反AI
反AI(はんエーアイ、英:anti-AI[1])は、人工知能(AI)、特に生成的人工知能(生成AI)の無秩序な開発や利用、導…
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反AI(はんエーアイ、英:anti-AI[1])は、人工知能(AI)、特に生成的人工知能(生成AI)の無秩序な開発や利用、導入、または生成物自体に対して、批判や抗議、または法的規制を求める社会的・思想的な運動や立場の総称。「AI規制派[2][3]」「AIバックラッシュ(英:AI backlash[4])」とも呼ぶ。主に大きく「反対派」「推進派」「無関心派」に派閥が分かれる[5]。
人工知能に対してネガティブなイメージや偏見を持つことを「反AIバイアス」と呼称することがある[6][7]。
概要
人工知能の技術革新により大きな進歩を遂げている一方で、人工知能に対して嫌悪感などを示す、「反AI」が増加傾向にある[8]。特に、生成的人工知能においては倫理性や著作権の問題などでSNS上ではたびたび議論や対立が起き、場合によっては誹謗中傷にまで発展することがある[9]。嫌悪感を抱く理由として具体的なものとして「生成AIに他者の著作物を学習させたことによる著作権侵害(人工知能アートなど)」「人間の声を学習させて悪用する(音声ディープフェイク)」「人工知能の進歩による人間の失業(人工知能が職場に及ぼす影響)」などが挙げられ、暴動や事件に発展する場合がある。
著作権侵害や失業の恐れから炎上させた例として、2022年、IT企業であるラディウス・ファイブの人工知能が画風を再現しながらイラストを自動生成する「mimic(ミミック)」というサービスがある。利用者側がイラストを複数枚ほどアップロードすることによって画風の再現したバストアップ画像が作成されるというものだ。これに対し「描き手以外の利用者が無断で画像を使用し贋作がつくられる恐れがある」とし、イラストレーターを中心に波紋を呼び、「さっさと潰れろ」「絵師の敵」と批判が飛び交った。これを受けサービスは一時休止し、利用希望者のXアカウントを審査して本人であると確認できるようにするなどといった対策を講じてサービスを再開させた[10]。同社は「ネット上で活動している絵師はトレパクや誹謗中傷などの悪意にさらされ続けるリスクを抱えている」「AIに絵を悪用されるというストレスをmimicが与えてしまった。そこに対して認識が甘かった。」と話した[11]。
イラストレーター自身が生成AIを使用することに対して議論が起こることがある。イラストレーターの七瀬葵は生成AIに衝撃を受け、自身もSNSに生成AIで出力したイラストを投稿し始めたところ、「七瀬葵がAI堕ちした」などと騒動になってしまった[12]。
SNSに公開されている著作物において、「AI学習禁止」などとあらかじめ記載される場合がある。例として、一迅社においてボーイズラブ作品を扱うレーベル「gateau」ではAI学習禁止を呼びかけていたり[13]、SNS「Wick」では「AI学習を防ぐ」ことを謳い、イラストにノイズ加工をかける、画像のダウンロードやスクリーンショットの禁止などの機能を設けている[14]。
人工知能の普及に伴って、クラウドサービスや生成的人工知能を支えるために、大量のサーバーを動かすデータセンターの建設が進んでいるが、建設予定地の住民から「電力消費」「水の使用量」「騒音」「地域インフラへの負担」などを理由に批判が集まっている[15]。雑誌『WIRED』が入手した、アメリカ合衆国国土安全保障省(DHS)や連邦捜査局(FBI)などの、約1000ページにのぼる内部文書によると、人工知能に対する反発やデータセンターに対する反対運動に対して、「反テクノロジー暴力過激主義(Anti-tech violent extremism)」という脅威カテゴリーとして制定されていることが発覚した[16]。
アメリカ合衆国では活動家や不満を抱くユーザーを中心としてChatGPTのサブスクリプションを解約するように呼びかけることを目的とする「QuitGPT(クイットGPT)」というキャンペーンが拡大している[17]。このキャンペーンでは、OpenAIの社長であるグレッグ・ブロックマンがドナルド・トランプの政治行動委員会である「Make America Great Again Inc.(MAGA inc.)」に対して多額の寄付をしていたことを問題視したり、米国移民関税執行局(ICE)がGPT-4を活用し、履歴書をふるい分けるツールを使用していることを指摘した[17]。
