船江 恒平(ふなえ こうへい、1987年4月27日 - )は、将棋棋士。井上慶太九段門下。棋士番号は281。兵庫県加古川市出身。兵庫県立加古川東高等学校卒業[1][2][3]。
棋歴
祖父に教えられて5歳で将棋と囲碁を始める。当時は「将棋が好きというよりも祖父が好きだった」という[4]。小学2年時、同郷の井上慶太が師範を務める加古川将棋センター[5]に入会し、将棋に打ち込む[6]。
1998年、加古川市立東神吉南小学校5年(出場時は4年)のとき、第23回小学生将棋名人戦で準優勝。決勝で負けた相手は、1学年上の高崎一生である。この期の出場者には、他にも後にプロ棋士になった者が多く、船江も西日本大会で牧野光則、糸谷哲郎に勝っている。その年の秋に井上の弟子となり、6級で関西奨励会入り。
加古川市立神吉中学校2年だった2001年の6月には1級へ昇級する。そこまでは比較的順調であったが、初段昇段まで1年9か月、二段昇段までは約2年を要す。三段リーグには2006年度前期から参加。同じ井上門下の弟弟子である稲葉陽・菅井竜也に先を越され、「早く追いつきたい」と思っていた[7]。2010年度前期三段リーグは、14勝4敗が1名(佐々木勇気)、13勝5敗に船江を含み4名が並ぶ結果となったが、船江は前回リーグの最後に粘りの4連勝で12勝6敗としていたことが結果的に大きく、リーグ表順位上位により2位となり、佐々木とともに四段昇段を果たす[8]。
2011年に創設された加古川青流戦で決勝へ進出する。宮本広志奨励会三段(当時)との三番勝負では、関西将棋会館で行われた第1局こそ落としたものの、加古川市で行われた第2局・第3局を連勝し、地元主催の棋戦の初代優勝者となった。
2012年1月5日、2013年に実施される第2回電王戦のプロ側代表に選ばれる。1月14日、第2回電王戦が、プロ棋士対コンピュータの5対5の一斉対局となることが発表された。
2011年度の第70期順位戦では初参加にしてC級2組で10戦全勝の成績を修め、C級1組昇級及び五段昇段を決めた。順位戦C級2組の“1期抜け”は1989年度(第48期)の屋敷伸之以来22年ぶり、10戦全勝を伴うものとなると1985年度(第44期)の富岡英作以来26年ぶりの快挙である。
2013年4月6日第2回将棋電王戦第3戦でコンピュータ将棋ソフト『ツツカナ』と対局、184手で敗れた[9]。
同年12月31日、『ツツカナ』とのリベンジマッチに85手で勝利し雪辱を果たした[10]。
2018年度の第77期順位戦では9勝1敗の好成績を上げるが、順位が上の杉本昌隆、近藤誠也も同成績だったため、同成績だった藤井聡太とともにB級2組への昇級を逃した。
棋風
デビュー時のインタビューで、「居飛車党[7]」、「斬り込むのが好き。激しい戦いを見てほしい[11]」、「詰みがある局面では詰まし、最短の勝ちを狙う[7]」と語っている。電王戦での二つ名は「詰将棋の若大将」。
人物
- 詰将棋の作者として、高校在学中の2004年度中編部門で看寿賞を受賞している[12]。当時は「稲葉くんの解けない問題をという一心」だった[13]。また、詰将棋を解く事に関しても、2010年第7回詰将棋解答選手権で唯一の全問正解者として、優勝を果たしている[14]。
- プロ入りを決めたときのインタビュー[11]で、「師匠のような棋士になりたい。尊敬している」と述べている。また大きな影響を受けた棋士としては、2017年のインタビューで、同じ井上一門の稲葉陽、菅井竜也の2人の名前を挙げている[13]。
- 2013年6月4日にニコニコ生放送で放送された第84期棋聖戦五番勝負第1局の解説において、プロ間では無理筋とされ、現在プロではほとんど指されていない横歩取り4五角戦法について、十分に有力な戦法ではないかとの見解を示した。2013年7月現在、船江が公式戦で横歩取り4五角戦法を用いたことはない。
- 前述の通り祖父からは将棋だけでなく囲碁も教わっており、本人曰く「棋力が逆だったら囲碁棋士を目指していたかもしれない」という。囲碁の腕前は自称「アマチュア初段くらい」と言う[4]。
- 2021年3月、公認会計士試験に合格したことが明らかになった[注 1]。受験を考え始めたのは2018年秋ごろで、翌年3月の第77期順位戦C級1組最終戦を終えた翌朝から大阪府内の専門学校へ通い始め、公式戦対局と勉強を1年8カ月並行していたという[3][15]。試験合格後は、太陽有限責任監査法人大阪事務所の非常勤職員として監査の仕事も行っている[16]。
昇段履歴
昇段規定は、将棋の段級 を参照。
- 1998年09月00日 : 6級 = 奨励会入会
- 2002年03月00日 : 初段
- 2005年02月00日 : 二段
- 2006年02月00日 : 三段(第39回奨励会三段リーグ<2006年度前期>より三段リーグ参加)
- 2010年10月01日 : 四段(第47回奨励会三段リーグ成績2位) = プロ入り
- 2012年03月06日 : 五段(順位戦C級1組昇級、通算40勝13敗)
- 2016年12月28日 : 六段(勝数規定 /五段昇段後公式戦120勝、通算160勝87敗)
- 2024年 3月 12日 : 七段(勝数規定 /六段昇段後公式戦150勝、通算310勝196敗)[17][18]
主な成績
棋戦優勝
在籍クラス
順位戦・竜王戦の在籍クラスの年別一覧
開始 年度
|
(出典)順位戦
|
(出典)竜王戦
|
期
|
名人
|
A級
|
B級
|
C級
|
0
|
期
|
竜王
|
1組
|
2組
|
3組
|
4組
|
5組
|
6組
|
決勝 T
|
|
1組
|
2組
|
1組
|
2組
|
2010
|
69
|
四段昇段前
|
24
|
|
|
|
|
|
|
6組
|
--
|
4-2
|
2011
|
70
|
|
|
|
|
|
C241
|
10-0
|
25
|
|
|
|
|
|
|
6組
|
--
|
5-2
|
2012
|
71
|
|
|
|
|
C130
|
|
5-5
|
26
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
1-2
|
2013
|
72
|
|
|
|
|
C118
|
|
7-3
|
27
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
2-2
|
2014
|
73
|
|
|
|
|
C106
|
|
7-3
|
28
