ 』ではジュディ・デンチ が新たなM役に起用された。キャラクターは1992年から1996年まで実際にMI5の長官だったステラ・リミントン (英語版 ) に基づいている。『007 スカイフォール 』ではMが物語の重要人物となり、実質ボンドガール として終始ストーリーに登場する。結末で殉職し、新任のMに引き継ぎとなるシーンまでが描かれる。次作の『007 スペクター 』では、ボンドに「自身の死後に実行してもらいたい任務」を下すため、ビデオレターで登場する。これらのことは全てMのキャラクターを使用する中で初のことである。本名はオリヴィア・マンスフィールド。
登場作品
※生前のビデオレターとして登場。クレジットは無し。
デンチのMは多数のコンピュータゲーム作品にも登場している。
レイフ・ファインズ: 2012年-
『007 スカイフォール 』の結末でジュディ・デンチ演じるMは殉職し、レイフ・ファインズ 演じるギャレス・マロリーが引き継いだ。マロリーはIntelligence and Security Committee の委員長で、元イギリス陸軍 中佐である[ 17] 。
登場作品
非イオン作品
ジョン・ヒューストン: 1967年
1967年のコメディ映画『007 カジノロワイヤル 』では2人のMが登場する。1人目は共同監督を務めたジョン・ヒューストン が演じ[ 18] 、本名はマクタリーである。マクタリーは敵の攻撃を受けて死亡し、デヴィッド・ニーヴン 演じるジェームズ・ボンドが新たなMとなる。
エドワード・フォックス: 1983年
1983年の『ネバーセイ・ネバーアゲイン 』ではエドワード・フォックス がMを演じた。
出典
参考文献
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外部リンク