ジャック・フランソワ・アントワーヌ・イベール(Jacques François Antoine Ibert, 1890年8月15日 - 1962年2月5日)は、フランスの作曲家。しばしばその作風は、軽妙、洒脱、新鮮、洗練などと言った言葉で評される。
来歴
イベールはパリで生まれた。1910年、パリ音楽院に入学[1]。アンドレ・ジェダルジュの対位法講義では「フランス6人組」のダリウス・ミヨーやアルチュール・オネゲルと同窓であった。第一次世界大戦中は海軍士官として従軍。1914年に音楽院を卒業し、5年後の1919年、カンタータ『詩人と妖精Le poète et la fée』にてローマ大賞を受賞した。1923年まで3年間ローマに留学、『寄港地』などを作曲した。1937年から1960年まで(第二次世界大戦中を除く)在ローマ・フランス・アカデミーの館長だった[2]。1940年、フランス政府よりの依頼を受けて、日本の皇紀2600年奉祝曲として『祝典序曲』を作曲。
1940年6月にパリが陥落すると、北アフリカで抗戦を継続しようとする政治家たちにイベールは同行し、このためにヴィシー政権によってイベールは反逆者と見なされ、曲の演奏が禁じられていた[3]。1944年に在ローマ・フランス・アカデミー館長に復職した。
1955年から1957年までパリの国立オペラ劇場連合(RTLN、オペラ座とオペラ=コミック座)の監督をつとめた[4]。
1962年にパリにて死去。遺体はパリ16区のパッシー墓地にて埋葬された。
作品
管弦楽曲
- レディング監獄のバラード(La Ballade de la geôle de Reading)(1921年)- オスカー・ワイルドの同名の詩にもとづく。
- 交響組曲『寄港地』(Escales)(1922年)
- 組曲『遊戯』(Jeux)(1923年)
- スケルツォ『妖精の郷』(Féerique, scherzo)(1925年)
- 室内管弦楽のためのディヴェルティスマン(Divertissement pour orchestre de chambre)(1930年)
- 海の交響曲(Symphonie marine)(1931年)
- 交響組曲『パリ』(Paris, Suite symphonique)(1931年)
- 祝典序曲(Ouverture de fête)(1940年)
- エリザベス朝組曲(Suite Élisabéthaine)(1944年)
- ルイヴィル協奏曲(Louisville concerto)(1953年)
- ボストニアーナ(Bostoniana)(1955年)- ボストン交響楽団創立75周年記念に作曲した未完成の交響曲の第1楽章を没後に出版したもの。
- バッカナール(Bacchanale)(1956年)
- 架空の愛へのトロピズム(Tropismes pour des amours imaginaires)(1957年)
協奏曲
室内楽・器楽
- 奇想曲(フルートとピアノ)
- 組曲『物語』(Histoires)(1917年)- 本来はピアノ独奏曲だが、フルートとピアノ用にも編曲された。マルセル・ミュールによるサクソフォーンとピアノ編曲も知られる。とくに第2曲「小さな白いろば」は単独で演奏される。
- 木管五重奏のための3つの小品(1930年)
- 10の楽器のための奇想曲(1930年)
- 弦楽四重奏曲(1942年)
- ヴァイオリン、チェロとハープのための三重奏曲(1944年)
- 即興曲(トランペットとピアノ)(1951年)
オペラ
- ペルセウスとアンドロメダ(Persée et Andromède)(1921年)
- アンジェリック(Angélique)(1927年)
- イヴトの王様(Le Roi d'Yvetot)(1930年)
- ゴンザーグ(Gonzague)(1931年)
- 鷲の子(L'Aiglon)(1937年)- アルテュール・オネゲルとの合作。エドモン・ロスタンの同名の戯曲に基づく。
- カルディナル家の姉妹(Les Petites Cardinal)(1938年)- アルテュール・オネゲルとの合作オペレッタ。
バレエ音楽
- めぐりあい(Les Rencontres)(1925年初演)- 現在はピアノ独奏用の組曲としてのみ演奏される。
- ジャンヌの扇(L’Éventail de Jeanne)(1927年)の中の「ワルツ」(Valse)
- ディアーヌ・ド・ポワチエ(Diane de Poitiers)(1934年初演)- イダ・ルビンシュタインのためのバレエ。
- ユピテルの恋(Les Amours de Jupiter)(1946年初演)
- 放浪の騎士(Le Chevalier errant)(1950年初演)
- ユニコーンまたは純潔の勝利(La Licorne ou le Triomphe de la chasteté)(1950年)
付随音楽
- イタリアの麦藁帽子(Un Chapeau de paille d’Italie)(1930年初演)
- ドノゴー(Donogoo)(1930年初演)- ジュール・ロマンの戯曲。
- サモス島の庭師(Le Jardinier de Samos)(1932初演)
- 7月14日(Le Quatorze Juillet de Romain Rolland)(1936年)- 7人による合作。
- 夏の夜の夢(Le Songe d’une nuit d’eté)(1942年)
映画音楽
60作を越える映画音楽を書いている[2]。
出典
- ^ Jean-Pierre Thiollet (2004), “Jacques Ibert”, Sax, Mule & Co, H & D, p. 135, ISBN 2914266030
- ^ a b (イタリア語) Jacques Ibert, Villa Médicis Académie de France à Rome, https://www.villamedici.it/direttori/ibert-jacques/
- ^ Jacque Ibert : Le Chevalier errant / Les Amours de Jupiter, Timpani Records, (2015), https://www.eclassical.com/shop/17115/art68/4946268-255604-3377891312305.pdf
- ^ M. Jacques Ibert est nommé administrateur de la Réunion des théâtres lyriques nationaux, Le Monde, (1955-08-10), https://www.lemonde.fr/archives/article/1955/08/10/m-jacques-ibert-est-nomme-administrateur-de-la-reunion-des-theatres-lyriques-nationaux_1939767_1819218.html
外部リンク