ポリーシャ(ウクライナ語: Полісся、ベラルーシ語: Палессе、ポーランド語: Polesie、ロシア語: Полесье[1])は北ウクライナ、南ベラルーシ、東ポーランドと西ロシアの間に位置する歴史的地名である。スラヴ人の発祥地であり、古代より東スラヴの文化と伝統が保存されてきた地域とされる。19世紀以降、東欧の人類学者のメッカとなった。20世紀末、チェルノブイリ原子力発電所事故により著しい被害を受けた。
ポリーシャの地名の由来は「沼地の森林」であると言われている。当地方は東欧平原の西部に位置し、プリピャチ川と西ブーフ川に挟まれた湿地と森林が混在した地域である。
ポリーシャの中心地は現在ウクライナのヴォルィーニ州、リウネ州、ジトーミル州、キエフ州、チェルニーヒウ州、スームィ州の北部と、ベラルーシのブレスト州とホメリ州の南部を占めている。また、従来よりウクライナ人とベラルーシ人が居住していた現在のポーランドの東部(ルブリン県)とロシアの西部(ブリャンスク州)もポリーシャ範囲に含まれることもある。
ポリーシャの主な河川はドニプロ川、デスナ川、ホールィニ川、ストクヒド川(英語版)、スティル川(英語版)、プツィチ川、ヤセリダ川である。主要都市はピンスク、トゥリウ、ブレストなどである。
東部のロシアのネルッサ川(英語版)とデスナ川一帯のポリーシャには混合林、草地、ボグ、湿地があり、ヒグマ、オオヤマネコ、オオカミ、ヘラジカ、アカシカ、イノシシ、ノロジカなどが生息している[2]。西部のポーランド、ウクライナ、ベラルーシをまたぐ西ポリーシャには寒帯針葉樹林、温帯落葉樹林および多数の湖、沼地、草地と湿地が分布し、ミズゴケ属、スゲ属、ヨシ属、ハクサンチドリ属のDactylorhiza fuchsii(英語版)とDactylorhiza incarnata(英語版)、ホロムイソウなどの植物が生え、ハシボソヨシキリ(英語版)、コアオアシシギ、クロヅル、カラフトワシ、チュウヒワシ、オグロシギ、ハイイロチュウヒ、ヒメハイイロチュウヒ、ダイシャクシギ、ニシブッポウソウ、ヨーロッパオオライチョウ、タカブシギ、カラフトフクロウ、ナベコウ、ホオジロガモ、ヒドリガモ、マガン、ハジロクロハラアジサシ、アシナガワシ、オオカミ、ヘラジカ、ヨーロッパバイソン、カワウソ、ヨーロッパヌマガメ、ヨーロッパナメラ(英語版)、ヨーロッパウナギ、コチョウザメ、カワメンタイ、トンボのLeucorrhinia albifrons(英語版)などの動物が生息している。この2つの区域はユネスコの生物圏保護区に指定されている[3]。また、ウクライナ北東部のデスナ川氾濫原[4]、ベラルーシ南東部のイプチ川氾濫原[5]とドニプロ川氾濫原[6]、南部と南西部のプリピャチ川流域のプリピャチ国立公園(英語版)[7]、スタリ・ジャデン(ベラルーシ語版)[8]、オルマニ沼群(英語版)[9]、プリピャチ川中流部[10]、モロチノ(ベラルーシ語版)[11]、プロスティル川(ウクライナ語版)[12]、ポドヴェリキー・モフ[13]、ヴィゴノシャンスコエ湿地(ベラルーシ語版)[14]、ズヴァネッツ湿地(ベラルーシ語版)[15]、ヤセリダ川流域のスポロフスキー湿地(ベラルーシ語版)[16]およびブク川の渓谷[17]、ウクライナ北西部のポリーシャ湿地(ウクライナ語版)[18]、シラ・ポホーニャ(ウクライナ語版)[19]、ペレブローディ泥炭地(ウクライナ語版)[20]、ソミネ湿地(ウクライナ語版)[21]、ビレ湖(ウクライナ語版)一帯[22]、プリピャチ川氾濫原[23]、チェレムスケ自然保護区(英語版)[24]、ストクヒド川(英語版)氾濫原[25]、シャツキー湖沼群(英語版)[26]、ポーランドのポレスキー国立公園(英語版)[27]はそれぞれラムサール条約に登録されている。
ポリーシャにおいては、ポリシチュク人(英語版)(ポリーシャ人)が中心となっている[28]。彼らはウクライナ人の一派と見なされ、ウクライナ語の北部方言に属するポリーシャ語(英語版)を用いる。ポリシチュク人が主に信仰する宗教は正教とカトリックである。彼らは古代東スラヴ人の伝統的文化を色濃く保っている。