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
3-2
|
2015
|
74
|
|
|
|
|
C106
|
|
8-2
|
29
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
2-2
|
2016
|
75
|
|
|
|
|
C107
|
|
5-5
|
30
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
3-2
|
2017
|
76
|
|
|
|
|
C114
|
|
5-5
|
31
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
4-1
|
2018
|
77
|
|
|
|
|
C114
|
|
9-1
|
32
|
|
|
|
|
4組
|
|
|
--
|
1-2
|
2019
|
78
|
|
|
|
|
C102
|
|
5-5
|
33
|
|
|
|
|
4組
|
|
|
--
|
4-1
|
2020
|
79
|
|
|
|
|
C113
|
|
7-3
|
34
|
|
|
|
3組
|
|
|
|
--
|
0-2
|
2021
|
80
|
|
|
|
|
C105
|
|
6-4
|
35
|
|
|
|
|
4組
|
|
|
--
|
3-2
|
2022
|
81
|
|
|
|
|
C110
|
|
4-6
|
36
|
|
|
|
|
4組
|
|
|
--
|
2-2
|
2023
|
82
|
|
|
|
|
C118
|
|
4-6
|
37
|
|
|
|
|
4組
|
|
|
--
|
|
2024
|
83
|
|
|
|
|
C125
|
|
|
38
|
|
順位戦、竜王戦の 枠表記 は挑戦者。右欄の数字は勝-敗(番勝負/PO含まず)。 順位戦の右数字はクラス内順位 ( x当期降級点 / *累積降級点 / +降級点消去 ) 順位戦の「F編」はフリークラス編入 /「F宣」は宣言によるフリークラス転出。 竜王戦の 太字 はランキング戦優勝、竜王戦の 組(添字) は棋士以外の枠での出場。
|
年度別成績
公式棋戦成績
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2010
|
13 |
10 |
3 |
0.7692 |
[21]
|
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2011
|
44 |
32 |
12 |
0.7272 |
[22]
|
2012
|
44 |
27 |
17 |
0.6136 |
[23]
|
2013
|
39 |
22 |
17 |
0.5641 |
[24]
|
2014
|
29 |
18 |
11 |
0.6206 |
[25]
|
2015
|
51 |
37 |
14 |
0.7254 |
[26]
|
2016
|
41 |
23 |
18 |
0.5609 |
[27]
|
2017
|
36 |
21 |
15 |
0.5833 |
[28]
|
2018
|
35 |
22 |
13 |
0.6285 |
[29]
|
2019
|
39 |
25 |
14 |
0.6410 |
[30]
|
2020
|
39 |
24 |
15 |
0.6153 |
[31]
|
2011-2020 (小計)
|
397 |
251 |
146 |
|
|
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2021
|
35 |
20 |
15 |
0.5714 |
[32]
|
2022
|
33 |
16 |
17 |
0.4848 |
[33]
|
2023
|
31 |
15 |
16 |
0.4838 |
[34]
|
2021-2023 (小計)
|
99 |
51 |
48 |
|
|
通算
|
509 |
312 |
197 |
0.6129 |
[35]
|
2023年度まで
|
出演
テレビ
ウェブテレビ
- 電王戦×TOYOTA「リアル車将棋」(2005年2月8日、ニコニコ生放送)[36] トヨタ自動車精鋭テストドライバーチーム・サポート棋士
脚注
注釈
- ^ 業務補助経験や実務補習の修了といった要件を満たしていないため、公認会計士の資格保持者ではない点に注意。
出典
関連項目
外部リンク
日本将棋連盟所属棋士 ( 現役棋士 および 2024年度引退棋士) |
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タイトル 保持者 【九段 6名】 【七段 1名】 |
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九段 【26名】 | |
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八段 【33名】 | |
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七段 【45名】 | |
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六段 【27名】 | |
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五段 【21名】 | |
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四段 【15名】 | |
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2024年度 引退棋士 |
- 九段 青野照市 (2024年6月13日 引退)
- 八段 室岡克彦 (2024年6月18日 引退)
- 八段 中座真 (2024年6月19日 引退)
- 七段 伊奈祐介 (2024年5月10日 引退)
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現役棋士 全174名(2024年11月6日時点、日本将棋連盟所属) / △は2024年度の昇段 / 引退棋士の()は引退日 / 詳細は将棋棋士一覧を参照 |
