若桜鉄道株式会社 (わかさてつどう、英 : Wakasa Railway Co., Ltd. )は、鳥取県 で旧国鉄 特定地方交通線 の若桜線 を引き継いで運営している、鳥取県などが出資する第三セクター 方式の鉄道事業者 である。本社は鳥取県八頭郡 若桜町 に所在。
歴史
運営形態の変更
若桜鉄道は、2009年(平成21年)1月20日 に臨時株主総会を開催し、上下分離方式 (公設民営方式)を採用することを決めた。同年4月1日をもって若桜鉄道が所有する線路、駅施設等を若桜町 および八頭町 に譲渡し、両町が第三種鉄道事業者 として施設を保有管理、若桜鉄道が第二種鉄道事業者として運行を行うこととした。
これは、転換時に積み立てられた赤字補填基金が2008年度 (平成20年度)末に枯渇することが明らかになったため、若桜町、八頭町および若桜鉄道は法定協議会を開催して、今後の若桜線の運営改善方策の策定を行った。その結果、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律 の規定に基づき、国土交通省 に鉄道事業再構築実施計画の認定について申請し、2009年(平成21年)3月13日 付けで認定されたものである[ 6] 。
この鉄道事業再構築実施計画認定は、福井鉄道福武線 (2009年2月24日認定)に次いで2件目で、「公有民営化」方式としては初めての認定である。
なお、上下分離方式の採用に伴い、従来、社長は若桜町長、副社長は八頭町長(2005年3月30日までは八東町長)が兼務していたが、2009年(平成21年)6月22日 に取締役会を開催し、6月23日 付けで小林昌司社長(若桜町長)が会長に、平木誠副社長(八頭町長)が副会長になり、唯一代表権を持つ社長には旧国鉄出身の原卓也専務が昇格することを決めた[ 7] [ 8] 。
2014年 (平成26年)に社長が一般から公募され[ 9] 、同年9月に由利高原鉄道 のIT アドバイザーをしていた山田和昭 が社長に就任した[ 3] 。
八頭町から年間5900万円の財政支援を受けてきたが、2015年度(平成27年度)の赤字額は1500万円となった。2016年(平成29年)には若桜町と八頭町に(資産としての)車両を譲渡し、維持管理費や燃料費の負担も行うことが決定[ 10] 。年9900万円の財政支援金額となった。ただ、数年内に老朽化した車両の大規模な修繕費などが加わり、八頭町の支援が年1億2000万円になる見込みのため、今後の路線存続、1日10往復の運行維持が危ぶまれている[ 11] とも報じられた。しかし、2020年3月14日のダイヤ改正で八東駅 に交換設備 が新設されるのに伴い、逆に増発されて15往復となることになった[ 12] 。
経営状況・利用状況
各年度の経営状況・利用状況は以下の通り。1万円以下は切り捨て。▲は赤字を示す。
年度
輸送人員 (人)
収入
支出
損益額
備考
出典
2008年
427,601
1億51万円
1億5780万円
▲5728万円
上下直営最終年
[ 13]
2009年
391,463
1億9210万円
1億9030万円
180万円
上下分離開始
[ 13]
2010年
397,291
1億9771万円
1億9544万円
226万円
[ 13]
2011年
419,801
2億848万円
2億761万円
87万円
[ 13]
2012年
395,794
2億1617万円
2億2462万円
▲845万円
[ 13]
2013年
415,763
2億1625万円
2億3280万円
▲1655万円
[ 13]
2014年
346,658
1億8621万円
2億1774万円
▲3153万円
[ 13]
路線
八東駅 - 徳丸駅間の第二八東川橋梁
運行形態などは以下の項目を参照のこと。
車両
形式称号の「WT」は若桜鉄道の列車が走る沿線の町にちなみ、「W=若桜」、「T=鳥取」を意味している。
2016年 (平成28年)に車両を若桜町および八頭町に譲渡した。各車両は若桜鉄道に在籍しながら、維持管理は両町が行う形態となっている[ 10] 。
現有車両
2017年 (平成29年)3月31日現在、2形式4両の気動車 が在籍する(所有は若桜町および八頭町)[ 14] 。
