対戦車隊(たいせんしゃたい、英: Anti-Tank Unit)及び対舟艇対戦車隊(たいしゅうていたいせんしゃたい、英: Anti-Groundship Anti-Tank Unit)は、陸上自衛隊の方面隊及び師団、旅団直轄の対機甲専門部隊であり、主に普通科職種の隊員で構成されている。普通科連隊等に編成されている対戦車部隊については、普通科の項も参照。
対戦車隊は、対機甲火力をもって敵戦車、装甲車、舟艇などの撃破を行う部隊であり、定員は部隊の特性によるが基本的に隊・中隊編成問わず100名編成が基本である。隷下は3個射撃小隊[1]を持ち、1個射撃小隊は4個射撃分隊を編成する。
隊編成を組む部隊は部隊本部機能として指揮官が2佐、中隊編成は指揮官を3佐として本部機能としてそれぞれ射撃小隊以外には班編制の支援部隊を編成する[2]。
設立当初、75mm無反動砲や、106mm無反動砲(自走・ジープ搭載型)を装備していたが、対戦車誘導弾開発に伴い第2対戦車隊から随時64式MATを装備開始し、現在では全ての対戦車部隊で各種対戦車誘導弾を装備し運用している[3]。
1991年以降に策定された中期防衛力整備計画以降は、96式多目的誘導弾システム(MPMS)を装備し対舟艇対戦車隊に改編された部隊を除いて、師団・旅団隷下の「対戦車隊」は廃止が進んだ。廃止した対戦車隊の人員装備を対戦車中隊として普通科連隊隷下に増強された師団が5つあるものの、2018年(平成30年)までには逐次廃止された。ただ、第12旅団では唯一、旅団への改編時に中隊編制[4]に改編され存続したが、2023年(令和5年)3月15日の改編時に廃止となった。
対舟艇対戦車隊として存続する部隊は、方面隊の対舟艇・対戦車火力を担当する。第2師団では、師団の定員削減に伴う改編により前述の通り普通科連隊対戦車中隊を2008年(平成20年)に集約し第2対舟艇対戦車中隊として再編成した。第4対舟艇対戦車隊・第11対戦車隊は、西部方面対舟艇対戦車隊・北部方面対舟艇対戦車隊と改編し、方面隊単位での対舟艇・対機甲火力の骨幹を為している。どちらも方面直轄部隊であるが、北部方面対舟艇対戦車隊は主な火力支援先を第11旅団として事実上の隷属扱いとなっている他、西部方面対舟艇対戦車隊については、改編後も第4師団に隷属し、隷下の普通科部隊および西部方面普通科連隊の支援を任務としていたが、2015年(平成27年)3月に第8師団に隷属先が変更となった。
部隊承認装備である中距離多目的誘導弾(中多:ちゅうた)は87式対戦車誘導弾(中MAT:ちゅうまっと)の後継であるが、従来の79式対舟艇対戦車誘導弾(重MAT:じゅうまっと)以上の能力を持っており、普通科中隊では無く連隊レベルでの運用が適切である観点から連隊直轄部隊の管轄として運用していく予定である。中期防衛力整備計画(2014)においては、2018年(平成30年)頃を目処として機動部隊に改編する部隊を中心に普通科連隊普通科中隊の対戦車小隊を廃止し、普通科連隊本部管理中隊に対舟艇対戦車小隊を編成、中多を運用する予定が組まれている[5]。第1空挺団の普通科大隊や対馬、奄美、宮古の警備隊でも本部中隊に対戦車小隊を置いている。例外として、水陸機動団の水陸機動連隊は対戦車中隊を編成している。
対戦車隊の教育部隊は、MPMSが第1陸曹教育隊普通科教育中隊対戦車区隊にて初級陸曹ATM課程を担任[6]する他、各陸曹教育隊でも中距離多目的誘導弾に関する初級陸曹特技課程の教育を担っている。
運用に関する研究は富士教導団本部中隊対戦車小隊[7]がMPMS、普通科教導連隊本部管理中隊対戦車小隊が中距離多目的誘導弾や車両を活用した戦術の研究等を担っている。
現在陸上自衛隊に編成されている対戦車隊(方面・師団等直轄)は、以下の3個部隊となっている。
北部方面隊
西部方面隊
その他の対戦車部隊
防衛大臣直轄部隊
陸上総隊
第1対戦車隊(だいいちたいせんしゃたい)は、板妻駐屯地に駐屯していた第1師団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第2対戦車隊(だいにたいせんしゃたい)は、上富良野駐屯地に駐屯していた第2師団直轄の普通科(対戦車)部隊。
第3普通科連隊対戦車中隊(だいさんふつうかれんたいたいせんしゃちゅうたい)は、名寄駐屯地に駐屯していた第3普通科連隊隷下の普通科(対戦車)部隊。
第25普通科連隊対戦車中隊(だいにじゅうごふつうかれんたいたいせんしゃちゅうたい)は、遠軽駐屯地に駐屯していた第25普通科連隊隷下の普通科(対戦車)部隊。
