あずさは、東日本旅客鉄道(JR東日本)が主に新宿駅 - 松本駅間を中央本線・篠ノ井線経由で運行する特急列車である。
なお本項では、主に甲府駅発着で運転される「かいじ」や、かつて同一経路で運転されていた「スーパーあずさ」とともに、中央本線の東京駅 - 塩尻駅間(中央東線)で運転されていた優等列車の沿革(歴史)についても記述する。
1966年12月12日に新宿駅 - 松本駅間で「あずさ」が1日2往復で運転を開始した。
1977年3月25日に発売された狩人の楽曲『あずさ2号』が大ヒットしたことで一時的に「あずさ」の利用客が増えるなど、沿線利用者や鉄道ファン以外でも知名度は高い。
1988年には甲府駅・竜王駅といった山梨県内止まりの列車を「かいじ」として「あずさ」から分離した。また、1994年から2019年までの間、一部の列車は「スーパーあずさ」の名称で運行されていた。
「あずさ」は、長野県松本市の上高地を流れる梓川(あずさがわ、犀川の上流域の名称)に、「かいじ」は、山梨県の旧国名である甲斐国(別称:甲州)に向かうことから、「甲斐路(かいじ)」に由来している。
なお、1957年10月1日から新宿駅 - 松本駅間で運転を開始した臨時夜行準急に、1960年1月1日 - 4月25日まで「あずさ」の名称が、1961年10月1日 - 1965年9月30日には新宿駅 - 甲府駅で運転されていた準急列車に、1965年12月 - 1986年10月31日には新宿駅 - 松本駅間で運転されていた急行列車に「かいじ」の名称が使われていた。
2023年3月18日現在、定期列車は「あずさ」は16往復、「かいじ」は14往復運転されている。号数は下りは新宿駅発、上りは新宿駅着順に通し番号となっている。
新宿駅 - 甲府駅間では「あずさ」「かいじ」合わせて毎時2本の割合で運行されており、一部は東京駅や総武本線千葉駅、「あずさ」は大糸線南小谷駅、「かいじ」は竜王駅発着列車が存在する。
2020年3月13日までは、千葉駅と南小谷駅の間を直通する「あずさ」が下り1本のみ設定されていた。この列車は千葉 - 南小谷間341.6kmを5時間4分かけて運転されており、全国有数の長距離特急列車であった[注釈 1]。
新宿駅では基本的に中央線特急専用ホームである9・10番線に発着するが、一部列車は快速列車のホームである7・11番線に到着する。甲府駅では原則として下りは1番線、上りは2番線から発車するが、ごく稀に上り臨時列車で3番線から発車する場合がある。松本駅では1 - 4番線が使用される。
2023年3月18日現在。
以下の駅で臨時停車が行われたことがある。
2022年3月現在のダイヤでは、新宿駅 - 松本駅間の約225.1kmを最も速い「あずさ」37号は2時間29分で走行している。この区間の表定速度は約90km/hと、在来線特急列車としては比較的速い部類に入る。しかし、中央本線の高尾駅 - 塩尻駅間は全体の運行本数は少ないものの、大部分が山間部を縫って走る路線のためにカーブや勾配が多く、さらに茅野駅と上諏訪駅の間にある普門寺信号所から岡谷駅までの間は単線であることから対向列車の待ち合わせが発生する。また、高尾駅 - 東京駅間は線形は比較的良いが、通勤路線で本数が非常に多い快速電車と同じ線路を走行するため、それらの電車の間を縫って走行しなければならず、速度向上の妨げになっている。
181系で運行されていた時代は、旧線を走行したことから最高速度が95km/hに留まり[疑問点 – ノート]、新宿 ‐ 松本間の所要時間は4時間近くに上った。183系に置き換わり最高速度が120km/hまで向上したことや、塩嶺トンネルの開通による新線への切り替えにより、同区間の所要時間は最短で2時間40分にまで短縮したが、最高速度で走行可能な区間は塩嶺トンネルなど全区間の5%程度に過ぎなかった。一部がE351系に置き換わり、半径400m以上の曲線で本則+25km/hでの走行が可能となったものの、全列車を置き換えるには至らなかった。残った183系を置き換える目的で投入されたE257系は低重心化が図られたものの、半径400m以上の曲線の通過速度は本則+15km/hまでに留まっていた。
