ランドローバー ウルフ (Land Rover Wolf)は、イギリス軍 とオランダ海兵隊 で運用されている四輪駆動 型の多用途車輌。イギリス陸軍 では主力汎用トラック として採用されている。
概要
ウルフは、ランドローバー・ディフェンダー を軍用としてイギリス国防省 に採用されたもので、軽汎用トラック (TUL)、または中型汎用トラック(TUM)と呼ばれる。ウルフの名称はランドローバー 社が用いたイギリス陸軍 に向けたプロジェクト名であり、国防省が制式名 に使用したわけではないが、兵士 の間でランドローバー ウルフシリーズの総称として広まった。また、ラインメタル 社によるメルセデス・ベンツ ・ゲレンデヴァーゲン のドイツ連邦軍 仕様であるヴォルフ(Wolf) との混用に注意する必要がある。
軽/中型汎用トラック(TUL/TUM)
ウルフは、ランドローバー・ディフェンダー の軍用としてイギリス国防省 に採用された。 Truck Utility Light or Truck Utility Medium (TUL/TUM, 軽汎用トラック または中型汎用トラック)High Specification (HS)として開発され、TULは、より短いホイールを使用するディフェンダー 90を、TUMは、ディフェンダー 110をベースとしている。ウルフは、様々な乗員、装備、通信および情報システムを搭載し、任務に就く指揮官 に従う。
ランドローバー ウルフには、防寒装備および水密性を備えたものもある。フロントガラスまでの水深でも走行可能にするシュノーケル の追加、エンジン を予熱させる流体エンジンヒーターの装備などの改修点により、車両や乗員は極限状態においても活動可能である。その他の改修点として熱帯環境での作戦のためのものがある。イギリス海兵隊 は強襲上陸作戦用の特殊深度走行型を運用している。潜望鏡 付きのシュノーケル、防水加工された電子システムおよび機器を装備し、グリースおよびグラファイト製管轄油をほぼすべての機構部に使用したこれらのバージョンは、必要時には完全防水装備の車両とともに行動可能である。後部ドアはストラトにより支えられており、水の流入を許すことにより車両が漂流されるのを妨げ、着岸直後には急速な排水が可能である。車両による上陸演習時においても、乗員の身体などが着水することはない。
HS/ウルフ計画と並行して、イギリス国防省はプロジェクト・パルスとして知られる新型戦場救急車 の開発計画を進めた。この計画においても、非常に長いホイールベースを持つディフェンダー 130により、ランドローバー 社が勝利した。しかし、マーシャル・エアロスペース 社製ボディーを持つ非公式なウルフ 130救急車両は、同じシャーシとトランスミッションのアップグレード、同一のドライブトレイン、同じディフェンダーがベース車体前部を使用している。
Weapons Mount Installation Kit
イラク に派遣された、イギリス陸軍 のWMIK
TUMの偵察 および近接火力支援 型として、WMIK (Weapons Mount Installation Kit)(発音:Wimik)がある。WMIKはランドローバー 社およびリカード (英語版 ) 社の共同で製造され、シャーシを強化、ロールケージとウエポン・マウント が追加された。一般に、12.7mm重機関銃 、7.62mm汎用機関銃 (L7A2 GPMG )もしくはミラン 対戦車ミサイル を後部リングマウント上に、前方助手席側のピントルマウントにGPMGを装備する。2006年 後半、イギリス国防省 は1.5 kmの射程を持ち毎分360発をに射撃可能なヘッケラー&コッホ 社製新型ベルト給弾式 軽オートマチックグレネードランチャー (ALGL)(H&K GMW )を40挺購入中であることをアナウンスした。これらはアフガニスタン に派遣されたWMIKに装備される。
この車両はイラク およびアフガニスタン での任務に就くイギリス軍 のシンボルとなった。ハーツ・アンド・マインズ哲学 (英語版 ) にあわせ、ウォーリア などの装甲戦闘車 などに代わり、警護任務に就いた。武力衝突の急増に伴い、乗員への過度の危険が懸念され、ヴェクター およびマスティフ 装甲警備車両 などの重装甲 車にて補われている。
ランドローバーは、イギリス 製の現用車両であるピンツガウアー (英語版 ) およびアルヴィス パンサーCLV により、多目もしくは連絡任務において補われ、WMIKの不足はMWMIK (英語版 ) によって補われている。大蔵省 が置き換えの費用をカバーすることを拒否し、イラクでの諸作戦が一旦完了されるならば、この装備のうち数両が原価より安値で売却される可能性を報道された[1] 。アフガニスタンにおいて、当車両は平均にして週に1台が喪失され、その代用の到着はしばしば遅延し、WMIK部隊のうち5分の1は、敵の攻撃によって大破ないしは破壊された[2] 。
運用
アフガニスタン、カンダハール空軍基地 付近で戦闘任務中の王立空軍連隊 のランドローバー(2010年1月2日)
ウルフの派生型は、カナダ およびアメリカ海兵隊 の要求に応じて提案されたが、いずれも選定されなかった。イタリア をはじめとする、各国で使用されているランドローバーの外形は、いずれも酷似している。しかし、それらのモデルはランドローバー・ディフェンダー をベースとしており、ウルフにて強化されたシャーシなどの特徴は引き継がれていない。現在、ウルフはクロアチア 、オランダ およびイギリス にて運用されている。
民間利用
ディフェンダー 110 ハードトップ・モデル
1998年 、ランドローバー・トランスグローバル・エクスペディションが企画され、それに合わせウルフ仕様のディフェンダー 110のハードトップ・モデルが製造された。
この車両はウインチ 、ルーフラック、ルーフテント 、ロールケージ などの探検装置を装備し、寒冷地仕様化された軍用型(24ボルトの電気回路、コンボイ照明装置、軍仕様エアインテーク 、内部絶縁およびウルフの標準シャーシとサスペンション のアップグレードを含む)を基本とした。水圧パワーテイクオフ システムも付された。その目的は双胴船のいかだでベーリング海峡 全域で車両を走行することだった[3] 。
その探検は計画されていた出発日の数日前にキャンセルされ、車両の大部分は一般向けの競売にかけられた。これらの特殊な車両(高レベルの設備を備える、トランスグローバルにより金色に塗装されるなど)は探検に最適であり、数両はランドローバーによるFifty 50チャレンジとローン・ウルフ・トランスグローバル・エクスペディション(Lone Wolf Transglobal Expedition)など、個人所有主の長期旅行にて使用された[4] 。
一部のウルフは、民間市場にて売買された。これらは事故などにより損壊したものを、新しい所有者たちの手により修理される事例の一つである。
2003年 、ドイツ政府 は保安および法務執行組織のための車両として、ランドローバー ウルフを発注した。この組織の輸送 手段は、ピックアップやバン、ステーションワゴンから成った。ボナッティグレーとルーフのみ白(最終バッチ車両は灰色)の塗装、電子機器 などは最低限とし、パワーウインドウやシートヒーター、レーダー 探知機などの奢侈品は撤去された。エンジン は12・24ボルトFFR、スタンダードTd5ターボディーゼルエンジン またはBMW 3Lユニットを搭載とした。2004年 後半、ドイツ政府は様々な形式で自国のゲレンデヴァーゲン を供給してきたメルセデス・ベンツ を発注先として指定、先の契約をキャンセルし、少数の最終バッチ車両は民間市場に輸入されすぐに売却された。
脚注
関連項目
外部リンク