日本においては、山寺宏一や中尾隆聖などの声優を中心に、自身の声を人工知能に学習させ、無断で使用されてしまうことに対して反対する「NOMORE無断生成AI」というAI規制運動を行っている[18]。
人工知能の発展により暗い社会をもたらしてしまうという悲観論を、「AIディストピア」と呼称する場合がある[19][20]。
事例
2023年
- 1月13日 - アメリカ合衆国のプログラマー兼弁護士であるマシュー・バタリックは、漫画家兼イラストレーターのサラ・アンダーセン、美術アーティストのケリー・マッカーナン、コンセプトアーティストのカルラ・オルティスらを代表に、生成AI「Stable Diffusion」の開発元であるStability AI、芸術家コミュニティのDeviantART、画像生成プログラムを開発しているMidjourneyを、著作権侵害やデジタルミレニアム著作権法(DMCA)違反だとして集団訴訟した[21]。マシュー・バタリックによると、Stable Diffusionは元の画像の著作者の同意なしに、拡散モデルを用いてデータ圧縮を行ったあと、データ統合をすることによって新たに画像を生成している「21世紀のコラージュツール」であると糾弾した。生成物が市場で競合する可能性があるとして、将来的にアーティストに甚大な損害が及ぶことを指摘した。
- 2月3日 - アメリカ合衆国のワシントン州シアトルに本社を置く写真画像代理店であるゲッティイメージズは、デラウェア州地方裁判所にて「自社の知的財産を驚異的な規模で侵害した」として、Stability AIを訴訟提起した。
2025年
- 2月10日 - フランスのパリにあるグラン・パレで開催されたAIアクションサミットに合わせて、同じくパリにて、フランス版ドラゴンボールの孫悟空などを担当している声優であるブリジット・ルコルディエなどの声優やクリエイターにより、「反AIサミット」が開催された[22]。生成AIの普及により、無断で学習された声がSNS上で勝手に使用されているとし、「AIに声を盗まれている」と訴えた[22]。
- 3月23日 - 京都市右京区に位置する車折神社が生成AIを用いて生成した女性キャラクターをXのアイコンに設定したところ批判が殺到してしまった。その後、同神社宛に「放火してやろうか」「叩き殺す」といった脅迫メールを計32回にわたって送付した無職の男性が略式起訴され、右京簡易裁判所は威力業務妨害罪で罰金20万円の略式命令を出した[23][24]。これに対し宮司室長は、当神社が芸能神社であることを踏まえ「生成AIも芸術の一つと捉えて使用した」と話した[24]。
2026年
- 1月頃 - スカーレット・ヨハンソンやケイト・ブランシェット、ジョセフ・ゴードン=レヴィットなど700人以上の俳優、アーティスト、作家、クリエイターが、「我々の作品を盗むのはイノベーションや進歩ではなく窃盗」と非難し、新たに反AIキャンペーンを立ち上げた[25]。
- 4月8日 - 報道機関・プロパブリカの労働組合の一つである「プロパブリカ・ギルド」の組合員約150人によって、24時間に及ぶストライキが発生した。賃金交渉やAI導入に伴う解雇を禁止する契約条項を求めた[26][27]。
- 4月10日 - カルフォルニア州に位置する、OpenAIの最高責任者(CEO)であるサム・アルトマンの自宅に火炎瓶のようなものが投げられた[28]。この襲撃事件の被告は人工知能に関する企業の取締役や最高責任者のリストを含む「反AI文書」を所持していたことが裁判文書から明らかになった。
- 5月14日 - Xperiaが公式Xにて、「Xperia 1 VIII」の新機能である「AIカメラアシスタント」を紹介したものが投稿された。被写体にカメラを向けることによって、人工知能が自動的に最適なレンズや色合いなどを調節してくれるという機能であり、3枚の比較画像を添付したが、露出オーバーになっていると話題になり、「オリジナルの方が良い」「AI支持派だけど今回は反AIになる」などと酷評が相次いだ[29]。これに対しNothing Technologyの共同創業者兼CEOであるカール・ペイはXにて「これは間違いなくエンゲージメント稼ぎ」とポストした。
- 5月15日 - Googleの元最高責任者であるエリック・シュミットがアリゾナ大学にて人工知能の技術的革新に言及したところ、ブーイングが飛び交った[30]。
