うさぎ座 ( うさぎざ、ラテン語 : Lepus ) は、現代の88星座 の1つで、プトレマイオスの48星座 の1つ[ 2] 。ウサギ をモチーフとしており、オリオン座 に狩りの場面を演出するためにオリオン座の南側に作られたと考えられている[ 7] [ 8] 。
主な天体
恒星
2023年 11月現在、国際天文学連合 (IAU) によって2個の恒星に固有名が認証されている[ 9] 。
α星 :見かけの明るさ 2.57 等、スペクトル型 F0Ib の超巨星 で、3等星[ 10] 。うさぎ座で最も明るく見える恒星 。A星には、アラビア語 で「ウサギ」を意味する言葉に由来する[ 11] 「アルネブ [ 12] (Arneb[ 9] )」という固有名が認証されている。
β星 :太陽系から約156 光年の距離にある、見かけの明るさ2.84 等、スペクトル型 G5II-IIIa: の赤色巨星 で、3等星[ 13] 。うさぎ座で2番目に明るく見える。約2.5″ 離れた位置に見える7.5 等のB星と連星系を成しているとされる[ 14] 。A星には、アラビア語で「のどの乾きを癒し始めたラクダたち」という言葉に由来する「ニハル [ 12] (Nihal[ 9] )」という固有名が認証されている。これは、かつてアラビアで α・β・γ・δ の4星で描く四辺形を「アル・ニハル」と呼んだことに由来する[ 11] 。
その他に以下の恒星が知られている。
星団・星雲・銀河
由来と歴史
『ウラニアの鏡 』に描かれたうさぎ座(右上)
バビロニア の星座にウサギをモチーフとしたものがないことから、うさぎ座はギリシア起源の星座であると考えられている[ 7] 。紀元前3世紀 後半の天文学者エラトステネース の天文書『カタステリスモイ (古希 : Καταστερισμοί )』や1世紀 初頭の古代ローマ の著作家ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌス の『天文詩 (羅 : De Astronomica )』では、狩りの場面を演出するためにオーリーオーン とその猟犬に充てがう適当な獲物として考案されたものとしている[ 7] [ 8] 。
うさぎ座に属する星の数は、エラトステネースの『カタステリスモイ』やヒュギーヌスの『天文詩』では7個、帝政ローマ 期のクラウディオス・プトレマイオス の天文書『ヘー・メガレー・スュンタクスィス・テース・アストロノミアース (古希 : ἡ Μεγάλη Σύνταξις τῆς Ἀστρονομίας )』、いわゆる『アルマゲスト 』では12個とされた[ 7] 。大きく時を下った17世紀 初頭の1603年 にドイツ の法律家 ヨハン・バイエル が編纂した星図『ウラノメトリア 』では、α からν までのギリシャ文字 13個の符号を用いて星を示している[ 39] [ 40] 。
中東
オーストリア のアッシリア学者ヘルマン・フンガー (英語版 ) とアメリカ の数理天文学・古典学者のデイヴィッド・ピングリー (英語版 ) (David Pingree) が解読した、紀元前500年頃のメソポタミアの粘土板文書『ムル・アピン (英語版 ) (MUL.APIN)』に記された星や星座の記録によると、今のうさぎ座の領域の星々は「雄鶏」と呼ばれていたとされる[ 41] 。エジプト デンデラ のハトホル神殿 で発見された紀元前50年頃の天体図でも同じく「雄鶏」とされている[ 42] 。
中国
Imperial Encyclopaedia - Borders - pic010 - 參宿圖
ドイツ人宣教師イグナーツ・ケーグラー (英語版 ) (戴進賢)らが編纂し、清朝 乾隆帝 治世の1752年 に完成・奏進された星表『欽定儀象考成』では、うさぎ座の星は二十八宿 の西方白虎 七宿の第五宿「畢宿 」と第七宿「参宿 」に配された[ 44] 。畢宿では、1番星がエリダヌス座 の8星とともに天子直属の軍の軍旗を表す星官 「九斿」に配された[ 44] 。α ・β ・γ ・δ の4星が「トイレ」を意味する星官 「厠」に、ε ・μ の2星が「屏風」を意味する星官「屏」に、ι・κ・λ・ν の4星が「軍の井戸」を意味する星官「軍井」に、それぞれ配された[ 44] 。
神話
紀元前3世紀 前半のマケドニア の詩人アラートス の詩篇『パイノメナ (古希 : Φαινόμενα )』では、オーリーオーン の足元でシリウス に追われるウサギであるとしている[ 2] [ 45] 。エラトステネースの天文書『カタステリスモイ』では、その脚の速さを称えたヘルメス によって星々の間に置かれた」とする話を伝えている[ 7] [ 8] 。
ヒュギーヌスの『天文詩』では以下の話を伝えている。ドデカネス諸島 のレロス島 にはウサギがいなかった。あるとき、ウサギに興味を持った少年が海外から妊娠したメスのウサギを連れてきて出産するまで世話をした。ウサギが生まれると、多くの島民も興味を持ち、購入したり贈答品としてもらったりした。やがてウサギは島全体に広がり、作物は打撃を受け、人々は飢餓に苦しむこととなった。そこで島の人々はウサギを撲滅した。のちに「人生において一時の喜びよりも大きな苦痛を伴わないことのほうがはるかに望ましい」という戒めとして、ウサギの姿を星座とした[ 2] [ 7] 。
呼称と方言
世界で共通して使用されるラテン語の学名は Lepus 、日本語の学術用語としては「うさぎ 」とそれぞれ正式に定められている。現代の中国では、天兔座 (天兎座[ 48] )と呼ばれている。
明治初期の1874年 (明治7年)に文部省 より出版された関藤成緒 の天文書『星学捷径』で「レプス 」という読みと「兎 」という解説が紹介された[ 49] 。また、1879年 (明治12年)にノーマン・ロッキャー の著書『Elements of Astronomy』を訳して刊行された『洛氏天文学』では「レピュス 」と紹介された[ 50] 。30年ほど時代を下った明治後期には「兎 」と呼ばれていたことが、1908年 (明治41年)7月に刊行された日本天文学会 の会報『天文月報』の第1巻1号に掲載された「四月の天」と題した記事で確認できる[ 51] 。この訳名は、東京天文台 の編集により1925年 (大正14年)に初版が刊行された『理科年表 』にも「兎(うさぎ) 」として引き継がれ[ 52] 、以降継続して「兎」が使われた[ 53] 。1952年 (昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」とした際に Lepus の日本語名は「うさぎ 」とされ[ 55] 、以降も継続して用いられている。
脚注
注釈
出典
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参考文献
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