NV1
NV1は、1995年5月に米NVIDIA社が最初に製品化したビデオチップ(グラフィックアクセラレータ)である。単なるビデオチ�…
SGS-Thomson STG2000の型番で搭載されているNV1 | |
| 発売日 | 1995年5月22日[1] |
|---|---|
| コードネーム | NV1 |
| ファブリケーション プロセス | 500 nm |
| 歴史 | |
| 後継 | RIVA 128 |
NV1は、1995年5月に米NVIDIA社が最初に製品化したビデオチップ(グラフィックアクセラレータ)である。単なるビデオチップに留まらず、マルチメディアプロセッサとして設計されており、ジョイスティック / ゲームポート / オーディオ / VGA / 2D / 3Dの機能が実装されている[2]。
開発当時に人気のあったポリゴンレンダリングとは大きく異なる曲面描画エンジン(Quadratic renderingを実装)を特徴とし[3]、ポリゴンレンダリングのDirectXには後にデバイスドライバで対応したものの速度に問題があった。テクセルフィルレートは12メガテクセル毎秒。
NV1を搭載したビデオカードは、米Diamond Multimedia社から「EDGE 3D」として販売されていた。チップはEDGE 3D 2000シリーズではSGS Thomsonが製造したモデルネームSTG2000が、EDGE 3D 3000シリーズではNV1となっている。カード上にはSound Blaster互換の16bitオーディオのほか、ドーターカード経由でセガサターンのコントローラを2つ接続できるコネクタがあり、パッケージにはEDGE 3D用に『Panzer Dragoon』、『Virtua Fighter Remix』、『NASCAR Racing』などのゲームソフトがバンドルされていた[4]。
NV2はセガのドリームキャスト向けに開発された後継チップであったが、最終的に採用は見送られた。NVIDIAは後継であるRIVA 128で方針を転換し、三角形ポリゴンを採用するとともにオーディオ機能を廃止した。Direct3Dへの対応と設計の最適化を図ったRIVA 128は、成功を収めることとなった。
歴史

『パンツァードラグーン』や『バーチャファイターリミックス』など、セガサターンのゲームタイトルをPC版がNV1対応版として移植された。NV1は競合他社が独自規格が乱立する市場で苦戦を強いられ、低価格なS3 Graphics ViRGE、Matrox Mystique、ATI Rage、Rendition Vérité V1000といった競合製品をはじめとする、三角形ポリゴンベースの2D/3Dアクセラレータの台頭によって市場での存在感を失っていった。商業的な業績も振るわず、『Game Developer』誌の報道によれば、Diamond Multimediaは1996年に「Edge 3D」の過剰在庫に対して500万ドルの評価損を計上しており、後にNVIDIAは1996年の第1四半期にはNV1の販売を終了していたと述べた[5][6]。

NV1が直面した当初の最大の問題は、コストと全体的な品質にあった。それなりの3D性能は備えていたものの、採用していた「二次曲面(quadratic surfaces)」による描画手法は一般的ではなく、当時の主流であったポリゴン・レンダリングとは大きく異なっている。オーディオ機能の評価も「まずまず」といった程度で、特にGeneral MIDIへの対応については(競合製品が優れた音質を実現していた当時としては重要な要素であったが、)反応は芳しくなかった。セガサターンは、ソニーのPlayStationやセガの前の機種であるメガドライブと比較して市場で失敗であったため、同機用のゲームパッドへの独自かつ制約のある対応機能も、限定的なメリットしか生み出さなかった。NVIDIAは本来個別に構成されるべきこれらのコンポーネントをすべて統合したため、単なる3Dアクセラレーション専用カードとして設計した場合に比べて、製造コストが大幅に上昇した。

