ゲーム理論は、複数のプレイヤーが拘束力のある合意を結ぶ状況を扱う協力ゲーム理論(英: cooperative game theory)と個々のプレイヤーが独立に行動する状況を扱う非協力ゲーム理論(英: noncooperative game theory)とに分けられる[11]。両者の区別は以下の表によって要約される。
幅広いクラスのゲームを表現する際に用いられる方法として「戦略形」がある。戦略形ゲーム(英: games in strategic form)は (1) プレイヤーの集合 N := {1, ..., n}、(2) 各プレイヤー i ∈ N にとって選択可能な戦略の集合Si、(3) 各プレイヤーの利得関数[† 10]、の組 によって定義される[48][† 11]。なお、戦略集合の組 にはプレイヤー集合 N の情報が含まれているため、プレイヤー集合を明記せずに によって戦略形ゲームを定義する場合がある[50]。さらに戦略集合の組 は定義域として利得関数の組 にその情報が含まれているため、 によって戦略形ゲームを定義する場合もある[51]。
各プレイヤーが順番に意思決定を行う状況を含むゲームを表現する際にしばしば用いられる方法として「展開形」がある。展開形ゲーム(英: games in extensive form)は標準形ゲームに情報構造を加えたものである[34]。情報構造の定式化の方法はさまざまであるが、情報構造を導入することによって(1)各プレイヤーにいつ手番が回ってくるか、(2)自分の手番が回って来たとき各プレイヤーは何を知っているか、を指定することができる[55][14][† 13]。一つの定式化の方法としてゲームの木(英: game tree)が挙げられる。ゲームの木とは(グラフ理論でいう)「初期点を持つ有限有向木」であり、点(英: node)と枝(英: edge)から構成される[56]。展開形ゲームではゲームの木における頂点(英: terminal nodes)上に利得関数が定義され、手番(英: move)と呼ばれる頂点以外の点の分割としてプレイヤーや情報構造が定義され、枝として戦略が定義される[57][58]。
提携形
協力ゲームを表現する際にしばしば用いられる方法として「提携形」がある。提携形ゲーム(英: games in coalitional form)は(1)プレイヤーの集合 、(2)特性関数 によって定義される[59][† 14]。プレイヤー集合の部分集合 は提携(英: coalition)と呼ばれるが[† 8]、特性関数の値は任意の提携が提携に参加したプレイヤーにもたらす利得の総計として解釈される[61]。提携形ゲームは特性関数形ゲーム(英: games in characteristic function form)とも呼ばれる[61]。
ゲームの構成要素
ゲーム理論ではさまざまな現象や問題がゲームとして定式化されるが、ここでいうゲームとは1組のルール(英: a set of rules)のことを指す[62]。すべてのプレイヤーが他のすべてのプレイヤーもルールを完全に知っていることを相互に認識し合っているゲームを情報完備ゲーム[63]とか完備情報ゲーム[64](英: game with complete information)といい、情報完備ゲームのルールを共有知識(英: common knowledge)という[63]。他方、ルールがプレイヤー間で共有知識でないゲームを情報不完備ゲーム[63]とか不完備情報ゲーム[64](英: game with incomplete information)という。本節ではゲームを定義するルールの代表的な構成要素であるプレイヤー、戦略集合、利得関数、情報構造、特性関数について解説する。
展開形ゲームにおいてはゲームの木(英: game tree)を構成する手番(英: move)の「分割」としてプレイヤーが定義される[56]。展開形ゲームでは各手番において何れか1人のプレイヤーが選択をするが、手番の分割として定義されるプレイヤー分割(英: player partition)によって各手番においてどのプレイヤーが意思決定を行うのかが指定される。
戦略集合
戦略形ゲームにおいて戦略(英: strategy)とは各プレイヤーがとり得る選択肢を意味し、行動(英: action)と同義である[46]。プレイヤー i にとって選択可能な戦略の集合を i の戦略集合(英: strategy set)とか戦略空間(英: strategy space)と呼び Si などによって表すが、一般に戦略集合はプレイヤーごとに異なるため、 n 人ゲームでは n 個の戦略集合の組 を定義する必要がある[48][79]。戦略集合が有限であるようなゲームを有限ゲーム、そうでないゲームを無限ゲームという[80]。
上記の意味における戦略には純戦略(英: pure strategy)と混合戦略(英: mixed strategy)とがある。前者は確定的にある一つの行動を選択する戦略であり、後者はある確率分布に従って選択を行う戦略である[82]。例えば、右に掲げた双行列が示す2人有限ゲームはじゃんけんを表しているが、この「2人じゃんけんゲーム」における各プレイヤーの純戦略とは、「戦略グー」、「戦略チョキ」、「戦略パー」である。他方、この「2人じゃんけんゲーム」における各プレイヤーの混合戦略とは、例えば「戦略グー、チョキ、パーをそれぞれ3分の1の等確率で選択する」といったものである。戦略集合 Si の混合拡大 Qi は Si 上の確率分布として定義される[83]。
なお、戦略形ゲームにおいては各プレイヤーが選択した戦略の組がゲームの帰結を表すのに対して、展開形ゲームにおいてはゲームの木(英: game tree)を構成する頂点(英: terminal nodes)がゲームの帰結に相当する。そのため、展開形ゲームでは頂点の集合を定義域とする実数値関数として利得関数が定義される[92][93]。
非協力ゲームを展開形で表記する際に特有な構成要素として情報構造がある。情報構造はしばしば情報分割(英: information partition)と呼ばれる概念を用いて表現される。情報分割 はプレイヤー分割 の1つの細かな分割であり、プレイヤーi の情報分割 Ui に含まれる集合 u をプレイヤー i の情報集合(英: information set)と呼ぶ。すなわち、ゲームの中で情報集合 u に属する手番 x に到達したとき、プレイヤー i は情報集合 u に含まれるある手番に到達したことを知るが、情報集合 u に含まれるどの手番に到達したかは知らない。したがって情報集合の概念を用いることによって、各プレイヤーが各手番において何を知り何を知らないかを数学的に定義することが可能となる[95]。過去の手番で選択された戦略が全てのプレイヤーから知られているゲームを完全情報ゲーム(英: games with perfect information)と呼び、そうでないゲームを不完全情報ゲーム(英: games with imperfect information)と呼ぶ[96]。情報構造の詳細については展開形ゲームの項目を参照。