脚注
出典
- ^ Mansouri, Masoumeh Iran、Bailey, David J.「How to be ‘anti-AI’ in the 21st century: overcoming the inevitability narrative」『Global Political Economy』第4巻第2号、2025年9月、185–194頁、doi:10.1332/26352257Y2025D000000030、ISSN 2635-2257。
- ^ “「ナウル共和国」公式X、過去に炎上した画像を巡って“AI規制派“に提言 「Grok人気」を受け”. ITmedia NEWS (2024年12月12日). 2026年6月1日閲覧。
- ^ “「AI規制派は悲観論者」と主張し規制なき市場での成長加速を志す「効果的加速主義(e/acc)」がテック業界で流行中、サム・アルトマンも賛同するe/accとは一体なんなのか?”. gigazine.net. GIGAZINE (2023年12月11日). 2026年6月1日閲覧。
- ^ “BBC Audio | The Global Story | From campus to the Vatican, is an AI backlash growing stronger?” (英語). www.bbc.com (2026年5月29日). 2026年6月1日閲覧。
- ^ “「三国志」に学ぶ生成AIの導入推進 「推進派」「反対派」「無関心派」の勢力争い、その攻略法は?”. ITmedia AI+ (2025年6月27日). 2026年6月1日閲覧。
- ^ 髙田, 綾、菅原, 健介「創作活動への生成系aiの影響」『日本心理学会大会発表論文集』第89巻、2025年、385頁、doi:10.4992/pacjpa.89.0_385。
- ^ Lee, Hye-Kyung; Bertolini, Josepha; Terui, Takao; Kawashima, Nobuko (2024-06). AIと文化労働の変革: 三つの観点
- ^ Ellis, Amrith Ramkumar, Katherine Blunt and Lindsay (2026年5月20日). “「反AI」感情が米国で急拡大、政治的争点に”. WSJ Japan. 2026年6月1日閲覧。
- ^ 松下, 瑚南、村井, 源「生成aiをめぐるsns上の議論の争点 ―発話分析による価値観の可視化―」『情報知識学会誌』第35巻第2号、2025年、188–196頁、doi:10.2964/jsik_2025_015。
- ^ “画風を学んでAIイラスト生成「mimic」終了へ 公開時に炎上→審査制で運営も、約2年半で幕”. ITmedia AI+ (2025年4月15日). 2026年6月1日閲覧。
- ^ “国産AIはなぜ炎上する? 「mimic」開発元に反省点を聞いた 海外産AIは平常運転、待つのは“日本1人負け”か”. ITmedia NEWS (2022年12月26日). 2026年6月3日閲覧。
- ^ ““AI堕ち”とボコボコに叩かれたイラストレーター「七瀬葵」…それでも「コミケから生成AIの創作物を排除しちゃダメ」と語る理由”. デイリー新潮 (2026年5月17日). 2026年6月18日閲覧。
- ^ “「作品のAI学習や加工は禁止」、一迅社のBLレーベルが呼び掛け”. ITmedia AI+ (2026年1月19日). 2026年6月1日閲覧。
- ^ “意図せぬAI学習から保護し、イラストレーターの活動をサポートするSNS機能がWickアプリに追加”. プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES (2025年7月25日). 2026年6月1日閲覧。
- ^ “データセンター反対運動やAI批判が「反テクノロジー過激主義」として監視対象になる恐れがあることがアメリカ当局の内部資料で明らかに”. ライブドアニュース (2026年5月27日). 2026年6月1日閲覧。
- ^ Boguslaw, Daniel. “US Law Enforcement Warns of ‘Anti-Tech Extremism’ as AI Hatred Grows”. Wired (アメリカ英語). ISSN 1059-1028. 2026年6月1日閲覧.