近年運行された中央東線の主な臨時特急列車には、以下の2つがある。このほかにも、2003年12月31日には松本駅から東京臨海高速鉄道りんかい線新木場駅へ向かう臨時特急「カウントダウンあずさ94号」がE257系を使用して運行された(りんかい線内は快速として運行)[9]。
「甲信エクスプレス」は山梨・諏訪エリアから長野駅経由で北陸新幹線へ接続し、北陸方面へのアクセスを便利にする目的で塩山駅 - 長野駅間で運転された臨時特急列車である[報道 1]。
設定当初は下り甲府駅発が7時台と始発「あずさ」より約1時間早く、上りも甲府駅着が最終「あずさ」より遅く設定されていた。また、甲府駅から長野駅へ向かう定期直通特急列車は1997年9月30日を最後に途絶えており[注釈 3]、現在は塩尻駅または松本駅で「あずさ」と「しなの」を乗り換える必要があるが、臨時ながらもこの列車の設定により乗り換えなしで行くことができた。また長野駅では、北陸新幹線「かがやき」「はくたか」と接続していた。2016年秋以降は設定されていない。
停車駅
※2015年秋まで竜王駅にも停車していた。
使用車両
「木曽あずさ」は2017年(平成29年)に実施された信州デスティネーションキャンペーンの一環として、新宿駅 - 南木曽駅間を辰野駅経由で運転された臨時特急である[報道 2]。沿線での滞在を考慮し、新宿発南木曽行きが運行された翌日に南木曽発新宿行きの列車が運転される形態で、3回運行された。辰野駅では飯田線駒ケ根駅行きの臨時快速「飯田線リレー号」と接続を取っていた[10]。
当列車は旅客営業取扱基準規程の列車特定区間の規定[注釈 4]により、岡谷駅 - 塩尻駅間の特急料金がみどり湖駅経由で計算された[注釈 5]。
2018年にも信州アフターディスティネーションキャンペーンの一環で2往復運行された[報道 3]。
「はまかいじ」は、1996年4月27日から[12]の土曜・休日(4月~11月、冬季は年末年始等のみ)に横浜駅 - 松本駅間を東海道本線(京浜東北線)・横浜線・中央本線・篠ノ井線経由で運転されていた臨時特急列車である[13]。下り列車が朝、上り列車が夕方の運転であった。横浜駅周辺から中央東線沿線への旅客を意識したダイヤだったが、1998年から一時は朝の上りおよび夕方の下り列車を加えた2往復運転されていた[14]。2往復運転されていた期間のうち、2号および3号は1999年7月 - 2001年9月に根岸線磯子駅、2001年10月 - 2002年11月には横須賀線鎌倉駅を横浜側の起終点としていた。
当初は甲府駅発着だったが、1998年7月4日から松本駅まで運転区間が延長された[15]。
2019年1月3日を最後に設定が無くなり、同月18日に発表された2019年春季臨時列車の一覧に本列車は記載されなかった[16]。理由としては、使用車両の185系200番台の老朽化、2019年からの中央線特急施策の変更、横浜駅京浜東北線ホームおよび横浜線内各駅へのホームドア設置などが挙げられた。
「信州かいじ」は、かつて新宿駅 - 松本駅間を中央本線・篠ノ井線経由で運転していた臨時特急列車である[17]。
「はまかいじ」の八王子駅以西のダイヤをほぼ踏襲する臨時特急として「あずさ」54号・55号があったが、2019年3月のダイヤ改正で山梨県内の塩山駅・山梨市駅・石和温泉駅が「あずさ」の停車駅から外れたため、これらの駅に停車する臨時特急列車については「かいじ」として運転されることとなり、その副列車名として「信州かいじ」の名称が用いられた[17]。