特性関数
プレイヤー集合 N の部分集合の集合2N 上に定義される実数値関数を特性関数(英: characteristic function)と呼ぶ[60]。各提携 S ⊆ N に対して v(S) は提携 S のメンバーが協力することによって得られる便益の総計を表している[60]。特性関数について仮定されることの多い性質として、優加法性(英: super-additivity)や凸性などが挙げられる[97]。特性関数はプレイヤー間での効用の譲渡が可能な提携形の協力ゲームを構成するルールである。特性関数の詳細については提携形ゲームおよび協力ゲームの項目を参照。
社会的遊戯(独: Gesellschaftsspiele)という表現は深い意味において重要である。人間の間の一切の相互作用形式、社会化形式—例えば、勝利への意志、交換、党派の形成、略奪の意志、偶然との邂逅や別離のチャンス、敵対関係と協力関係との交替、落し穴や復讐—これらは何れも、油断のならぬ現実では目的内容に満たされているのに、遊戯となるとこれらの機能そのものの魅力だけを基礎として生きて行く。なぜなら遊戯が賞金目当ての場合でも、お金は他の色々な方法でも獲得できるものなので、それは遊戯の眼目ではなく、むしろ本当の遊戯者から見れば、遊戯の魅力は社会学的に重要な活動形式そのものの活気や僥倖にある。社会的遊戯には、更に深い二重の意味がある。すなわち、それが実質的な参加者たる社会のうちで行われるという意味だけでなく、加えて、それによって実際に「社会」が「遊戯」になるということである。 — Simmel, G. (1917) Grundfragen der Soziologie(清水幾太郎訳 1979, p. 81)
また、2005年にノーベル経済学賞を受賞したトーマス・シェリングは、受賞の際に選考委員会から The "errant economist" (as Schelling has called himself) turned out to be a pre-eminent pathfinder. と紹介された。シェリングが errant economist を自称したのは当時支配的であった正統派経済学の道を歩まず異端派としての遍歴を重ねた実感からであり、同時にこれはシェリングのみならず多くの初期のゲーム理論家に共通する感情であった[148]。
ゲーム理論は誕生当初は「社会における合理的行動の数学理論」として研究されていており、新古典派経済理論と同様に合理性の仮定を採用していた[180]。これに対して、ハーバート・サイモンは1950年代に限定合理性(英: bounded rationality)の概念を提示し「効用最大化」に代わる「満足化」の原理を採用すべきと主張している[181]。サイモンの提唱した限定合理性アプローチは多くの研究者にその重要性を認められたものの、サイモンの主張の多くは単なる研究方針に過ぎず具体的な枠組みを示したものではなかったため当時の経済学者やゲーム理論家からは「定理なき理論」(英: a theory without theorems[182])と見なされ、研究の主流になることはなかった[183]。しかし、1980年代後半から1990年代にかけて、経済学やゲーム理論は伝統的な合理性の仮定を緩和し現実の人間が持つ人間的な合理性(英: human rationality)の研究を本格的に開始することとなる[183]。
新古典派経済学が「合理的で利己的な経済人(ホモエコノミカス)」としての人間行動を前提としていたのに対して、1990年以降、仮定をより現実的な人間像に近づけることによって理論の説明や予測の精度を高めようとする試みである、実験経済学と行動経済学が台頭した[184]。こうした学説史上の現象の一因として、経済学におけるゲーム理論の定着が挙げられる[185]。伝統的な経済学は大規模な市場に関する分析しかしていなかったため実験の利用可能性が大きく制限されていたのに対して、ゲーム理論は少数のプレイヤーが戦略的に行動する問題を分析していたため理論予測を実験で直接検証することが可能であった[† 39]。ゲーム理論の実験は1950年代にメリル・フラッドとメルヴィン・フィッシャー[186]の「囚人のジレンマ」の実験によって創始され、その後も「最後通牒ゲーム」の実験や「独裁者ゲーム」の実験などさまざまな研究が行われてきたが、フラッドらによる黎明期の実験から近年の実験まで一貫して自己利得最大化と整合的理論形成を基礎とする個人の合理性だけでは説明できない実験結果が観察されている[187][† 40]。こうして行われた教室実験によって蓄積された現実の人間行動と理論的予測の乖離を示すデータによって行動経済学(英: behavioral economics)と呼ばれる分野が登場した[185]。行動経済学では、新古典派に代表される伝統的経済学の前提から現実の人間の行動がどのように乖離しているのかを明らかにし、数学的な理論によって定式化される[189]。この行動経済学の観点から限定合理性の理論、学習理論、公平性や互恵性の理論などを研究するゲーム理論の分野は特に行動ゲーム理論(英: behavioral game theory)と呼ばれる[190]。
このように現実の人間はしばしば論理的整合性を欠いた行動をとるが、合理性の仮定に基づく理論モデルが現実の人間社会を説明する上で全く役に立たない訳ではない。合理性の仮定に基づく理論モデルをベンチマークとして構築・活用するアプローチは一般に方法論的合理主義(英: methodological rationalism)と呼ばれるが[191]、伝統的な合理性の概念はサイモンによって提唱された限定合理性とも整合的である[192][† 41]。例えばRust 1987の研究によれば、米国ウィスコンシン州のベテラン技師Harold Zurcherがあたかも複雑な確率的動学的最適化問題を解いて行動しているかのように合理的なタイミングでエンジンを交換していたことが確認されている[194]。さらに、人間の行動だけでなく動物や植物の行動や進化も合理性を前提としたモデルによって予測・説明され得る。数理生物学者のジョン・メイナード・スミスらによって創始された進化ゲーム理論(英: evolutionary game theory)は、理性的思考を持たない生物社会をゲーム理論の枠組みによって分析するが、思考を持つはずのない植物ですらあたかも合理的計算をしているかのように進化や行動をしていることが確認されており[† 42]、限定合理性アプローチを志向する経済学者にも大きなインパクトを与えた。進化ゲームは生物学から社会科学へと逆輸入され、プレイヤーの学習、模倣や世代間教育、文化継承などを表現するモデルとして経済学や社会学などの社会科学諸分野にも応用されている[195]。
