Macintosh IIのマザーボード。左に6個のNuBusスロットが見える。
NuBusグラフィックスカードの例 (Apple Display Card 24AC)
NuBus (ニューバス)は32ビット のパラレルバス である。当初はMIT でNuMachineワークステーションの一部として開発されたが、ついには、Apple Computer やNeXT コンピュータにも採用された。だが21世紀 に入る頃には、もはや広く使われることのない規格となった。テキサス・インスツルメンツ の登録商標(日本における商標登録番号は第2315207号)である。
アーキテクチャ
NuBusは、開発された当時のその他のインタフェース と比較して、かなり先進的な設計だった。当時のたいていのコンピュータシステムのバスは8ビット で、その8ビットのバスで他のコンピュータと接続されていた。しかしながら、市場はより高速なバスを求めていることは明らかであったので、NuBusは32ビットインタフェースの採用を決めた。
加えて、NuBusはプロセッサ非依存であった。たいていのバスは基本的には、CPU 上のピンをそのまま基板上に出しているだけであった。つまり、拡張カード は接続先のマシンのデータ構造(たとえばリトルエンディアン )や信号規格を満たしていなければならなかった。NuBusはこのような仮定を取り除き、適切なデバイスドライバ が用意されるならば、NuBusカードはどのNuBusマシンにも接続できるようにした。
適切なデバイスドライバを選択するために、NuBusには、NuBusカードが起動時にホストコンピュータを識別できる仕組みがある。バスにカードを接続する際の面倒なシステム設定を行う必要がなかった。たとえば、Industry Standard Architecture (ISA)では、カードの設定だけでなく、カードが使用するメモリ空間や割り込み なども設定しなければならない。NuBusはこのような設定は必要とせず、プラグアンドプレイ をサポートするアーキテクチャの最初の一例となった。
この柔軟性のために、NuBusはユーザーとデバイスドライバ作成者にとっては非常に単純なものになったが、代わりにカードの設計者にとってはより難しくなった。たいていの「単純」なバスシステムは、ターゲットCPU用に設計された少ない入出力チップを使えば簡単にサポートできたのに対して、NuBusは、すべてのNuBusカードとコンピュータを、プラットフォーム非依存な「NuBusワールド」に変えなければならなかった。一般的に、このことは、カード上のバスとI/O チップとの間にNuBusコントローラチップを加え、カードのコストが増えることを意味した。この対策は今日では取るに足らないものであり、すべての新しいバスには必要なものであるのに対して、1980年 当時は、NuBusは複雑で高価なものであると思われた。
実装
NuMachineはリリースされることがなかったが、テキサス・インスツルメンツ は1980年にNuBusを採用し、IEEE 1196として標準化した。このバージョンはVMEバス や他のバスで見られる標準の96ピンの3列コネクタを使っていて、10MHzのクロックで最大バースト転送速度40MB/sと10MB/sから20MB/sの平均転送速度を出すことができた。後に追加されたNuBus90は、転送速度を上げるためにクロックは20MHzに引き上げられ、バースト転送速度は70MB/s、平均転送速度は約30MB/sにまで増加した。
NuBusは、よくデザインされたMITのNuMachineの派生品である、テキサス・インスツルメンツが開発したTI ExplorerというLISPマシン に最初に用いられた。その後まもなく、1986年 にテキサス・インスツルメンツはS1500マルチプロセッサUNIXシステムに採用した。
NuBusは、アップルコンピュータによってMacintosh II プロジェクトに採用された。そのプラグアンドプレイで使える特徴は、簡単に使えるというMacの哲学にぴったり一致していた。NuBusは1980年代 後半から1990年代 を通してMacintoshの大部分の製品ラインアップに使われた。そして、Macintosh Quadra以降からNuBus90にアップグレードされた。ただ、ロジックボード上のコントローラがアップグレードされなかったので、初期のQuadraは2枚のカードが互いに通信する場合、20MHzのクロックしかサポートしていなかった。この仕様は後に660AVと840AVにも搭載され、初期のPower Macintosh にも使われた。また、アップルコンピュータの実装は、コンピュータの電源をオフにする間、電話線を監視するタスク(Wake-on-Ring (英語版 ) )を動かすために、トリッキーな5V電源の常時供給も行った。これは明らかにNuBus標準として認められていないものであった。
NuBusはNeXT BUSとしてNeXTコンピュータ(NeXTcube およびNeXTstation )にも採用されたが、物理的な配線は異なっていた。NuBusはこれら以外のコンピュータにはほとんど使用されていなかった。そして、アップルコンピュータが1995年 にPCI に切り替えると、NuBusはすぐに消えた。
関連項目
外部リンク
主要項目 コンピュータバス規格 ストレージバス規格 ペリフェラルバス 規格オーディオ規格 コンピュータバス規格 (ポータブル) コンピュータバス規格 (組み込み) ビークルバス
補足:インタフェース のリストは通信速度がおおよそ速い順。セクションの最後に挙げているインタフェースが最も速い。
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