WT3000形
1987年(昭和62年)の開業時に投入したWT2500形 を更新工事の施工により改番 した軽快気動車で、WT3001・WT3003・WT3004の3両が在籍。全車に「さくら」の愛称が付けられている。
2018年にWT3003が観光列車「昭和号」[ 15] 、2019年にWT3001が「八頭号」[ 16] 、2020年にWT3004が「若桜号」[ 17] に改造されて運行されている。
WT3300形
2001年 (平成13年)3月に増備された新潟鐵工所 製の軽快気動車 (NDC )[ 18] で、WT3301の1両のみ在籍。日本宝くじ協会 寄贈の「宝くじ号 」である。イベント用としても使用するため、カラオケ 装置が設置されている[ 18] 。2016年3月からは「スズキ・GSX1300Rハヤブサ 」のラッピング広告車両となっている[ 19] 。
WT3000形(2006年3月26日)
WT3300形(2009年8月26日)
過去の車両
WT2500形
1987年(昭和62年)10月の開業時に投入された新潟鐵工所 製の軽快気動車 (NDC)[ 20] 。WT2501 - WT2504の4両が投入された[ 20] 。2001年(平成13年)から更新によりWT3000形へ改番され、2003年 (平成15年)にWT2504がWT3004に変更されたのを最後に更新工事を終了。未更新のWT2502は余剰となったことから同年12月31日をもって廃車 となり形式消滅した。
保存車両
いずれも車両としては計上されていない[ 14] 。
機関車
貨車
客車
C12形蒸気機関車
DD16形ディーゼル機関車
12系客車
その他
排雪モーターカー :若桜線にて冬に走行するほか、駅構内の車両の入換にも使用される。
軌道自転車 :若桜線内の点検用車両。
運賃
大人普通旅客運賃(小児半額・10円未満切り上げ)。2019年 (令和元年)10月1日改定[ 23] [ 24] 。
郡家駅 - 八頭高校前駅 間 (0.9 km) の運賃は100円となっているが、2007年(平成19年)3月31日までこの区間の運賃は60円と日本一 安い設定となっていた。1996年 (平成8年)の八頭高校前駅開業当初の運賃は160円であったが、多くの高校生に利用してもらいたいとの意向から、1997年 (平成9年)4月1日から 1 km までと 2 km までの運賃区分を新設し郡家駅 - 八頭高校前駅間の運賃を60円に値下げした。しかし、ここ数年は利用者減少が続いているため、年間250万円の増収が見込まれる運賃値上げを決定し、中国運輸局に2007年(平成19年)4月1日から100円に運賃を値上げすることを申請した。値上げ実施後は北大阪急行電鉄 の大人初乗り運賃80円(2007年4月1日時点)が日本一安い運賃となった。しかし、北大阪急行電鉄が2017年(平成29年)4月からの運賃値上げを申請したことから、北大阪急行電鉄の値上げ実施後は1位タイではあるものの再び日本一安い運賃となる[ 25] 。
郡家
100
八頭高校前
210
170
因幡船岡
270
270
170
隼
300
300
270
210
安部
340
300
300
270
210
八東
340
340
340
300
270
170
徳丸
370
370
340
340
300
270
170
丹比
440
440
400
370
370
340
300
270
若桜
運転体験
実際に運行されているWT3000形気動車および展示走行できる状態で保存されているC12形 蒸気機関車(圧縮空気により稼動)、DD16形 ディーゼル機関車を使用した体験運転が、若桜駅 構内にて行われている。指導運転士添乗のもと、気動車は若桜駅構内3番線(約70 m)を、C12およびDD16は展示走行用専用線(約140 m)をそれぞれ2往復できる。2024年9月には初の試みとして親子運転体験会が開催され、車両はWT3001観光列車「八頭号」が使用された。
脚注
出典
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
若桜鉄道 に関連するカテゴリがあります。