ゲーム理論が誕生する遥か昔からゲームに関する研究は連綿と行われていた。狩りや耕作の収穫を祈るために、古代社会においてはサイコロやクジを用いた占術が洋の東西を問わず広く行われており、それらに関する逸話は『旧約聖書』や『魏志倭人伝』にも見ることができる[227]。このような、他者の戦略が問題とされないようなゲームは「偶然ゲーム(英: games of chance)」と呼ばれるが、偶然ゲームに関する研究はクラウディウス (BC10 - AD54) の『サイコロで勝つ方法』やスエトニュウス (AD69 - AD141)の『ローマ諸皇帝の生涯』にまで遡ることができる[228]。
ゲームの研究は確率論が誕生した17世紀に大きく進展した。17世紀には、ガリレオ・ガリレイが著書『ダイス・ゲームに関する考察』(1613 - 1623) の中で効用概念について先駆的研究をしている[229]。また、ブレーズ・パスカルはピエール・ド・フェルマーとの往復書簡 (1654年) の中で数学的期待値を最大化する戦略を論じている[229]。これらはいずれも偶然ゲームの研究であり、他者の戦略は問題とされていなかった。17世紀後半になると、微分積分学の創始者としても知られるドイツの哲学者ゴットフリート・ライプニッツによって初めて確率のみに決定されないゲームが研究された[226]。ライプニッツによって分析された、ボードゲームのような相手の戦略が問題となるようなゲームは、偶然ゲームと区別して「技術のゲーム (英: games of skill)」と呼ばれる。確率論が偶然ゲームの考察から誕生したのに対して、ゲーム理論は技術のゲームから誕生したと言える[230]。17世紀から18世紀にかけては、イギリスのJames Waldegrave (1684 - 1741) がフランスのPierre Remond de Montmort (1678 - 1719) への書簡の中で混合戦略とミニマックス原理のアイデアを論じている[231][† 47]。
18世紀にはイギリスの哲学者デイヴィッド・ヒュームが著書『人性論』(1739年)において国民が私的な動機にしか反応しない場合に公的資源が過剰に使用されることを示唆している。このヒュームの思想は、1968年にアメリカの生物学者ギャレット・ハーディンが雑誌『サイエンス』上に論文 "The Tragedy of the Commons" を発表したことにより広く認知されるようになり、ヒュームの指摘した現象は現代のゲーム理論では「共有地の悲劇」として定式化されている[234]。また18世紀中葉には、アダム・スミスが著書『道徳情操論』(1759年) の中で人間社会を「偉大なるチェス盤」に喩え、「人間社会のゲーム (英: the game of human society)」が成功するための条件を論じている[1]。
19世紀には、フランスの経済学者アントワーヌ・オーギュスタン・クールノーが1838年に発表した論文『富の理論の数学的原理に関する研究』(仏: Recherches sur les principes mathématiques de la théorie des richesses)において寡占市場のナッシュ均衡を分析した[235]。この枠組みは今日ではクールノー・ゲームと呼ばれている。特殊な複占モデルであったとはいえ、クールノーはナッシュ均衡の定義をゲーム理論成立の一世紀以上前に先触れしており、このクールノーの業績はゲーム理論の古典の一つとして数えられ、同時に、産業組織論の一つの基礎ともなっている[236]。クールノーが生産量を「戦略」と解釈して寡占市場を分析したのに対し、ジョゼフ・ベルトランは1883年に発表された論文 "Théorie Mathématique de la Richesse Sociale" において価格が「戦略」であるモデルを分析している[237][† 48]。
20世紀初頭には、ドイツの数学者エルンスト・ツェルメロが「チェスの理論への集合論の応用について」 (独: Uber eine Anwendung der Mengenlehre auf die Theorie des Schachspiels) (1913年)という論文中でチェスのように単純なゲームを分析しており、「ツェルメロの定理」でその名が知られる[239][† 49][† 50]。1920年代にはフランスの数学者エミール・ボレルが三つの論文Borel 1921、Borel 1924、Borel 1927の中でWaldegraveが200年以上前に論じていた混合戦略とミニマックス解を初めて厳密な数学的手法によって分析しようと試みた。ただしボレルは非常に単純なケースのみを分析しており、戦略集合が一般的なケースではミニマックス解が存在しないと予想していたが、この予想は後にフォン・ノイマンによって否定的に証明されている[242]。
「社会的ゲームの理論について」(1928年)
ゲーム理論はフォン・ノイマンとモルゲンシュテルンの大著『ゲームの理論と経済行動』が1944年に出版されることによって誕生したとされるのが一般的であるが、その数学的基礎はフォン・ノイマンが1928年に発表した論文「社会的ゲームの理論について」(独: Zur Theorie der Gesellschsftsspiele[244]) から始まる[1]。この論文では、ゼロ和2人ゲームのミニマックス定理が区間 [0, 1] で定義された点対集合写像の不動点定理を用いて証明されると同時に戦略形 n 人ゲームと戦略の定式化、提携とマックスミニ値を用いたゼロ和3人ゲームの分析など、現代のゲーム理論の基本概念と分析方法が提示されている[† 51]。
