『AKB49〜恋愛禁止条例〜』(エーケービーフォーティナイン れんあいきんしじょうれい)は、原作:元麻布ファクトリー、漫画:宮島礼吏、原案協力:高橋ヒサシによる日本の漫画作品。
講談社『週刊少年マガジン』2010年第39号より2016年第8号まで連載。男性である主人公が名前を変え、女装して『AKB48』に入り、そこで研究生から正式メンバーを目指すという内容。
主人公が加入するグループは実在する女性アイドルグループであり、フィクション作品でありながら結成当初のことなど実際に起きた出来事をベースに物語は進行している。また、登場するメンバーは実名はもちろん、容姿や性格も本人の特徴を反映しており、楽屋の雰囲気も忠実に再現していたり[1]、メンバーの愛称やキャッチフレーズなどが登場し小ネタも散見される[注 1]。AKB48の実在メンバーが重要な役割で登場するほか、研究生の過酷な実態やアンチの批判的な意見、ファンによるCDの複数購入、秋元才加の熱愛スキャンダル(後述)も取り上げられている。
連載開始当時、二次元および現実世界で大きな「男の娘」ブームが巻き起こっており、大手出版社の週刊漫画雑誌にも「男の娘」キャラクターが登場するようになっていた[2]。ライターの来栖美憂は、中でも注目したい作品として本作を挙げている[2]。女装した少年がアイドルになるという展開は、それまで複数の作品に描かれてきたものであったが、「色々な大企業の思惑が交差する、大規模コラボの漫画の主人公がオトコノコになる時代が――」と述べている[3]。
単行本の発行部数は、2013年5月29日発売の『週刊少年マガジン』26号時点で累計260万部(13巻)である。
アイドルに興味のない高校生・浦山実は、自分が好意を持つ同級生・吉永寛子から、AKB48に入ることが夢で、近々オーディションを受けることを打ち明けられる。そんな彼女をフォローすべく、浦川みのりと名を変え女装までしてオーディションに参加した[3]。みのりのフォローと前田敦子に対する思いが評価されて、吉永はオーディションに合格するが、みのりもプロデューサーの秋元康の目に留まり合格してしまう。
第12期の研究生として厳しいレッスンをしながら、劇場の公演で踊る毎日。ダンスも歌もそつなくこなす第11期のエース・岡部愛との衝突や、「チケット代1万円で劇場を満員にしないと全員解雇」という秋元により与えられた過酷な試練、アイドル活動を反対されている吉永と父親との確執など、様々な問題を乗り越えていく。
そして、研究生の中で人気と実力を認められた、みのり、吉永、岡部の3人は、研究生ユニット「GEKOKU嬢」としてCDデビューが決定する。しかし、同日デビューのライバル「&Jewel」は、金と事務所の力にものを言わせて、GEKOKU嬢たちを妨害してくる。完全アウェイの&Jewelのライブイベントに、前座として出演することになったGEKOKU嬢は、&Jewel側の妨害を逆手にとって、&Jewelファンを魅了するパフォーマンスを見せて、CD売り上げで圧勝する。
総選挙で、みのり21位、岡部32位、吉永49位と大躍進した3人は、「神崩し」を目標に新たなステージに立つ。しかし、AKBのトップで活躍する神8の桁違いのパフォーマンスに、みのり達は圧倒される。フューチャーガールズのセンターになった吉永は、自らの欠点を乗り越える。その後、岡部はチームBに決まるが、みのりと吉永は「国内全グループ兼任」という異例の発表がされる。そして、みのりに憧れている14歳の天才・有栖莉空も全兼任に命じられる。
みのり・吉永・有栖が加入したSKE48に、秋元から「1ヶ月以内に1公演の250人のファン全員に、みのりたち3人をSKEとして認めさせること」という試練が課せられる。「達成できない場合には、移籍組の3人はAKBの登録抹消」という厳しいペナルティーの中、3人は1か月で100公演を掲げて、様々な努力を積み重ねていく。賛成票を入れてくれない7人のアンチ達を1人ずつファンにしていき、みのり達は試練を達成する。
続いて、NMB48に加入した3人は、視聴率を上げないと番組終了の危機にある深夜番組『ナンバー8』に出演するが、みのり達の活躍により視聴率を上げることに成功する。しかし、番組の自然消滅を目論む司会者・金色亭八葉の妨害により、みのりは残り8回の間に視聴率の10%獲得を宣言する。しかし失敗すれば、みのりはアイドルを辞めることになる。ゴールデンSPを理由に視聴率15%と条件が跳ね上がるが、みのりたちとスタッフは懸命の戦いを繰り広げ、八葉らの企みを打ち砕いて勝利する。