- ^ a b “「ChatGPTを解約せよ」トランプ献金に反発する草の根運動が拡大”. MITテクノロジーレビュー (2026年2月13日). 2026年6月3日閲覧。
- ^ “声優が呼び掛ける「NOMORE無断生成AI」 第1弾の動画と公式サイトを公開 「AIと良い意味で共存していく道を探らなければ」”. ITmedia AI+ (2024年10月22日). 2026年6月3日閲覧。
- ^ Inc, Nikkei (2026年3月2日). “AIディストピア論とは AI投資と失業「負の連鎖」が危機招く”. 日本経済新聞. 2026年6月1日閲覧。
- ^ “AIディストピア論で株価急落、シトリニ創業者も驚き-不安が最高潮に”. TBS CROSS DIG with Bloomberg (2026年2月25日). 2026年6月1日閲覧。
- ^ 株式会社インプレス (2023年1月17日). “米画家ら、画像生成AI「Stable Diffusion」と「Midjourney」を提訴”. PC Watch. 2026年5月21日閲覧。
- ^ a b “権利保護訴え、反AI 「私たちの声、AIに盗まれている」 「ドラゴンボール」仏語声優:朝日新聞”. 朝日新聞 (2025年2月17日). 2026年5月21日閲覧。
- ^ 産経新聞 (2025年12月16日). “「その伝統ある神社を放火してやろうか!?」生成AIで炎上巡り脅迫した男に罰金20万円”. 産経新聞:産経ニュース. 2026年5月21日閲覧。
- ^ a b “「生成AIを擁護するような態度に腹が立った」…神社に脅迫メールを送った疑いで38歳男を逮捕”. 読売新聞 (2025年7月5日). 2026年5月21日閲覧。
- ^ TERAI, TAE (2026年1月23日). “スカーレット・ヨハンソンやケイト・ブランシェットら、ハリウッドスター700人が反AIキャンペーン”. Vogue Japan. 2026年6月1日閲覧。
- ^ “全米メディアで初のAIをめぐるストライキ、プロパブリカの記者らが反発…経営陣と記者たちが対立”. 読売新聞 (2026年5月20日). 2026年6月1日閲覧。
- ^ “「ProPublica」記者約150名がAI導入に反対し24時間スト、米報道機関で初のAI関連ストライキに”. Media Innovation (2026年4月10日). 2026年6月1日閲覧。
- ^ “アルトマン氏襲撃犯、CEO名記載の「反AI」文書所持”. ダイヤモンド・オンライン (2026年4月14日). 2026年5月21日閲覧。
- ^ “「Xperia」の新AI機能を紹介したポストが海外で「最高の反AI広告だ」と物議 ソニーの説明は?”. ITmedia NEWS (2026年5月15日). 2026年6月1日閲覧。
- ^ Bennhold, Katrin (2026年5月28日). “A.I.’s Big Next Step”. The New York Times (アメリカ英語). ISSN 0362-4331. 2026年6月1日閲覧.
関連項目
- ラッダイト運動 - 1800年代に産業革命が原因で発生した機械破壊運動。
- 人工知能の規制
- アメリカ合衆国における人工知能の規制
- AI法
- 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律
- Resisting AI
- AIスロップ
- ハルシネーション (人工知能)
- AIがもたらす未来のシナリオ
外部リンク
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