オーストリア学派の経済学者オスカー・モルゲンシュテルンは1928年に刊行した著書『経済予測—仮定とその可能性についての考察』においてフォン・ノイマンとは独立に、経済学におけるゲーム的状況の重要性を論じていた。この著書の中でモルゲンシュテルンは、経済主体が他の主体の決定を反映していない「死んだ」変数とそうでない「生きた」変数の二種類の変数に直面していることを明らかにし、現実の経済にとって後者がより重要であること、さらに従来の経済理論が「死んだ」変数しか扱えないことなどを指摘していた[248]。さらに、モルゲンシュテルンは1935年に発表した論文「完全予見と経済均衡(独: "Volkkommence Voraussicht und Wirtschsftliches Gleichgewicht")」で当時の思想界から高い評価を受けたが、それをカール・メンガーの主催するコロキアムで報告した際に数学者チェクからモルゲンシュテルンの扱っている問題がフォン・ノイマンの「社会的ゲームについて」で扱われている問題と同じであることを教えてもらった[249]。当時、モルゲンシュテルンはウィーン景気循環研究所の所長であり、現実経済の研究で忙しくゲーム理論の研究には取り組めていなかったが[249]、1938年のナチス侵攻が原因で研究所所長を解雇されるとモルゲンシュテルンはフォン・ノイマンとの共同研究を期待してプリンストンに移住した[250]。モルゲンシュテルンはプリンストン大学に赴任した1939年2月1日には同僚のフォン・ノイマンやニールス・ボーアと数時間に渡ってゲームや実験に関する議論をした[251][252]。やがてモルゲンシュテルンは経済学への応用を念頭にゲーム理論を体系化した論文の草稿「ゲームの理論と経済行動」をフォン・ノイマンに見せるが、フォン・ノイマンは「短すぎてわかりにくい」とコメントし、「この論文を共同で書こう」と提案してきたという[253]。1940年の秋頃、フォン・ノイマンはこの論文は雑誌論文としては長すぎるので分割して発表しようと提案したが、執筆する内にますます文量が増え、独立した100頁の書籍として出版することがプリンストン大学出版局との間で契約された[254]。執筆途中にモルゲンシュテルンがボレルの編著『確率の計算とその応用』(1938年)に収められたジェーン・ヴィルの論文「ゲームの一般理論とプレイヤーの技能について」を偶然読んだことが契機となり、ブラウワーの不動点定理ではなく凸集合の分離定理を用いること着想し、プリンストン高等研究所におけるフォン・ノイマンの部下であった角谷静夫に補題を証明させ、それを用いてミニマックス定理を証明した[213]。このとき角谷によって証明された補題は「角谷の不動点定理」として知られている。1942年のクリスマスにフォン・ノイマンが軍事出張のワシントンからプリンストンに帰った際に最後の数頁が書き終わり、1943年1月1日に序文が書かれ、予定の100頁をはるかに超える1200頁の大著『ゲームの理論と経済行動』(英: Theory of Games and Economic Behavior、略称: TGEB[233])が完成した[255][256][† 52]。この大著は角谷静夫の校正を経て1944年1月18日に出版された[258]。フォン・ノイマンが著者名の掲載順を通例に従いアルファベット順にしようと提案していたが、モルゲンシュテルンはそれを拒否したため、von Neumann and Oskar Morgenstern という掲載順で出版に至った[259]。
教育界では1952年に MacKinsey が Introduction to the Theory of Games という教科書を出版しており、学生でも容易にゲーム理論を学習することのできる環境が整備された。ただしこの教科書の大部分はゼロ和二人ゲームであり、協力ゲームについての解説は少なく、非協力ゲームに関しては懐疑的な記述が見られる[289]。日本においては興津洋一による翻訳が1961年に出版されている[290]。
1971年にはモルゲンシュテルンの尽力によって初のゲーム理論専門誌 International Journal of Game Theory が発刊され、ゲーム理論が一つの専門分野として国際的に認知されるようになった[300]。1970年代のゲーム理論研究は展開形非協力ゲームへの関心が高く、1967年に発表されたゼルテンの論文で提唱された不完備情報ゲームの研究が進められた。1974年9月2日から17日間に渡って開かれたゼルテン主催のゲーム理論ワークショップで初めてチェーンストア・パラドックスが報告され、それ以来部分ゲーム完全均衡、限定合理性、展開形ゲームの戦略形への変換などといったテーマが盛んに研究されるようになった[301]。
1981年に出版されたニューヨーク大学ショッター教授の著書 The Economic Theory of Social Institutions を皮切りに、ゲーム理論を用いた社会制度の研究が盛んに行われるようになる。スタンフォード大学の青木昌彦教授は The Co-operative Game Theory of The Firm (1984年) においてゲーム理論を応用した「比較制度分析」と呼ばれる分析手法を確立した[317]。さらに、ダグラス・ノース(1993年ノーベル賞受賞)らを中心として制度をゲームのルールとみなした経済史研究も行われるようになった(新経済史学派)。
1980年代中頃からは、環境問題のゲーム理論による研究も盛んになり、それら研究は Valuation Method and Policy Making in Environmental Economics (1989年) やGame Theory and the Environment (1998年) といった論文集にまとめられている[326]。
経営学の分野では1981年に Competitive Strategies: An Advanced Textbook in Game Theory for Buisiness Studies という教科書が出版されて以来[327]、積極的にゲーム理論が研究に応用されるようになった。また、1980年代にはジャン・ティロル (2014年ノーベル賞受賞) によってゲーム理論が産業組織論に応用されるようになり、ゲーム理論の教育や研究を行う経営学や商学関連の研究者も増えてきた。これらの分野は「企業経済学」、「組織の経済学」等と呼ばれることもある[328]。