AKB48関係者の()内は読みがな/愛称の順(/で区切られていない場合は読みがなのみ)。
『GEKOKU嬢』のレコードレーベルであり、架空のレコード会社。地下のこぢんまりとした場所にあるなど弱小事務所である。
大手レコード会社「ラージヘッドレコード」が40億円を投じてデビューした3人組アイドルグループ。GEKOKU嬢と同日デビューであり、CD売上げを競うことになる。
架空の大手レコード会社。自社ビルを所有するなどクイーンレコードとは比較にならないほど規模が大きい。
浦山家は母子家庭で妹の他に母親が登場している。家庭内での私生活について描かれることがほとんどないため、実の家族はあまり登場しなかったが、連載終盤で雅希が度々登場している。
吉永家は吉永と両親の家族構成。父親が教育の主導権を握る父権主義の家庭環境であり、父親と母親とでは性格も教育方針も相違している。父親は亭主関白で教育面では厳格であり、逆鱗に触れたことで吉永を表向きは勘当し、自宅への出入り禁止を命じている。一方、母親は教育面では寛容であり、父親とは異なり吉永を勘当することはなく、自宅への出入り禁止は特に命じていない。また、両親の下の名前は不明。両親のその性格ゆえに機能不全家族を想起させる家庭環境にも見えるが、家族愛は深く、夫婦仲も良い方であり、最終回では夫婦揃って劇場公演に観に来る1コマで登場している。また、吉永がマンションで1人暮らしを始めた頃からはペットとして犬を飼っている。
岡部家は資産家で豪邸に暮らしている。岡部の部屋には大きなベッドがある。家族については母親が登場しており、ミス・アフロディーテとして歌手活動をしている。その他の家族については登場が確認されていない。
有栖家は有栖と両親の家族構成。岡部同様、資産家であるが、高級マンション暮らしであり、自宅には数万冊の蔵書がある書庫や通信カラオケ完備のホームシアタールームがある。両親は甘やかさない一面もあるが、愛情に満ちた円満で裕福な家庭環境であり、家族関係は良好な方である。
鈴木家の家庭環境は貧困な大家族であり、のぶ子(MAYA)、弟2人、妹2人の家族構成。父親はのぶ子が10歳の時に家を出ており、母親も後に病気で亡くしている。のぶ子と長弟(裕介)と末妹(ふみ)以外の名前は不明。兄弟と母親・姉妹では性格が異なり、兄弟は兄弟げんかをする典型的な腕白少年であるが、母親と姉妹はしっかり者に設定されている。MAYA以外みのりたちと接点はないが、MAYAの回想で登場する。
音羽高校は実と吉永が通っていた高等学校。古谷と奥平先生以外の氏名は不明。奥平先生以外の登場人物はあまり登場しない。
奥平家は奥平と妻子の3人家族。なお、奥平以外の家族はセリフのみで登場する。
7人のアンチSKEはSKE編に登場する兼任組の強力なアンチ。最初は兼任組の存在を否定したが、次第に理解を深め、兼任組を認めるようになる。
金色亭一門はNMB編に登場する金色亭八葉をはじめとする落語家一門。八葉以外みのりたちと接点はない。
個別に紹介された人物のみ掲載。並びは作品登場順とする。また、記述されているチーム名および役職名は登場時のものである。
岸野里香、山口夕輝、上西恵、吉田朱里、木下百花、矢倉楓子、高野祐衣
「本当に価値のあるものなら1万円を払っても見に来てくれる」という秋元の考えから研究生に課せられた試練。初期のメンバーが満員になるまでの苦労を研究生にも味わわせるために行われた企画で、2ヶ月以内にAKB48劇場を満席にしないと研究生は全員解雇される。値上げにより空席だらけの劇場や正規メンバーとの実力差、失敗できない公演でのトラブルという苦境を受けながらもスタッフやファンのサポートを受けたみのりたちは次第に成長し、次第に客を増やしていくがXデー当日に本来の目的を覆す事態が発生しみのりは選択を迫られることになる。
みのり、吉永、岡部の3人で結成された研究生による派生ユニット。累計13万枚売れれば晴れて正規メンバーへの昇格が約束される一方、逆に13万枚売れない限りは研究生のままということになる。一方、大手レコード会社「ラージヘッド」は自前のアイドルグループ「&Jewel」を結成し、打倒AKB48の第1弾としてGEKOKU嬢潰しに着手する。ラージヘッドの権力の前になすすべもなかったみのりたちであるが、次第に少ないチャンスをものにしていき、&Jewel主催のコンサートに招待されたGEKOKU嬢は最終決戦に挑むことになる。