NV1の発売時期は、VLB/ISA(intel 486)からPCI(Pentiumおよびintel 486の後期型)への移行期であった。当時のPCはストレージや処理能力の制約から大規模なデジタルオーディオ再生が一般的に困難であったため、ゲームの音楽にはMIDIが多用された。最高の音楽・音質やMS-DOSオーディオ規格への柔軟な対応を求めると、サウンドカードを2枚使用するか、MIDIドーターカード接続端子を備えたサウンドカードを使用する必要があるのが一般的であった。NV1の2D描画速度や品質は、当時市場に出回っていた多くのハイエンドシステムに太刀打ちできるものではなく、特にゲームにとって重要だったDOS環境でのグラフィックス描画速度においてその傾向が顕著でした。多くのユーザーは、それまで構築していた(往々にして複雑な)システム構成を捨ててまで高価なオールインワン・ボードに買い替えることに関心を示さず、NV1の過度な機能統合は、単に使い勝手の悪さという形で販売の足かせとなった。
Microsoftが三角形ポリゴンのレンダリングをベースとしたDirectXの仕様を発表すると、市場の関心は急速に薄れていった。業界の主要企業が支持するAPIでありながらNV1とは基本的に互換性のない仕様がMicrosoftから発表されたことで、市場の主導権を握るというNVIDIAの望みは即座に絶たれた。二次曲面で描画された球体などは見栄えが良かったものの、実際に二次曲面用のテクスチャマッピングを扱う作業は極めて困難であることが判明した。単純な処理ルーチンを計算することさえも問題があった。NVIDIAは限定的ながらDirect3Dへの対応を実現したが、その実装はソフトウェア処理によるもので低速かつバグが多く、市場に出回っていた三角形ポリゴンをネイティブ処理するハードウェアには到底及ばないものであった。その後、NV1の二次関数(quadratic)関連の技術開発は、NV2として社内で継続された[7]。
仕様
- ビデオメモリ FPM DRAM (1/2MB)/Dual-Ported DRAM (2/4MB)
- メモリクロック 75 MHz
- RAMDAC 135 MHz (FPM DRAM)/170 MHz (Dual-Ported DRAM)
- インターフェース PCI
対応するゲーム
- 闘神伝
- デイトナUSA (日本版)
- DESCENT: Destination Saturn
- NASCAR Racing
- Panzer Dragoon
- ソニック・エクストリーム(開発中止)
- Twisted Metal (日本版)
- バーチャファイター・リミックス
- バーチャコップ
NV2
NV2は、NV1の後継として計画され完成前に開発が中止となった二世代のビデオチップである。
NV2は、前世代であるNV1の「二次曲面(quadratic)ベースの3Dレンダリング・アーキテクチャ」という独自設計を踏襲した。当初、NV2はセガの家庭用ゲーム機「ドリームキャスト」への採用が検討された。セガのアーケードゲームやセガサターン用タイトルのPC移植を通じて築かれた関係性によるものであり、NV1とセガサターンの3Dレンダリング・アーキテクチャが類似していたことが移植作業を容易にしていたという背景があった。(NV1のビデオカードにはセガサターンのゲームパッド用ポートが2つ搭載されており、サターン用ゲームタイトルをNV1へ容易に移植し、同等のプレイ体験を可能であった。)しかし、セガサターンおよびNV1の3Dレンダリング・アーキテクチャを扱った経験から、最終的に同社は二次曲面ベースのアーキテクチャを完全に放棄し、三角形ポリゴンを基本とする、より一般的なアーキテクチャを採用する方針へと転換した[8]。
独自技術である二次曲面を用いた「フォワード・テクスチャ・マッピング」技術に固執するNVIDIAの強い姿勢は、セガとNVIDIAの間の大きな摩擦の原因となった。要因の一つとして、セガのPCゲーム部門の事情も関係しており、当時他社の3Dハードウェアは三角形ポリゴンを採用していたため、二次曲面ベースの3Dゲームエンジンの場合は、移植することが極めて困難だったためである。当時のコンシューマ向け3Dハードウェアは黎明期であったが、業界内では三角形ポリゴンとテクスチャーマッピングが業界標準になるという認識が一般的になりつつあった。最終的にセガは、ドリームキャストの3Dグラフィックチップとして、日本電気半導体部門(後のルネサスエレクトロニクス)とビデオロジック(現:イマジネーションテクノロジーズ)が共同開発した「PowerVR2」を採用することなった[9]。
セガからの需要がなくなり、PC市場のトレンドも、三角形ポリゴンをベースとするOpenGLやDirectXの普及によってQTM(二次曲面テクスチャ・マッピング)から大きく離れたため、NVIDIAはNV2の開発を断念し、新たなアーキテクチャ(後の「NV3」ことRIVA 128)の開発に着手した。
脚注
出典
- ^ Nvidia Corporation (May 22, 1995). “Multimedia Accelerator From NVIDIA Corporation Transforms PC Into The Ultimate Multimedia Machine” (Press release). 1996年11月12日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2020年4月14日閲覧.
- ^ “May, 1995 NVIDIA launches NV1 - Nvidia Corporate Timeline”. NVIDIA. 2024年8月19日閲覧。
- ^ Peddie, Jon (2021年1月18日). “Nvidia’s Quadratic Processor, the NV1” (英語). IEEE Computer Society. 2024年8月19日閲覧。
- ^ 劉尭 (2016年9月7日). “【やじうまPC Watch】 【懐パーツ】処女作にして野心的、NVIDIAのNV1を搭載した「EDGE 3D」”. PC Watch. インプレス. 2024年8月20日閲覧。
- ^ Rahmat, Omid (April 1999). “Nvidia on the Brink”. Game Developer.
- ^ NVIDIA CORP (PDF) (Report). NVIDIA / SEC filing. 1998.
- ^ “Nvidia NV1 Diamond Edge 3D review”. vintage3d.org. 2023年5月4日閲覧。
- ^ Dang, Alan (2001年2月16日). “NVIDIA NV2 Report”. FiringSquad. 2008年6月15日閲覧。
- ^ “History of the Modern Graphics Processor, Part 2” (2020年12月4日). 2026年7月23日閲覧。
関連項目
外部リンク
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