1980年代に非協力ゲームが急速に発展し、協力ゲームを中心とした従来のゲーム理論が扱うことのできなかった経済学、政治学、オペレーションズ・リサーチ、哲学、社会学、心理学、生物学といったさまざまな分野に非協力ゲーム理論が応用されるようになり、ゲーム理論の学際的な基礎理論として重要性が一層多くの研究者に認識されるようになった。こうしたゲーム理論の発展を背景として、1987年10月1日から1988年8月31日までの期間、西ドイツBielefeld大学のZentrum für interdisziplinäre Forschungにおいて学際研究プロジェクト「行動科学におけるゲーム理論」が開催された[34]。このプロジェクトはボン大学のゼルテンを中心に企画され、西ドイツ、ベルギー、イギリス、イタリア、スイス、オーストリア、イスラエル、アメリカ、カナダ、日本などから約50名の研究者が招聘され、非協力ゲームによってさまざまな分野が学際的に研究された[34]。
1990年代
1990年代になると、行動の進化や学習の研究のほかに、理論を実験によって検証し実証データに基づく新しい行動理論に構築を目指す行動ゲーム理論 (英: behavioral game theory) の分野が誕生した[314]。ゲームの実験研究の目的は単に理論の検定だけでなく、理論と観察の不一致の原因と考えられる人間の動機、認知および推論の心理的要因や社会的要因を組み入れた新しいゲーム理論を構築することであり、伝統的なゲーム理論の分析では不十分であった現実の人間行動に関する重要な特性が明らかになっていった[330]。
1999年1月1日にはGame Theory Societyというゲーム理論を専門とした史上初の国際学会が発足し、日本からは奥野正寛東京大学教授が executive committee として参加した。当学会は International Journal of Game Theory および Games and Economic Behavior というゲーム理論研究の学術誌を発行している[334]。
この他の2000年以降に進展した学際交流として、量子ゲーム理論(英: quantum game theory)がある。1998年にカリフォルニア大学サンディエゴ校の物理学者ディヴィッド・マイヤーがマイクロソフトに招待されて量子計算について講演を行った際に、量子物理学でいう「混合状態」にある多元的現実の概念をゲーム理論に導入する、というアイデアを紹介した[352]。マイヤーのこのアイデアを元にした研究論文が1999年に『フィジカル・レビュー・レターズ』上に掲載されて以降、数学者や物理学者たちが数十本の量子ゲームに関する論文を公刊しており、量子的公共財ゲームや量子情報を用いた組み合わせオークションの運営などが分析されている[353]。
『ゲームの理論と経済行動』を執筆していた1940年頃、フォン・ノイマンらは凸集合の分離定理を用いたミニマックス定理の証明を着想したが、当時の数学は彼らの要請には不十分なものであった。そこで、フォン・ノイマンは当時プリンストン高等研究所に勤務していた日本人数学者角谷静夫に凸集合を用いて一般化されたブラウワーの不動点定理を証明するよう命令し、角谷は1941年に発表した論文 "A generalization of Brouwer's fixed point theorem" においてそれを証明した[213]。
この定理は多値関数に適用するのに非常に適切な形をしており、その後今日まで多くの分野で用いられるようになり、「角谷の不動点定理」として広く知られるようになった[213]。特に、Nash 1950が n 人ゲームのナッシュ均衡の存在を証明するために角谷の不動点を用いたことは有名である[355]。また、1954年にはライオネル・マッケンジーがアロー=ドブルーとは独立に角谷の不動点定理を用いて一般均衡の存在定理を証明している[356][† 58]。
角谷は論文中で自らの不動点定理の応用例として2人ゼロ和ゲームのミニマックス定理を証明しているが、その証明において各プレイヤーが相手の混合戦略に対して最適な混合戦略を選択することが明示的に仮定されている。このことに対して、ハロルド・クーンはジョン・ナッシュの論文集の「解説」の中で「もし角谷静夫が n 人ゲームについて考察を行っていたなら、彼がナッシュ均衡の存在を示してしまっていたであろう」と評価している[357]。
東京工業大学を中心とした1970年代における日本人経済学者の特筆すべき貢献として、中村健二郎の研究が挙げられる。中村は鈴木光男によるゲーム理論の講義が始まった1967年に東京工業大学理学部数学科に進学し[† 64]、1969年から鈴木研究室に所属してゲーム理論の研究を始めた。中村は理学部数学科および大学院理工学研究科数学専攻に所属していたが、当時の東京工業大学には所属学科に関係なく自分の希望する研究室で研究できる制度があったため、中村は鈴木研究室の第一期生として林亜夫や中山幹夫らとともに活躍した[373]。中村は70年代の一連の論文[374][375][376]において社会的選択関数(英: social choice function)が存在するための必要十分条件が
ナッシュが論文"Equilibrium Points in n-Person Games"を刊行。非協力ゲームにおけるナッシュ均衡が定義され、一般のケースにおけるナッシュ均衡の存在が証明された。
ナッシュが論文 "The Bargaining Problem" を刊行。交渉問題に先鞭がつけられる。 クーンが論文"Extensive games"を発表。
クーンとタッカーによる編著書Contributions to the Theory of Games vol. 1が出版。
山田雄三が論文「ミニマックス原則の要点」を発表。日本の学界に初めてゲーム理論が伝えられる[359]。
オーマンが論文 "The core of a cooperative games without side payment" を発表。
ハルサニが論文 "Rationality postulates for bargaining solutions in cooperative and in non-cooperative games" を発表。
Lewontinが生物学の学術誌上に論文 "Evolution and the theory of games" を発表。 10月5日からの三日間、プリンストン大学でゲーム理論のコンファレンスが開催。オーマンらにより交渉集合が提唱される。
デーヴィスとマシュラーが共著論文 "The kernel of a cooperative game" を発表。協力ゲームの解概念としてカーネル(英: kernel)が提唱される。