SKE編でみのり、吉永、有栖に課せられた試練。観に来ている250人の観客がチームSの講演終了後白票(賛成票)と青票(反対票)を入れていき、1ヶ月以内にすべての票が白票にできればSKE48にとって念願の褒美が与えられる一方、最後まで1票でも青票があればみのり達3人の兼任メンバーは強制的に卒業(SKEだけでなくAKB、NMB、HKTからも)となる。何とか受け入れてもらおうと近くの公園で独自無料公演を行なったり、どうしても兼任メンバーを受け入れようとしないファンに対して彼女たちはあの手この手で白票に変えていく。そして青票がのこり僅かとなった最終公演で彼女たちにいくつもの危機が訪れる。
NMB編での出演番組。これは秋元から課せられた試練ではなく、番組終了の危機を救うため、みのり自らが宣言した試練。25時台のためいまいち視聴率がふるわなかったが、みのりの活躍によりぐんとあげることに成功する。しかし、番組の自然消滅を目論む司会者、金色亭八葉の妨害により再び視聴率が落ち、終了の危機にさらされる。みのりは残り8回の間に、視聴率の10%獲得を宣言する。成功すれば番組の存続が許される一方、失敗すればみのりはアイドルを辞めることになる。そして最後の8回目にゴールデンSPとなることが決定したため、獲得視聴率も15%に上がった中、みのりたちとスタッフ、司会者一派の水面下の戦いが幕を開く。
HKT編直後からAKB32nd選抜総選挙にかけて起こった、吉永と有栖を襲った「週刊宝春」をめぐるスキャンダル騒動。吉永がTwitterをしていた中でのお気に入りがKurokamiで、それが実のアカウントであることは知らなかった。Kurokamiが実のアカウントと知らない有栖は吉永にKurokamiに恋していると吹き込み、吉永はKurokamiの事を好きになっていく。そんな中、HKT博多公演の翌日、Kurokamiが博多駅にいると分かった吉永が偶然実と会うが、実の不用意な発言をきっかけに、吉永はKurokamiが実だと気付き、思わず実の手を握り締めてしまう。その場では「吉永が自分を好きになっていることが、アイドルを目指す吉永にとっては危険」と考えた実が逃げたが、その瞬間を週刊宝春の安倍に抜かれていて、事前通告として秋元に送られて大騒動になる。一方でその事前通告を見た有栖は父親の威光を借りて記事をもみ消そうとするが失敗する。スキャンダルを止められないと判断した戸賀崎が吉永を発売当日の直前に呼び出して説明しようとすると、そこには有栖の飲酒喫煙パーティーの記事が掲載されていた。
ライターの来栖美憂は、初めての女装でAKBのオーディションに合格してしまうというのは、女装のリアリティが希薄だと述べている。この種の物語では「男であることを知りながら協力してくれる存在」が定番であるとし、本作(2011年現在)においてはその不在がリアリティを損ねている原因なのではないかと述べている。一方、「男の娘」を視点人物に据えたファンタジーとして割り切れば、本作は楽しい作品になると評している[3]。
「男の娘」専門誌『わぁい!』Vol.11(2012年11月24日発売)で実施された媒体を問わない「男の娘」キャラクター人気投票において、浦川みのりは12位を獲得している[8](「男の娘キャラクターの一覧#人気投票」も参照)。
講談社少年マガジンコミックスより発刊。通常版は少年マガジンKC、特装版はプレミアムKC。
表紙には第24巻までは実/みのり(1・3・9・13・14巻は実/それ以外は24巻まではみのり、また吉永と冷戦中だったSKE編とNMB)編の15巻から18巻までは吉永とのセットで映っていた)と発売時のAKBグループ在籍メンバー1名(AKB48以外のグループも含む)が描かれている。第25巻以降は漫画オリジナルの人物が表紙となっている。作者の宮島によれば「最終巻付近の表紙は漫画内メンバーが飾る」ことが目標だったという[9]。 特装版の付録は様々なものがあったが、フォトブック形式の写真集[注 38]もあった。 ・吉永(18巻「ひろこ」、21巻「吉永」) ・有栖(23巻) ・みのり(24巻) ・岡部(27巻) また28巻はみのり卒業生誕祭に実際に使用された缶バッジが付属されており、他の特装版より値段が高い。
2014年9月11日 - 16日にAiiA Theater Tokyoで上演。脚本は御笠ノ忠次、演出は茅野イサムが担当。[10]
※上演時の所属を記載している。
主なキャスト
その他
2015年3月14日 - 15日に中日劇場で上演。名古屋公演では出演者全員がSKE48メンバーで17名が参加する。
2016年4月21日 - 26日に中日劇場で上演。SKE48単独公演[11]。
キャスト発表時には、浦川みのり役に柴田阿弥もキャスティングされたが、柴田が学業を優先させるため辞退となり、東李苑に変更された[12]。