第26普通科連隊対戦車中隊(だいにじゅうろくふつうかれんたいたいせんしゃちゅうたい)は、留萌駐屯地に駐屯していた第26普通科連隊隷下の普通科(対戦車)部隊。
第2対舟艇対戦車中隊(だいにたいしゅうていたいせんしゃちゅうたい)は、上富良野駐屯地に駐屯する第2師団直轄の普通科(対戦車)部隊。
第3対戦車隊(だいさんたいせんしゃたい)は、大津駐屯地に駐屯していた第3師団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第7普通科連隊対戦車中隊(廃止)
第36普通科連隊対戦車中隊(廃止)
第37普通科連隊対戦車中隊(廃止)
第4対戦車隊(だいよんたいせんしゃたい)は、玖珠駐屯地に駐屯していた第4師団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第4対舟艇対戦車隊(だいよんたいしゅうていたいせんしゃたい)は、玖珠駐屯地に駐屯していた第4師団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第5対戦車隊(だいごたいせんしゃたい)は、鹿追駐屯地に駐屯していた第5師団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第5対舟艇対戦車中隊(だいごたいしゅうていたいせんしゃちゅうたい)は、帯広駐屯地に駐屯していた第5旅団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第6対戦車隊(だいろくたいせんしゃたい)は、大和駐屯地に駐屯していた第6師団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第20普通科連隊対戦車中隊(廃止)
第22普通科連隊対戦車中隊(廃止)
第44普通科連隊対戦車中隊(廃止)
第8対戦車隊(だいはちたいせんしゃたい)は、北熊本駐屯地に駐屯していた第8師団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第12普通科連隊対戦車中隊(廃止)
第24普通科連隊対戦車中隊(廃止)
第42普通科連隊対戦車中隊(廃止)
第43普通科連隊対戦車中隊(廃止)
第9対戦車隊(だいきゅうたいせんしゃたい)は、八戸駐屯地に駐屯していた第9師団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第10対戦車隊(だいじゅうたいせんしゃたい)は、春日井駐屯地に駐屯していた第10師団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第14普通科連隊対戦車中隊(廃止)
第33普通科連隊対戦車中隊(廃止)
第35普通科連隊対戦車中隊(廃止)
第11対戦車隊(だいじゅういちたいせんしゃたい)は、俱知安駐屯地に駐屯していた第11師団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第12対戦車隊(だいじゅうにたいせんしゃたい)は、新町駐屯地に駐屯していた第12師団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第12対戦車中隊(だいじゅうにたいせんしゃちゅうたい)は、新町駐屯地に駐屯していた第12旅団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第13対戦車隊(だいじゅうさんたいせんしゃたい)は、出雲駐屯地に駐屯していた第13師団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第13対戦車中隊(だいじゅうさんたいせんしゃちゅうたい)は、出雲駐屯地に駐屯していた第13旅団隷下の普通科(対戦車)部隊。
第2混成団本部中隊対戦車隊(だいにこんせいだんほんぶちゅうたいたいせんしゃたい)は、善通寺駐屯地に駐屯していた第2混成団本部中隊隷下の普通科(対戦車)部隊。
対戦車隊長は1等陸尉職であり、本部中隊の副中隊長職を兼務していた。当時混成団唯一の普通科連隊の第15普通科連隊は64式MATを装備し、本部中隊対戦車隊は主に第1小隊が79式対舟艇対戦車誘導弾及び第2小隊が87式対戦車誘導弾を装備運用していた[17]。