アイザックが著書 Differential Games: A Mathematical Theory with Applications to Warfare and Pursuit, Control and Optimization を刊行。微分ゲーム理論(英: differential game theory)が誕生。
ハルサニが論文 "Can the maximin principle serve as a basis for morality?" を発表。
ゼルテンが論文 "Reexamination of the perfectness concept for equilibrium points in extensive games" を発表[409]
ハルサニが著書 Essays on Ethics, Social Behaviour, and Scientific Explanation を刊行。
レヴィスが著書 Convention: A Philosophical Study を刊行。
オーマンが論文 "Agreeing to disagree" を発表[410]。
ハルサニが著書 Rational Behavior and Bargaining Equilibrium in Games and Social Situations を刊行。
HennとMoescchlinによる編著書 Mathematical Economics and Game Theory: Essays in Honor of Oskar Morgenstern を刊行。[409]
メイナード・スミスが著書 Evolution and the Theory of Games を刊行。これにより進化ゲーム理論が広まる。
センが著書 Choice, Welfare and Measurement を刊行。1989年には『合理的な愚か者』という邦題で日本語訳版も出版されている。
シュービックが著書 Game Theory in the Social Science を刊行。
サイモンが著書 Models of Bounded Rationality を刊行。 鈴村興太郎が著書『経済計画理論』を刊行。
オーマンとマシュラーが共著論文 "Game theoretic analysis of a bankruptcy problem from the Talmud" を発表。銀行の破綻処理問題にゲーム理論が応用される。
ブキャナンが論文 "Some extensions of a claim of Aumann in an axiomatic model of knowledge" を発表。
ブレナンとブキャナンが共著書 The Reason of Rules: Constitutional Political Economy を刊行。立憲主義がゲーム理論的に分析される。
ハーヴィッツらが共編著書 Social Goals and Social Organization: Essays in Memory of Elisha Pazner を刊行。 ロスが著書 Game-Theoretic Models of Bargaining を刊行。
ビンモアが論文 "Modeling rational players" を刊行。
ハーンが編著書 The Economics of Missing Markets, Information, and Games を刊行。1970年代に誕生した「情報の経済学」の論文集。 岡田章が論文 "Complete inflation and perfect recall in extensive games" を発表。
ティロルが著書 The Theory of Industrial Organization を刊行。ゲーム理論が応用された「新産業組織論」の教科書。
ハルサニとゼルテンが共著書 A General Theory of Equilibrium Selection in Games を刊行。
ハートとムーアが共著論文 "Incomplete contracts and renegotiation" を発表。不完備契約の先駆的研究。
青木昌彦が著書『日本経済の制度分析:情報・インセンティブ・交渉ゲーム』を刊行。
ギボンズが教科書 Game Theory for Applied Economists を刊行。1995年には『経済学のためのゲーム理論入門』という邦題で日本語訳版が出版されている。
オーマンとハートによる共編著書 Handbook of Game Theory with Economic Applications の第1巻が刊行。
ミルグロムとロバーツによる共著書 Economics, Organization and Management を刊行。1997年には『組織の経済学』という邦題で日本語訳が出版されている。
ゼルテンが共編著書 Rational Interaction: Essays in Honor or John C. Harsanyi を刊行。
ロスが論文 "A theory of partnership dynamics" を発表。
Dimand が著書 The History of Game Theory, Volume 1: From the Beginning to 1945 を刊行。
岡田章が著書『ゲーム理論』を刊行[† 66]。
青木昌彦と奥野正寛が共編著書『経済システムの比較制度分析』を刊行。 松井彰彦が論文 "On Cultural Evolution: Social Norms, Rational Behavior, and Evolutionary Game Theory" を発表。
逆説的と思えるが、ゲーム理論はそれが最初めざしていた経済行動の分野よりも、生物学の方にずっとうまく応用できることが分かってきたからである。それには理由が二つある。一つは様々な結果の価値(例えば、経済的な報酬、死の危険性、良心のとがめを受けない喜びなど)を一元的な尺度で測ることが理論にとって必要となっていることである。人間に応用する際には、この尺度として「効用」という幾分人工的で心地のよくない概念が用いられている。それに対して生物学では、ダーウィンの適応度が自然で正真正銘の一元的な尺度となっている。二つめは、より重要であるが、ゲームの解を求める際に、人間の合理性という概念が、進化的な安定性という概念に置き換えられることである。このことの利点はこうである。生物の集団が安定的な状態に進化すると期待するのは理論的に十分根拠のあることであるのに対し、人間が常に合理的に行動するかどうかは疑問の余地がある。 — John Maynard-Smith (1982) Evolution and the Theory of Games[421]