しかし翌2020年3月のダイヤ改正で、塩山駅・山梨市駅・石和温泉駅に停車する「あずさ」が復活したことから、以降は臨時列車についても再び「あずさ」として運転されることとなり、「かいじ」としての運転は1年で終了することなった。
なお、当列車は2019年2月22日に運行開始が発表されたことから、JR時刻表2019年3月号とJR時刻表を情報元としているJR東日本公式ホームページの時刻表には2019年2月26日時点では掲載が見送られていた[注釈 6]。
停車駅 新宿駅 - 立川駅 - 八王子駅 - 大月駅 - 塩山駅 - 山梨市駅 - 石和温泉駅 - 甲府駅 - 韮崎駅 - 小淵沢駅 - 富士見駅 - 茅野駅 - 上諏訪駅 - 下諏訪駅 - 岡谷駅 - 塩尻駅 - 松本駅
使用車両・編成
「むさしのかいじ」は、大宮駅 - 甲府駅間を東北本線(東北貨物線)・武蔵野線・中央本線経由で運転されていた臨時特急列車である。2014年9月27日から運転を開始した。
停車駅(むさしのかいじ)
使用車両・編成(むさしのかいじ)
「ちばかいじ」は、千葉駅 - 甲府駅間を総武本線・中央本線経由で運転されていた臨時特急列車である。2016年6月4日から運転を開始した。
「山かいじ」は、立川駅 - 小淵沢駅間で運転されていた臨時特急列車。下り列車のみの設定で上り列車の設定はなかった。2018年は7月28日、8月4日、11日、12日に運転された。立川駅を早朝の5時台に出発するためJRは日帰り登山に便利な特急だとしていた[18]。なお、塩山駅にある「NewDays KIOSK 塩山駅店」は「山かいじ」運転日のみ到着時刻と同時に開店していた。
この他にもかつて千葉駅 - 甲府駅間で幕張車両センター所属の255系を使用した臨時特急「ビューかいじ」が運行されていた。
中央高速バスとの対抗上、千葉・新宿(東京都区内)駅 - 甲府駅以西の主要駅間を対象に、2019年3月改正までは、通年発売の特別企画乗車券「あずさ回数券」が設定されていた。
以降はえきねっと利用者に対して乗車券と特急券が最大で35%割引される「トクだ値」が一部列車・区間で設定されている[19]。
中央東線での有料優等列車の歴史は太平洋戦争後の1948年(昭和23年)からである。しかし昭和前期に運転された同線の臨時普通列車・準急列車には、「高嶺」「アルプス」など地方鉄道管理局が独自に設けた列車愛称が付けられていたこともあった。
あずさ - かいじ / 富士回遊 / はちおうじ - おうめ
スーパーあずさ - アルプス - こまがね - 白馬 - 甲信エクスプレス / はまかいじ - むさしのかいじ - ちばかいじ - 信州かいじ / かわぐち
中央東線優等列車の沿革 / 富士急行線直通優等列車の沿革 / 中央本線・青梅線都内完結優等列車の沿革 / 中央東線夜行急行・快速・普通列車沿革
中央ライナー - 青梅ライナー / ホリデー快速ピクニック - ホリデー快速むさしの - ホリデー快速河口湖 - ホリデー快速富士山 / ホリデー快速ビューやまなし / 成田エクスプレス / ムーンライト信州
しなの
つがいけ - きそこま / ちくま - くろよん - あずみ
中央西線優等列車の沿革 / 中央西線夜行列車の沿革
ナイスホリデー木曽路 / セントラルライナー
さざなみ - 新宿さざなみ - 内房線優等列車沿革
わかしお - 新宿わかしお - 外房線優等列車沿革
しおさい - 総武本線優等列車沿革
成田エクスプレス - あやめ(廃止) - すいごう(廃止) - 成田線・鹿島線優等列車沿革
ホームライナー千葉(廃止) - あずさ - 富士回遊