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竜王 | |
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1組 (定員16名) | |
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2組 (定員16名) | |
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3組 (定員16名) | |
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4組 (定員32名) | |
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5組 (定員32名) | |
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6組 (参加70名) |
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★挑戦者 / △次期昇級 / ▼次期降級 / 初 初参加棋士(棋士として初参加) / 詳細については将棋棋士の在籍クラスを参照。 |
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名人 | |
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A級 | |
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B級1組 | |
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B級2組 | |
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C級1組 | |
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C級2組 | |
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フリー クラス
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| 宣言 | |
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棋戦限定 出場 | |
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2024年度 引退者 |
- 伊奈祐介 (2024年5月10日 引退)
- 青野照市 (2024年6月13日 引退)
- 室岡克彦 (2024年6月18日 引退)
- 中座真 (2024年6月19日 引退)
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次期から の出場者
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フリークラスからの昇級者 | |
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2024年10月1日昇段者 | |
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先頭の数字は順位(名人、フリークラス以外)/ フリークラスの数字は在籍可能残り年数(2024年度開始時点) B級2組 - C級2組の * は降級点の数(B級2組・C級1組は降級点2回で降級、C級2組は降級点3回で降級) 詳細については将棋棋士の在籍クラスを参照 |
一般棋戦優勝 2回 |
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2010年代 | |
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関連項目 | |
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タイトル戦経験者は除く五段以下でプロ入り15年以下の棋士などが参加。第2回まで棋戦名は「上州YAMADAチャレンジ杯」 |
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2010年代 | |
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2020年代 | |
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関連項目 | |
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四段の棋士・三段リーグ上位者・女流棋士・アマチュアが参加。 |
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叡王戦創設前 |
第1回 |
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第2回 |
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第3回 |
棋士 | |
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コンピュータ |
- 習甦 (先鋒)
- やねうら王 (次鋒)
- YSS (中堅)
- ツツカナ (副将)
- ponanza (大将)
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FINAL |
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叡王戦創設後 |
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関連項目 | |
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太字は勝者 |