政治学者のスティーブン・ブラームスは1980年に出版された著書 Biblical Games において旧約聖書の中のさまざまな物語を読み解き、神の啓示とは何か、信仰とは何か、人はなぜ争うのかなどの旧約聖書のエッセンスの解明を試みている。ブラームスが用いたのは非協力ゲーム理論であり、その多くは2人のプレイヤーが2つの戦略を持つ2段階完全情報ゲームであり、さらにそれよりも大きなゲームは展開形として説明されている。本書においてブラームスはゲーム理論を通じてユダヤ・キリスト教文化の基本的性格についての深い示唆を与えたと評価されている[412]。
また、オーマンとシュマイドラーは1985年に発表した "Game theoretic analysis of bankruptcy problem from the Talmud" という論文において、ユダヤ教の教典『バビロニア・タルムード』に登場する破産問題を協力ゲーム理論によって分析している。問題となった『バビロニア・タルムード』の記述は以下のように要約される(金銭の単位は円に変更してある)[423]。 「ある人が亡くなり、100万円の遺産が残された。この人は、生前、3人の相続者A、B、Cにそれぞれ100万円、200万円、300万円の遺贈をすることを約束していた。遺産の額が不足してしまった訳であるが、この場合には、100万円を三等分して100/3万円ずつ3人で分ける。もし、200万円の遺産が残った場合には、Aには50万円、BとCにはそれぞれ75万円ずつ分ける。もし300万円の遺産が残った場合には、A、B、Cにそれぞれ50万円、100万円、150万円を分ける。」 遺産の総額が100万円の場合は均等分配、300万円の場合は比例分配である一方で200万円の場合の分配の基準が直観的には理解しがたく、この『バビロニア・タルムード』の記述は永らくユダヤ人たちを悩ませてきたが、オーマンとシュマイドラーはこの分配方法が協力ゲーム理論の「仁」という解概念によって説明できることを明らかにしたのである[423]。その概要は、以下の通りである。すなわち、財産総額を E, 債権者の集合を N = {1, 2, …, n} とし各債権者 i の債権額を di とすると、E,d1,d2, …, dn は全て正値であり、E < d1 + d2 + ⋯ + dn が仮定される。また、任意の提携 S ∈ N に対する特性関数v を と定義すれば、この特性関数 v の値は提携 S が獲得可能な遺産の総額と解釈できる。n = 3 として E = 100, 200, 300 それぞれの場合の v の仁を計算すると、それぞれ (100/3, 100/3, 100/3), (50, 75, 75), (50, 100, 150) となり、『バビロニア・タルムード』の記述が協力ゲームの仁と一致していることが確認できる[424]。
戦後先進諸国の独占禁止政策に大きな足跡を遺した経済学は「伝統的産業組織論(英: Old Industrial Organization Theory)」と呼ばれ、その内部では「ハーバード学派(英: Harvard School)」と「シカゴ学派(英: Chicago School)」が互いに拮抗していた[445]。
これらに対して、1970年代にハーバード学派でもシカゴ学派でもない産業組織論の第三の潮流である「新しい産業組織論(英: New Industrial Organization Theory)」が誕生した。伝統的産業組織論は完全競争モデルと独占モデルの域を出ない素朴な理論的枠組みを用いていたのに対して、新産業組織論は「ゲーム理論の静かな革命」の中で完成されたゲーム理論的手法を駆使することによって寡占市場をミクロ経済学的に分析することを可能にした[445]。
ケネス・アローとジェラール・ドブルーは一般均衡理論を精緻化した業績によりそれぞれノーベル経済学賞を受賞した。完全競争市場を分析対象とする一般均衡理論はゲーム理論が登場する以前の数理経済学の主流なパラダイムであったが、1954年に発表されたアローとドブルーの共著論文 "Existence of an equilibrium for a competitive economy" においてナッシュ均衡の存在定理を応用して完全競争市場の一般均衡の存在を証明した。一般均衡理論の批判として登場したゲーム理論の一般均衡理論への貢献は逆説的であったが、彼らの研究はゲーム理論の力を示すものとして受け入れられた[22]。
ジェームズ・ブキャナンは1986年に「公共選択の理論における契約・憲法面での基礎を築いたこと[454]」を称えられてノーベル経済学賞を受賞した。ブキャナンは1962年に出版されたゴードン・タロックとの共著書 "The Calculus of Consent: Logical Foundations of Constitutional Democracy" において既に官僚、政党、投票者といった政治的な意思決定主体をゲーム理論の枠組みを用いて分析していた[297]。ブキャナンは一貫して方法論的個人主義に立脚し、各個人のレベルを意思決定主体(プレイヤー)とみなすことによって政策立案や官僚機構といった政治プロセスそのものをミクロ経済学ないしゲーム理論の枠組みで分析する方法論を確立した[455]。これは、現代さかんに研究されている比較制度分析のような制度それ自体を対象とした経済学的分析の先駆的な研究であり、同時に個人選好をいかなる集合的意思決定に結びつけるのかを問う試みでもあった[455]。ブキャナンによって創始されたこの「公共選択」と呼ばれる分野は1970年代までは学術誌Public Choiceを牙城とするバージニア学派の一連の研究を指すに留まっていたが、1980年代後半以降の非協力ゲーム理論の発展に伴って公共選択の研究は学派の枠を超えて活発に進められるようになった[456]。現在では動学ゲームや不完備情報ゲームといった新しい非協力ゲーム理論の分析手法が公共選択の研究にも取り入れられ、目覚ましい学術的成果を生み出し、現実の政策形成に一定の説明力を発揮するまでに至っている[329]。
