で定まるノルムに関してバナッハ空間である。Ω が自然数全体の集合 N で、μ が数え上げ測度のとき、Lp(Ω, μ) は上で述べた ℓp と一致する。
(Ω, μ) を測度空間とし、Ω 上の本質的に有界な関数、すなわちほとんどすべての x ∈ Ω に対して f(x) ≤ M となる M が x に依存せずに存在するような関数全体の集合[注 1]L∞(Ω, μ) は、上のような M の下限で定義されるノルムに関してバナッハ空間である。Ω が自然数全体の集合 N で、μ が数え上げ測度のとき、L∞(Ω, μ) は上で述べた ℓ∞ と一致する。
同じ基礎体 K 上のバナッハ空間 V, W に対し、連続K-線型写像A: V → W 全体の成す空間を L(V, W) で表す。無限次元空間の場合には任意の線型写像が自動的に連続となるわけではない。一般にノルム空間上の線型写像が連続となることと、それが単位閉球体上の有界となることとは同値である。従て、線型空間 L(V, W) に作用素ノルム
を入れることができて、このノルムに関して L(V,W) はバナッハ空間を成す。このことは仮定を V がノルム空間である場合に緩めても成り立つ。
V = W である場合、空間 End(V) = L(V) := L(V, V) は写像の合成を積として単位的バナッハ環を成す。
V がバナッハ空間で K をその基礎体(つまり実数体 R もしくは複素数体 Cの何れか)とすると、K は(その絶対値をノルムとして)それ自身バナッハであり、V から K への連続線型函数の空間 L(V, K) として、V の双対空間(連続的双対、位相的双対)V′ を定義することができる。V′ もまた(作用素ノルムに関して)バナッハ空間になる。双対空間を介して V に新たな位相(弱位相)を定義することができる。
任意の内積には対応するノルムが付随し(ノルムと内積との対応は ǁvǁ² = (v,v) で与えられる)、内積に付随するノルムに関して完備な内積空間はヒルベルト空間と呼ばれるから、任意のヒルベルト空間は定義によりバナッハ空間であるが、逆は必ずしも真でない。バナッハ空間 V のノルム ǁ•ǁ が内積に付随する(従って V がヒルベルト空間になる)ための必要十分条件は、中線定理(平行四辺形法則):
を任意の u, v ∈ V に対して満たすことである。故に、例えば Rn がその上で定義される「任意の」ノルムに関してバナッハであるのと対照的に、ヒルベルトとなるのはユークリッドノルムに関してのみということになる。同様に無限次元の場合、例えばルベーグ空間 Lp は常にバナッハだがヒルベルトとなるのは p = 2 の場合に限る。
で与えられる。一方 V が複素バナッハ空間のとき、偏極恒等式は(エルミート内積は第一変数に関して線型とする場合)
となる。この条件の必要性は内積の性質から容易に従う。これが十分であること(即ち、平行四辺形法則から偏極恒等式の定める形式が実際に完備内積となることが出ること)を見るには、この形式が加法的であることを代数的に確認して、それから帰納的に整係数、有理係数上線型であることを示し、さらに任意の実数がある有理コーシー列の極限であることとノルムの完備性を使って実線型性を示せばよい。複素係数の場合には、実双線型性に加えてさらに一方の引数については虚数単位 i に対する線型性と他方の引数に関する共軛線型性とを持つことを確かめればよい。
函数解析学において様々な重要な空間が存在するが、例えば無限回微分可能な函数 R → R 全体の成す空間や R 上のシュヴァルツ超函数全体の成す空間は完備ではあるがノルムが付かず、従ってバナッハ空間にはならない。フレシェ空間には同じく完備な計量が付くが、その極限として得られるLF-空間は完備な一様線型空間になる。
Dunford, Nelson; Schwartz, Jacob T. (1958), Linear Operators. I. General Theory, With the assistance of W. G. Bade and R. G. Bartle. Pure and Applied Mathematics, Vol. 7, Interscience Publishers, Inc., New York, MR0117523
外部リンク
Weisstein, Eric W. "Banach Space". mathworld.wolfram.com (英語).