ロナルド・コースは「制度上の構造と経済機能における取引コストと財産権の発見と明確化[297]」を称えられて1991年にノーベル経済学賞を受賞した。コースは1937年の論文 "The nature of firm" において企業組織内の資源配分を分析する上での取引コストの重要性を指摘した。この指摘は、1980年代に日本経済が欧米の地位を揺るがすようになって「日本型経営」が注目されるに至ると現実に経済全体のパフォーマンスを左右する重要な要因として強く意識されるようになり、ゲーム理論によって分析されるようになった[458]。コースは自由放任主義によってパレート効率的な配分が実現されるためには交渉費用などの取引コストが十分に小さい必要があることを指摘したが(コースの定理)、ゲーム理論はコースによって漠然と指摘された自由放任主義の限界を体系的・統一的に示すことに成功したと評価されている[459][460]。
Some recent theoritical models of repeated situations do predict that individuals will adopt contingent strategies to generate optimal equilibria without external enforcement, but with very specific information requirements rarely found in field settings.[† 73]
^アメリカ経済学会が出版する Journal of Economic Literature において採用されているJEL分類コードによれば、ゲーム理論は「交渉理論」(英: bargaining theory)と並んでC7に分類されている[4]。
^
『ゲームの理論と経済行動』が出版された1944年にゲーム理論が誕生したとする見解
[5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15]
が一般的である一方で、1928年にゲーム理論が誕生したとする見方もある[16][17]。1928年は、フォン・ノイマンが論文「社会的ゲームについて(独: "Zur Theorie der Gesellschaftsspiele")」を発表し、モルゲンシュテルンが著書『経済予見ー仮定とその可能性についての考察(独: Eine untersuchung ihre Voraussetzungen und Moglichkeiten)』を刊行した年である。例えば、酒井泰弘(滋賀大学名誉教授・経済学説史家)は、ゲーム理論が「1928年に、二人独自の研究によって誕生し、1944年出版の共著『ゲーム理論と経済行動』によって確立した[18]」としている。
^
ゲーム理論のルーツについては、フォン・ノイマンらに始まる協力ゲーム(提携とコアの理論)、ジョン・ナッシュに始まる協力ゲーム(交渉の理論)、ナッシュに始まる非協力ゲーム理論(均衡の理論)の3流派に分けて論じられることもあり、今日「ゲーム理論」と言えばナッシュの「非協力ゲーム」を指す場合がほとんどである[19]。しかし、数学者であるLuce & Tucker 1959はPrefaceでフォン・ノイマンをcreator of the Theory of Gamesと評しており、また、マイヤーソン(2007年ノーベル賞受賞者)はフォン・ノイマンらをゲーム理論の先駆者としている一方でナッシュを「中興の祖」として位置付けている[20]。このように、ナッシュがゲーム理論の創始者とされることは稀である[21]。
^「戦略的状況」はゲーム的状況(英: game situations)[6]や戦略的環境(英: strategic environment)[26]と呼ばれることもある。
^なお、戦略の組に対してではなく帰結に対して利得関数が定義される場合もある。例えば寡占市場を分析する際、プレイヤーは企業、戦略は価格であるが、企業にとっての利得は価格ベクトルではなく利潤に対して定義されると解釈するのが自然である[88]。このようなケースでは、戦略の組から帰結への関数 を定義し、帰結の集合 C 上の実数値関数として利得関数が定義される[88]。
^なお、ゲーム理論ではしばしば、n 人ゲームの戦略の組 の第 i 成分を除いた戦略の組 を s−i で表す[102]。これはプレイヤー i 以外の n − 1 人のプレイヤーの戦略の組を意味している。この記号法は、 といった具合に用いられる。本記事でも解概念を解説するにあたってこの記号法を用いている。
^ハルサニの理論ではこれに加えて各プレイヤーの主観的確率分布の族が適当な同時確率分布と整合的であることが仮定される[126]。これは、各プレイヤーの知らないタイプが偶然手番によって決定され、「情報を知らない」プレイヤーは偶然手番によってタイプが確定する以前の共有事前確率(英: common propor)に基づいて期待利得が計算されると考えられる[127]。
^契約理論の基本モデルは展開形ゲームのサブゲーム完全均衡やベイズ完全均衡に対応するため、契約理論はゲーム理論の一分野とみなされることがある。しかし、契約理論はゲーム理論的な均衡概念を明示せずに価格理論的な条件付き最適化問題としてモデルを分析しており、さらに価格理論やゲーム理論がカバーしていない特有の概念や解法を有しているため、JEL分類コードのカテゴリーにおいても2005年6月からD86(Economics of Contracts)という独立した項目が設けられている[177]。
^一般に、集合X から X 自身への写像f: X → X について x = f(x) を満たす x ∈ X を写像 f の不動点と呼び、特定の条件の下で不動点の存在を保証する定理を総称して不動点定理と呼ぶ[211]。したがって、最適反応関数が不動点定理の条件を満たすことは、均衡が存在することを意味する。
^Waldegraveによるこの論考は、"Minimax solution of a 2-person, zero-sum game, reported in a letter from P. de Montmort to N. Bernouilli, transl. and with comments by H. W. Kuhn" という名が付けられ、1968年に出版された論文集[232]に掲載されている[233]。
^伊藤秀史の指摘によれば、この「契約理論」という呼称はエコノメトリック・ソサイエティの第5回世界大会(1985年)においてハートとホルムストロムが"The Theory of Contracts"というタイトルの招待講演を行ったのが最初の事例であり、それが影響で「契約理論」という呼称が広まったとされている[177]。
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